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地方高校からの大学受験


時は令和

2019年10月24日における、萩生田文科相の発言は、各方面に非常に大きな影響を与えました。

これを受け、半ばタブー視されていた経済格差と学力格差、地方格差が公然と議論されるようになりました。

身の丈にあった生活は安心感をもたらしますが、いつまでもその中にいては人は成長できません。

今より少し背伸びして見える世界でチャレンジすることで人は成長します。
そして一人一人が成長できれば総じて国も豊かになります。

ですから経済格差という阻害要因で学力格差を広げてはなりません。
その差を広げないために公教育はあります。

しかしながら、文科省の「教室のバトン」プロジェクトにおける昨今のTwitter等から垣間見される公教育の現状の一端をみるにつけ、この国は本当に大丈夫なのか?と憂う毎日です。

今日は、そんな事から、地方の高校からの大学受験事情について、前半は私から、後半は皆様とテーマについてフリートークをしていけたらと思っています。

経済格差による情報格差

昭和は遥か遠くの時代になり、大学入試出願は手書きからインターネットでという大学が増えてまいりました。パソコン操作に慣れていないと出願もままならない状況です。さらには、このコロナ禍により大学入試もオンライン受験を実施するようになりました。
娘がこれから受験しようとしている大学もオンライン受験を導入する学科もあるようです。

こちらにお越しのリスナーの皆様はスマートフォンをお持ちの方ですので、ネット環境の心配もないと思います。
しかしながら、弊教室生も当初、全員のIT環境が整わず、スムーズにはオンライン化できませんでしたし、ネット出願に四苦八苦していました。
このコロナ禍の長期化により、オンラインレッスンの環境ができて当たり前くらいの意識に近づいてきたのはなんとも皮肉な事です。
それでもなお、インターネット普及率は100%にはなりません。
最新の調査によれば、

スマートフォンで89.2%、パソコンで78.5%だそうです。

こうしたスマートフォンや、パソコンもそう安いものではありません。少し資料は古いですが、総務省の統計によれば、年収と通信機器の保有率の相関関係の差はスマートフォンではそれほど相違はありません。しかし、パソコンやFAXの保有率で顕著になります。これは経済格差が情報格差を、ひいては学力格差に直結する時代になっているということの裏付けとも言えるでしょう。


関東、関西方面にお住まいの方は何を大袈裟な?と思われるかもしれません。しかしながら、総務省の統計資料による幻冬社発表の所定内給与額ランキングにおいて、我が青森県は47都道府県の中で堂々の最下位です。228万円もの格差、しかも概算年収で比較すると、トップ東京とではなんと2000万もの格差です。これが夫婦2人となれば、その差は4000万になります。

実際、弊教室の月謝は自宅開設で家賃の経費がかからないため、相場の1/2程に抑え、小学生なら月4回8時間、6000円からのコースを設けています。しかしながら、そのコースでさえ厳しくなり通えなくなる生徒もおります。

そんな地方の現状に対し、タイムラインでこの時期に流れてくる都内進学塾の夏期講習費の何と高額なことでしょうか。地方民としては夢か現実かピンとこないというのが正直なところです。

しかしながら単純計算で差額の年間228万を、都内の方は丸々中学受験の費用にあてられることも可能なのですから、高い通塾費も支払えると思われるわけです。


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出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成
※男女計より推計

この経済格差は最終的に学力格差を生み出しています。

ニューズウィークJAPANに寄せられた社会教育学者の舞田敏彦氏のレポートによれば、「所得による日本の大学進学格差は、現状でも実質的な違法状態」なのだそうです。

教育基本法第4条は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」と定めている。だが高等教育段階では、経済力や居住地域に応じた教育機会の配分になってしまっている。


私自身大学受験を経て、長年地域の教育に携わりながらずっと感じてきた私のこの危機感は、2020.2.18のTwitterでの

地方公立高校から
主要私立大にはもう入れない時代なのかもしれない。

というツイートに繋がりました。非常にネガティブな発言にも関わらず、これに50人もの方からの反応を頂いています。ということは、同様に感じておられる地方の教育関係者が多数いらっしゃるのだろうと思ったわけで、今回皆さんと思いを共有したいと思った次第です。

私自身の経験から

私自身、大学生3年と高校生3年、2人の子どもの親でもあります。大学生の息子は長年ピアノを、そして今は大学で声楽を学んでいます。高校の時は、週に1回ピアノ、1回ソルフェージュ、1回声楽のレッスン、そして月に1度、志望先の大学の先生にレッスンしに上京していました。
娘は、バレエの道を歩もうと、週4~5回のレッスンを、車で片道1時間の青森市まで習いに行っています。

音楽にしてもバレエにしても特に芸術方面における環境は首都圏の子たちに比べて圧倒的に不利です。
頻繁に行われる講習会、オーディション、コンクール、あらゆる機会が都会にはあります。それが田舎にはありません
令和の時代、吉幾三の歌程ではありませんが、クラシックコンサートはない、コンクールもない、講習会もない、さらには都内音大、藝大、海外音大まで導けるような優れた指導者も身近にいないという四重苦の中、奇跡的に巡り会えた志望大学の先生のもとまで足を運ぼうにも、交通費、宿泊費、レッスン費も払えない、、、と、経済面での追い討ちでいよいよ戦場からの撤退を何度も考えました。
実際、ピアノ、バレエというような芸術的習い事は、大多数は小学校、遅くとも中学生のうちに9割以上が辞めていきます。

しかし、これは地方においては学業の面でも同じことが言えます。
大学に行くお金がないとわかっていて、高校卒業後に就職とわかっていたら、進学校にいくために必要な勉強量など初めからしないでしょう。

経済的に厳しい環境が当たり前の世界におりますと、半ば諦めの境地と申しますか、親が経済的に無理だと言う前に自らその世界と縁を切り、別の道を歩もうとする生徒も出てきます。
賢い生徒であればあるほど、夢より現実を見ようとし、自分の思いを封印し、本来自分が希望していた進路とは違う道を進もうとするのです。そこで一気に成績が落ちてしまったり、モチベーションを保てなくなり、精神的に不安定になったりする生徒もでてきます。

ですから、これは私から皆様へのお願いです。このスペースにお越しの方の中で自分のお子さんや生徒が進路を突然変更したという場合には、どうか事情を推測って、充分その生徒の心のケアをして欲しいです。

青森県の現状

長年Twitterのタイムラインを眺めてきて改めて思うことは、青森県は公教育環境は恵まれているということです。その結果は全国学力テストにおいても、青森県は常に上位にあるという事にも現れています。


ではなぜ青森県の大学進学率が上がらないのでしょうか?

それは、
第一に地域的に本州最北端である地の利の悪さ、
第二に親世代の旧態然とした教育観の問題、つまり情報格差、
第三に低所得による教育費の捻出困難、つまり経済格差の3つにあると思います。

教育費の問題にしても、日本の公教育費は非常に高いです。
これは教育格差を助長する要因です。
ヨーロッパは国公立大学は授業料は無料の所が多いので、芸術方面を目指す人は早くから留学を視野に入れている人がほとんどです。

また、今年に入ってから、海外大学を目指す、目指して合格した、あるいは海外大学への合格実績の高い高校のデータ等の情報が盛んにタイムラインに上がってくるようになりました。
このままでは、国公立大学は無料、私立はせめて今の国公立並みになるように予算を組まない限り、日本から優秀層が全部海外に流出します。
この問題は、是非早急に文科省に対策していただきたいのですが、、、。

ともかく、

学校や家庭においてもこの現実に打ち勝てるような教育意識改革が必要です。

にもかかわらず、タイムラインに流れてくる現場の声はなんともやりきれない声ばかりです。

また学校現場に全て責任を押し付けるような世論にも問題があると思っています。

私は、これからの時代を背負って行かなければらならない子どもたちを、学校教育と私どもの民間教育が互いに補い、協力して支えていけるような社会であって欲しいと願っています。

意識改革

さて、ここまで主に青森県と私の周辺の教育原意環境の問題点についてお話ししてまいりましたが、皆様のお住まいの地域はどういった問題がありますでしょうか?

Twitterに流れてくるのは公立小学校の現場崩壊の様子です。
現場の先生方も親御さんも、そして子どもたちもみな疲弊して悲鳴をあげています。地方の公教育はいつのまにか学科教育の場として成立しなくなるとともに、親子の生活指導の側面が増えてきています。その結果、内部の問題ばかりに意識が向いてしまい、外部教育を受ける機会の少ない地方は、いつしか時代に取り残されていたことに気がつかないままここまできてしまったような気がしてなりません。

また、親が80台世代の今子育て終了間際世代、つまり私のようなアラフィフ世代と、一回り下の世代、アラフォー世代とではまたこれまで見てきた世界が違うような感覚があります。
我々アラフィフの親世代は、戦中、戦後の厳しい中で生き延びた世代で、我慢することを美徳とするような世代でもありました。
それが、ひとまわり違うと高度成長期に育ち、恵まれた環境が当たり前である昭和世代に育った親世代になります。こうした世代間、地域間、経済格差による世界観の違いから、ツイート内容もかくもこれほどにまで意見の相違を生み出すものなのか?と思う今日この頃です。


このように、地方から首都圏の大学、あるいは旧帝クラスの難関大学にチャレンジしていこうとする時に、一個人の力で追いつけるのか?という不安も生じます。

例えば昨年度、地元進学校の文系が大変厳しい戦いに終わりました。私はその分析のため、各教育産業機関のツイートを拾いあげて分析していました。その中フォロワーの仙台の予備校の分析をみつけました。


このように東北大は東京都民の主要な進学先となり、地元生は入れない時代になってしまったのです。
また我が青森県の弘前大学も、一昨年、昨年と県内生の割合は3割切る学部がほとんどです。
医学部一般にいたっては0です。

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このように経済格差、学力格差の時代がはっきりしています。
実際、旧帝大学の医学部を目指す場合、学校側、予備校側から一浪、二浪は覚悟してくださいと言われたと聞き及んでいます。

果たしてこのままでいいのでしょうか?

私のような1個人が出来ることはささいな事しか出来ません。しかしそれでもなんとかこの現状に立ち向かうためにも、まずは今いる子たちと共に足元をしっかりし、対抗できる力をつけていかなくてはならないと思っています。

それは、これまで何度も申して参りました、小学校時代からの基礎学力を中学の段階で失速させないよう、早めの学習習慣の確立にほかならないと思っています。

きっと地域にも同じ思いのご家庭、生徒はごく少数でもいるはずだと思っておりますし、今日おいで頂いた皆様も同じ思いを抱いていらっしゃると思います。
私にできることはほんの小さな力でしかありませんが、生徒、親御さまと3人4脚で今困難を乗り越えていかなくてはならないと思っております。

最後に


私は子どもの誕生と共に
JAの子ども共済に18年満期で200万ずつ積立し
こども手当分、月5000円づつも積立し、
合計300万ずつ積立できるように計画しましたが、、、

全く足りませんでした。
まず、2人芸術方面の進路になるとは思っていませんでした。結果、老後資金の積立が全部学費にまわることになりました。

それでも、自分が成し遂げられなかったことをしようとして頑張っている子どもたちを応援しようと、私も頑張っています。

弁明しておくと、結婚時、子どもの教育費は私が高校卒業時の平成元年の大学入学の私立大学初年度額をもとに計算して積み立て計画をしました。

が30年前に比べ、給料水準は変わらずむしろ減っているのに大学の授業料は1.5倍超になってしまったのです。

幼保無償化、高校無償化してきて
一見子育て環境は良くはなっているのですが、その分を教育資金として積み立てしないと大学進学時に進路が狭まる結果となってしまいます。
その場合、奨学金を利用することも考えてみましょう。
私も大学進学時に奨学金を借りていましたし、子どもたちも借りて進学しています。
なしとげたいものがあり、それに向かっての上昇志向的借金であれば、人間なんとか頑張れると思っています。

ご静聴ありがとうございます。

※このnoteはR3.6.24にTwitterのスペースにてお話しした内容をまとめたものです。


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