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美しい文字を書きたい

今日も私のスペースにお集まり頂き、ありがとうございます。
今日はフォロワー様よりリクエストのありました、『美しい文字を書くこと』についての一考察をしていきたいと思います。

私の特技は〇〇です。


皆様はこの〇〇に何が入りますか?
私が答えるとしたら習字と答えたいところですが、実はまだ自信を持って言えない状況です。
というのも日本習字における私の段位は漢字部五段であり、この上に、六段から八段までの試験制の高段位があるからです。ちなみに中学生までの生徒部の八段とは別で、生徒部に教授資格はありません。

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英語のCEFR (セファール)「ヨーロッパ言語共通参照枠」で言ったらB1あたり、プロ棋士で四段といったところでしょうか?
もちろん五段位で教授資格はあるわけですから指導に問題はありません。しかし昨今有段者も増えてきて、指導ポイントも難しくなってきたため、自己研鑽の必要性を感じはじめました。
そこで、一念発起して今六段位の昇段試験に臨んでいる次第です。

私の習字デビューは遅く、基礎の学び直しのために小5から近所の習字教室に習い始め、中2でやめるまでに生徒部の5段まで進級して高校受験前に辞めました。しかし国語の中学校の教職課程を取るためには書道の単位があったので、大学から練習を再開しました。細々練習を続け、通信添削のみで昇段できる最高段位の五段になり、育児期間になって一旦休み、子どもが筆を持てる月齢になってから再再開して今の教室開設に至ります。

習字は手先の微細運動を養い、空間認識力を高め、集中力、忍耐力を育み、礼儀も学ぶ習い事なので、お子様に是非やってみて欲しい習い事のひとつなのですが、
そのことについては以前投稿したnoteのこちらの記事を参考にしてください。



今日はこれから主に私が普段の指導の中で特に文字の書き方の指導についてどのようにしているか、実践の1部をご紹介していきたいと思います。


なぜきれいな文字にこだわるのか?


当教室の前身は、習字教室です。
自分の子ども達に教え始めたのが最初です。息子小1終わり頃から、娘年長から始めました。
息子はもう少し早くから始めたかったのですが、手先が少し不器用で、墨を扱うには少し早いと躊躇していました。ですが、今思えば不器用だからこそ、硬筆だけでも早くに取り組めば良かったと思っています。
というのは、この息子と一緒に初めて出場した市の書き初め大会において、最初の年に何も入賞できず、非常に悔しがって泣き喚いたことが頭から離れませんでした。市長賞を頂いた中学生は、その作品を仕上げるまで、まる1ヶ月、1000枚以上もの練習をしたという話を聞いた息子は、

次の年、市長賞目指して頑張る!

と言い、習字の練習を本格的にし始めたのです。
1年後、市長賞はもらえませんでしたが、特別賞を受賞することができ、非常に喜んでいたことが思い出されます。


我が子らは2人兄弟ですが、全く異なる字を書きます。息子はフォントで例えるならゴシック体のような字を、娘は明朝体のような字を書きます。
習字的には、娘のほうの書が流麗でしなやかな美しさがありますが、無骨な息子の書にも味があります。


現在複数ある書体ですが、
ディスレクシアのようなLD傾向、発達障害の傾向のある生徒さんにとっては、非常に読みにくい書体もあると言うことが研究でわかってきております。
読み飛ばしてみたりとか、字を写し間違えたりとか、誤読しやすいなどあるようです。あるいは、もやがかかったようにとか、文字が二重に重なっているように見えたりして、字を認識できない場合もあるようです。

こうした場合、拡大コピーをして対応すると読める場合もあるようです。また、原稿データが読みにくい場合には、再度行間を取り直したり、UDフォントに入れ替えて編集しなおすと読めるようになります。

また、印刷物は読みにくいけれど、手書きの解説だとスっと頭に入りやすい、と訴える生徒も多数おります。
ですから、算数、数学なども、印刷プリントではなく、手書きの解説を書いて読んで確認してもらうようにしています。

文字が読めない、あるいは書けない場合には、最近ではタブレット学習も発達してきています。
しかし私はそれはあくまで最終手段だと思っています。
というのも、ICT教育において学習効果が認められないというような報告もあります。

ICT教育には生徒の興味を引く効果はあっても、学習効果としては表れていないし、効果が認められる場合でも、少なくとも現在検証できた範囲では学力下位層に限られます。



そして、何よりも取り組み次第で文字が綺麗にとはいないまでも、筆記試験に対応できうるようにまで書けるようになるケースもあるからです。

例えば手先が極端に不器用で微細運動が苦手な子でも、折り紙や切り紙といった手先を使った遊び(クラフト)を取り入れたり、直線 から曲線、点つなぎ(ドッツ)などの運筆練習などから始め、次第に文字の練習、問題プリントへの記述練習と週1で練習すれば、数年で読みやすい字を書けるようになってきます。
あるいは、単に綺麗な文字を書こうとする意欲が無いだけで、
文字表記は自分のためではなく、自分の意見や解答を他人に正しく伝えるための手段だと意識づけを変えていった
ところ、綺麗にかけるようになったというケースもございます。
このようなケースのお子さんには、文字が判別できなかったプリントを書いた生徒自身に見てもらい、ここは何と書いたのか?と尋ねることを数ヵ月繰り返していくうちに気がつく生徒もおりました。

が、そこまで徹底した指導は学校ではやれませんので、我々民間教育の仕事だと思っています。

手先の運動機能が発達し、字が楽に書けるようになると、全身の機能も向上し、姿勢も保持できるようになり、勉強も苦ではなくなりますので、自然と2時間座って勉強できるようになります

それに伴い嬉しい変化もみられるようになります。
弊教室で習字を学び始めたとある生徒の場合、習字指導をする前と1ヶ月指導を受けてからの百マス計算では、タイム的にはマイナス30秒で、しかも不正解が4問あったのが全問正解となりました。

また、学習不振でやってくる生徒の一部の文字の崩れは、単なる書き取り訓練の不足によるもので、勉強の積算時間の増加とともに文字も、ノートのとり方もきれいになる生徒もおります。もちろんそのうちに成績も伴ってきています。
文字を書くことによって、視覚、触覚的な刺激を脳に送るわけですから、活性化されないわけがありません。

ですから習字や硬筆指導によって学習面にも良い影響があるという信念のもと、教室での学習指導においても

その生徒のできうる範囲で、適度なスペース、行間を取りながら、わかりやすい字を書けるようになること、誰が読んでも見誤らないような字を書くことを意識する、できるような指導をしています。

実際、教室生のほとんどが正確な文字ではないことによる計算ミスや誤字認定の減点をされたことがある生徒さんが大多数ですが、指導に慣れるにつれ、読みやすく、分かりやすい文字を書けるようになっていきます。

文字がうまく書けない生徒の特徴


習字でも学習会でも、初レッスンでは鉛筆の持ち方や姿勢、運筆の仕方等に注視します。文字の上手く書けない生徒は、書き方にぎこちなさや、身体の力みを感じます。
鉛筆の持ち方が変だったり、姿勢が悪かったりしますと、長時間同じ姿勢を保つことが出来ずに、短時間で集中力が途切れてしまいます。
ですからまずは正しい座り方から、そのあと鉛筆の持ち方を指導します。
最初はサポートの手を加えながら、その後に自立して、いろいろアドバイスや添削をしながら1時間半も練習をしますと、字形も整ってきます。

文字として判別できないほど雑に書いている生徒たちの特徴として、考えたことを口に出していうのと同じくらいに書かなければならないというように、速記術のように、急いで物事を処理しようとする傾向が多いように思います。

自分の話す速さと同じ速さで文字をかかなくてもいいんだよ、漢字テストの時は、慌てず、ゆっくり、一画ずつ丁寧に書いていいんだよ?できるまで待っているよ?

と言うと、目から鱗が落ちたかのごとくの反応をみせる生徒もいらっしゃいます。ですから、日頃からゆっくり丁寧に書いてみる習慣を身につけて欲しいものです。

その場合、実際に書く速さに合わせて書き取る文章を音読してみるなど、実際のスピード感覚がわかるような指導が効果的です。

また普段小さな文字の人は、計算を問題集の狭いスペースに、所狭しと書き込みますが、それがミスの原因にもなっています。

この場合には、別に計算用紙を用意して、なるべく大きめにイコールを揃えて、下に式を書き足していくように指導します。
さらに文字の大きさや位を合わせて揃えて書けないような場合でも、マス目のノートに計算をしてみたり、位の所に縦線をひいてあげたりしています。

すると計算の苦手な生徒さんでも、正しく計算できるようになり、3割ほど、正解率が上がったケースもあります。

また、学習障害を持つ生徒向けの算数学習サイトとしては、こちらのフリー問題が使いやすく編集されていておすすめです。

このようなことからも、1人勉強ノートにびっしり書き込みすることを強要しておられる指導者には、ぜひ考えを改めて欲しいと思っています。

その他、視力の左右差が大き過ぎたり、あるいは斜視など、目の機能から、定規や算数の数直線のメモリが潰れて見えてよめなかったり、真っ直ぐな線がひけなかったりと、さまざまな影響が出てくるケースもありました。特に眼鏡をかけることに抵抗のある生徒は、よっぽど視力が落ちていても、見えないと訴えでないことが多いので、見落としや読みとばしが多い場合にはまずは視力検査をしてみるように促してみてほしいと思います。

左利きは矯正するかどうか?

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これも割と大きな問題で、一般的な右利きの子と違い、左手の方が器用で、右手が不器用なので教え方にコツがいります。

と申しますのも、漢字やひらがな、カタカナという日本語の文字は、右利きで書く前提で筆順も出来上がっているために、どうしても運筆に難しい部分が出てきます。

それでも、その子の持って生まれている脳機能を矯正するような事はさけたほうが良いのではないかと思います。

以前左利きの子が習字を習っており、習い始めの頃、数回右手でも書いてもらいました。しかし、本人が脳が混乱する感じがして気持ち悪いと言うので、私は右手に矯正はしませんでした。もちろん留め、ハネ、払いの練習は手が汚れたりしますし、手に隠れてしまうため、大変でした。

しかし、その生徒の親御さんは、習字の目的を、集中力を養い、行儀作法を身につけることを主としておりましたので、
本来の利き手をそのまま活かした書き方を身につけさせることを理解していただき、そのまま左手で筆をもたせました。

高2まで続けるうちに、読みづらかった文字も整い、集中力もつき、平静を保って練習できるようになり、有段者になりましたし、学校推薦で私立大学へ進学することもできました。

あの時矯正していたらどうだっただろうと時々思います。
しかしながら、近年では、矯正による様々な弊害を指摘する報告もあります。



昔は左手はよく矯正させられたようですが、私は本来の能力を大事に育てていきたいので、矯正はしない方針です。

その子の本来の能力を伸ばしていける方法は、千差万別ですが、それを私は見つけて指導していきたいと思っています。

美しい文字を書きたい

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毛筆は現代においては、なかなか書くシーンはありませんが、
この年齢にもなりますと、冠婚葬祭やビジネスシーンで筆ペンで記名することが多々ありますので、身につけるべき教養、たしなみとしてスマートに文字が書けるようになりたいものです。

習い始めるにはもう遅い、ということはありません。習字は高学年からでも、大人からでも必ず上達します。
私は母から手ほどきを受け、なんとなく上手に書けていたため、自己流をなかなか直せず、いつも展覧会では銀賞止まりでした。その悪いくせを直そうと、遅い小5から習い始め、産後子育て、仕事で途中なんども休みながらも今日まで継続してきました。

実は現在、なかなか自分の文字の癖を直せず、壁にぶつかっている生徒がいます。

その生徒にも練習ってどれぐらい練習するの?っていうのを姿で伝えられたらいいなと思っています。
というか、その生徒は私の過去の姿でもあるんですね。

器用貧乏な私ですが、なんとか1つの事だけでもいいので、てっぺんまで極めてみたいと思っています。

今日も拙いお話を聞いて下さりありがとうございました。

※これはR3.7.15にTwitterのスペースでお話した内容をまとめたものです。

上田学習教室
室長 上田さおり

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