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授業進度ギャップ

地方における子どもの教育は、一般的に

地元公立小→公立中→県立高校or私立高校

というコースを歩む。
中学受験のない地域においては、高校において初めて地元を離れて近隣市の高校に進学するようになるが、この時、進学先の学校によって、授業進度のギャップに悩む生徒が多くなる。今回はこの授業進度について考察したい。

小中高における授業体感速度


以下あくまで私自身、あるいは子どもたち、教え子たちの様子から得た経験則からの個人的な意見であるので、参考程度にして頂きたい。

仮に小学校での授業の体感進度を1️⃣とすると、

小学校→1️⃣
中学校→
1️⃣×5
高校   →
1️⃣×25


程のギャップがあるように思う。つまり、中学では小学校での5倍速、高校では中学の5倍速のように感じるということだ。

これは、小学校や中学校、高校で習うべき漢字や英単語数、その他の教科での必要語彙数などあげて比較しても、あながち間違ってはいない比であろう。

例えば身近な英検の必要語彙基準では、

5級 (中学初級)300~600語
4級 (中学中級)600〜1,300語
3級 (中学卒業)1,250〜2,100語
準2 (高校中級)2,600〜3,600語
2級 (高校卒業)3,800〜5,100語
準1 (大学中級)7,500〜9,000語
1級 (大学上級)10,000〜15,000語
(公益財団法人日本英語検定協会)


となっている。
ちなみに、東大の出願必要レベルは2021年度2月からの入学試験において民間英語の活用はしないことと決定したが、それまではCEFR対照表(文部科学省)のA2レベル以上、英検でいえば準2級から2級と発表していた。しかし、これはあくまで必要最低レベルのことで、東大、京大、外語大、早慶、上智などの難関大学での個別試験、いわゆる二次試験では、準1級レベル相当の難易度の問題が出題される。

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https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/__icsFiles/afieldfile/2019/01/15/1402610_1.pdf


ここで良く考えて欲しいことは、この急な進度変化に、なんの準備もなく子どもたちが対応できるのかどうか?ということだ。

例えば小学低学年で初めて自転車に乗り始めるだろうが、そのスピードは平均10Km/hと言われている。が、中学校に上がると小学校の5倍速になる。自動車の50km/hとなればかなり急いだ状態だ。
中学3年の特訓の成果もあり、無事に進学高校に入学出来たら、今度は直ぐに250~300km/hの新幹線の運転に慣れなければならない。
地域トップの進学校においては、東大を始めとした難関大学合格に照準を合わせて授業の進度、難度が設定されているため、何の準備、訓練無しに、つまり、何も学習習慣もない状態で進学校に進学してしまったら、まずついていけなくなるのだ。

進学ギャップを無くするために

このギャップを埋めようとしているのが中高一貫校のカリキュラムだ。その多くが中学、高校での6年間の進度のギャップをなくすよう、中学から比較的早い段階で高校3年までのカリキュラムを終えて、早めに大学受験の準備体制に入る。
この場合、進度ギャップが中学の段階で早く訪れ、脱落しかねない。そこで各中学では、それに耐えられるような学力及び精神面を持ち合わせた生徒を選抜する入学試験が設けられている。

主要都市圏には、有名中高一貫校が多数あり、東京都における中学受験率は実に4割にも達する。そのため、小学校の比較的早い段階で通塾しはじめ、学習習慣及び義務教育で学ぶべき知識+αを習得するため、ギャップにもうまく対応できるだろう。

しかしながら、中学受験に馴染みのない地方学生、その親御さんにはその進度ギャップについてあまり知られていないため、特に地方進学校に入学してからの課題量についていけなくなる生徒が多数出てくるのだ。

ギャップに惑わされないようにするには

では、本当に公立高校進学校は私立中高一貫校に敵わないのか?
これには実はからくりがあり、充分な勝機があると考えている。
先の中学受験で前述した通り、中高一貫校から高偏差値の大学へ進学する多くの生徒たちは、実は小学校6年までの間に、公立高校入試問題並みの知識をすでに勉強し、獲得している。だから中高一貫とは言っても、実質は小学校からすでに新幹線並みに勉強をしているので、ギャップを感じることなく最難関大学へとスムーズに進学できるようにカリキュラムが組まれている。
地方公立出身で難関大学に入学してきた生徒たちも、これまで指導してきた生徒は、何かしらの先取り学習をしている。内実を伴わない極端な先取り学習は、時に弊害を生むことにも繋がるが、最も神経細胞の成長が著しい小学生においては、基礎学力の定着を重視した先取り学習は、後の中学、高校でのゆとりへ繋がると思われる。
弊教室生にも、実力に応じて、漢字検定、英語検定、数学検定などを活用しながら、無理のない先取り学習を薦めている。

最後に


私は、家庭事情もあり、高校1年の夏講習を休まざるを得なかった。夏休み明けに学校に戻ると、一年生にやるべき教科書内容がほぼ終わっており、私1人浦島太郎状態になっていたことを覚えている。
2学期からの授業がまるでわからなくなり、心折れてしまったのだ。
ここで、心を入れ替えと勉強して追いつけばよかったのだが、当時の私には、家族の問題やそれに纏わる諸問題が山積し、そのように気持ちを鼓舞する力がなかったのだ。

あの時の私と同じような辛い思いを誰もしなくて済むよう、教室生の皆には日頃の学習習慣を早くから身につけ、どんな困難にも立ち向かえる力をつけて欲しいものである。

※この記事はR1.7.18にFB投稿、7.19補稿、R3.6.13日に一部内容修正補稿したものです。


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