山口敬之氏の主張について①(初心者向け)

一応、自分的罰ゲームで『ブラックボックス』を読んでみて、辛口の書評を書きました。

自腹で購入した本で痛い思いをした今年のワースト一位になるだろう事は請け合いの駄本でした。

書評の書きようがない。(でもこの裁判を語るならせめて伊藤詩織さんの著書くらい読め、というような指摘をされたので、確かにその通り、ごめんなさい、で読みました。)

伊藤詩織さんを応援する方は驚かれるかも知れませんが、本を読んでみてこの事件は山口氏の「法に触れる事は何もしてない」という主張の方に軍配をあげます。

なぜなら、ブラックボックスではどちらの主張にエビデンス(科学的な、時系列的な)があるかというと、山口氏の方に多くあるからです。

レビューにも書きましたが、『ブラックボックス』に出てくる「デートレイプドラッグ」が使われた痕跡を示すものは何もない。

「デートレイプドラッグ」は詩織さんの疑いだけ。

事件のあった夜、詩織さんは山口氏に連れられて、居酒屋「とよかつ」と寿司屋「喜一」をはしごしています。


寿司屋「喜一」の聴取書では、詩織さんが手酌で日本酒を飲んでいたと証言があり、山口氏から強制的に酒を勧められた状況ではないことが分かってきました。(準強姦罪の適用は難しい)

この「喜一」の聴取内容と、『ブラックボックス』に書いてある「喜一」から捜査員A氏さんが聞き取った内容とではかなり受ける印象が違います。

聴取の方では「とよかつ」「喜一」共に詩織さんが積極的、主体的にガブガブ飲んでいます。A氏の聴取報告では「店員の一人が二人の目の前で酒を注いでいたので覚えてる」と言っています」p124〜

A氏の方は山口氏が詩織さんにお酒を飲ませようとしていたように受け取れるもので、


もちろん、山口氏が飲み物に何かを仕込んでいた、という目撃証言もない。目撃証言がないからその事実は存在しないんだ、という事ではなく、それはあったかも知れないが、あったこともまた証明できない。

伊藤詩織さんの告発は三種類ある

①刑事告訴の訴え (午前2時の強姦致傷)

②『ブラックボックス』での訴え(午前5時頃の被害)

③民事訴訟での訴え(同意なき性交渉)

があり、伊藤詩織事件クラスターの方々が諸々SNSに挙げられている資料を見ると1、2、3では内容が異なっています。(裁判資料が日々更新されており、追いかけるのが精一杯)

しかし、世間では『ブラックボックス』での主張が裁判で認められたと誤ったイメージが流布されているように思えます。

民事裁判が認めたのは「同意なき性交渉」で「強姦致傷」「デートレイプドラッグでレイプ」をした事実ではないのですが、私がSNSを見る限り、そうなっています。

民事裁判

詩織さんの刑事裁判での訴えでは決定的な証拠が揃わなかったので、認められない部分をよく断捨離して勝訴に導いたのは弁護団の戦い方が上手かったのだと思いました。

引き換え、山口氏の弁護士の方はブログで誹謗中傷したり(懲戒相当となったようです)山口氏の友人である小川榮太郎氏は「女性の貞節論」みたいなのを持ち出したり、詩織さんの下着のブランドや形状まで書き出したり、「良識ある市民」からひんしゅくを買うことばかりしていました。(女性は反発しますよね)



これでは報道を鵜呑みにしてる人たちからは疎まれこそすれ、中々応援を得られないでしょう。私も、『ブラックボックス』を読むまでは報道を鵜呑みにしていましたから。山口氏も自身の正しさ、主張を世に認められて欲しいのであれば、もう少し、中立的な立場から証拠を基に詩織さんが主張する懐疑点を指し述べる「穏健派の論客」を招聘されたらいかがでしょうか。

しかし民事裁判で刑事的な事件が認められたような論調が流布されていて、怖いことだな、と思いました。

A刑事の独自行動に違和感

『ブラックボックス』を読んで一番不審な行動をしていると感じたのはA刑事です。

A刑事は「ストップをかけたのは警視庁のトップです」と詩織さんに山口氏を逮捕できなかった理由を告げています。しかし山口氏の姿を確認するために現場に急行した。

するとA刑事は上司の命令を無視したことになります。これは国家公務員法違反に該当するのでは?山口氏を確認するためだけに現場に行くのは捜査の一環として認められることなのでしょうか?

成田へは一人で単独行動したのでしょうか?刑事の単独行動は原則禁止では?もしも個人的判断なら捜査車両の私的運用では?など、次から次と疑惑がマーライオンの噴水ように噴出してきました。

レビューにも書きましたがA刑事は担当を外れ、高輪署を去った。それなのに詩織さんに連絡して「心配」を告げたりしています。刑事の個人行動。

司法に属人性なし

『ブラックボックス』で詩織さんはA刑事から捜査内容を聞き出そうとしたり、個人的に山口氏に連絡を取ったり、A刑事から「捜査に口を出すなら自分でやってください」と言われたりするぐらい、捜査内容に口を挟み、しばしA氏と激突しています。

警察官は事件事故によく訓練され、捜査のプロです。被害者のための捜査であっても、公務員である以上、慣例や通例、法令遵守が最優先されます。自己都合を優先してもらえないのは当然ですが、詩織さんの記述にはしばし、警察の捜査手法に

公務員は「全体の奉仕者であり、一部の奉仕者ではない」とされています。しかし、どうも『ブラックボックス』を読むと、詩織さんはA刑事を自分の奉仕者にしようとしていたのではないか、と思われるのです。

詩織さんの告訴で請求された逮捕状が警視庁の忖度で握りつぶされたとしたら、そこに「安倍政権に近い官邸記者への忖度」があったとして権力側への「属人性」が浮かび上がってきます。

翻って、A刑事が詩織さんのために私情を入れて、詩織さんの想念の奉仕者となっていた可能性があるのなら、高輪署の捜査にも詩織さんの思い通りに捜査を進めようとしていた「属人性」が存在していたかも知れないと考えてしまうのです。

若く美しい女性というものは、権力者と同じくらい男性に対して影響力を持つものかも知れないと思いました。

警察ジャーナリストは動かず?

この事件は「警視庁幹部がレイプ犯の逮捕状握りつぶし」など警察不祥事の目玉として警察ジャーナリストが動いていても良さそうなのに、有名どころは沈黙していますね。

山口氏から訴えられた漫画家の小林よしのり氏と親交がある元検事の山尾志桜里衆議院議員もこの事件にコメントしませんね。

司法をよく知るプロとして何か胡散臭を感じているのかも知れません。






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