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【読書メモ】『両立思考』ウェンディ・スミス (著), マリアンヌ・ルイス (著)


▶今回の読書記録 『両立思考』 ウェンディ・スミス (著), マリアンヌ・ルイス (著)

  • 『両立思考 「二者択一」の思考を手放し、多様な価値を実現するパラドキシカルリーダーシップ』

  • ウェンディ・スミス (著), マリアンヌ・ルイス (著)

  • 日本能率協会マネジメントセンター

▶感想

これまで「両立思考」の大切さは認識してはいましたが、では具体的に何をどうすれば良いのかが分かっていませんでした。この本では「両立思考」について体系的にまとめられており、今後、両立思考に向けたABCDシステムを意識しながら、組織リーダーシップを少しずつでも良いので発揮できればと思います。

▶読後メモ

用語の定義

  • 緊張関係(テンション):
    対立する、二者択一的な期待と要求を伴う状況。
    緊張関係とは、表出しているジレンマと背後にあるパラドックスの両方を含む、包括的な用語である。

  • ジレンマ(表出している):
     選択を迫られる、対立する選択肢。

  • パラドックス
    (背後にある)" 同時に存在し、長時間持続する、矛盾していながらも相互に依存する要素。

  • 択一思考(Either/Or)と両立思考(Both/And)
    択一思考は限界があり、最悪の場合は害をなす。時代は両立を必要としている。

  • 考え方・感じ方・動き方
    考え方=認知、感じ方=感情、動き方=行動。自己補強的であり、自分が好む見方を強化する。

4種類のパラドックス

  1. パフォーマンス・パラドックス:成果の緊張関係「なぜ?」

    • 仕事と私生活/目的と手段/手段と規範/ミッションと市場

    • CSRはパフォーマンス・パラドックスの古典的な例

    • リーダーが次の5つのコア・アイデアを土台とすることで、より影響力が高く、利益が上がり、持続可能なビジネス・ソリューションを開発できる

      • 利益だけでなく、目的、価値観、倫理が重要

      • 株主だけでなく、ステークホルダーにとっての価値を創出することが肝要

      • ビジネスを、市場機関としてだけでなく社会的機関として見る

      • 人々の経済的関心だけではなく、人間らしさを認識する

      • 「ビジネス」と「倫理」を、より包括的なビジネスモデルに統合する

  2. 学習パラドックス:時間の緊張関係「いつ?」

    • 短期と長期/伝統と近代化/現在と未来/安定と変化

  3. 組織化パラドックス:プロセスの緊張関係「どうやって?」

    • 管理と柔軟性/集権化と分権化/創発性と計画性/民主主義と権威主義

  4. 所属パラドックス:アイデンティティの緊張関係「誰?」

    • 全体と部分/グローバルとローカル/内部と外部/私たちと彼

両立思考に向けた4つのツール「ABCDシステム」

  • ABCDシステムは、対立しながら絡み合うような要素を構成する。

  • A.アサンプション(前提):両立の前提への転換

    • 「前提」によってマインドセットと認知が形成され、それが私たちの行動の意影響を与える。

    • パラドックス・マインドセットには、①緊張関係を経験することと、②その緊張関係の枠組みを二分法的な択一型からパラドキシカルな両立型に変えること、の両方が含まれる。

    • 両立思考は、次の3つの分野において、背後にある前提をシフトするところから始まる

      1. 知識:真実をただひとつの正誤の定まる問題と考えず、複数の真実が共存できると認識する方向へ。

      2. リソース:不足思考から潤沢思考へ。パイをどのように分けるかという問題から、パイの価値と影響を増す創造的アプローチを設計する方向へ。

      3. 問題解決:コントロールからコーピングへ。パラドックスの不確かさを乗りこなすためには適応力と学習能力が不可欠であることを認識する。

二分法的マインドセットとパラドックス・マインドセットの比較
  • B.バウンダリー(境界):境界を作って緊張関係(テンション)を包み込む

    • 「境界」とは、パラドックスを乗りこなす能力を支援するために導入する、構造、慣行、人を指す。

    • 両立思考をさらに活用するために役立つ中心的領域は次の3つ

      1. 高次のパーパス:包括的なビジョンのステートメントは、緊張関係を受け入れ、対立極を統一し、短期的な混沌を最小限にとどめるように長期的な目標に集中するためのモチベーションとなる。

      2. 分離と接続:構造、役割、ゴールを設定すると、対立する要求を分離し、それぞれの要求を独立して尊重し、それらを引き合わせることにより、相互依存性と相乗効果を尊重できる。

      3. ガードレール:構造をつくると、緊張関係の中で一方向に行き過ぎて悪循環に陥ることを防ぐことができる。

  • C.コンフォート(感情のマネジメント):不快のなかに心地よさを見つける

    • 背後にあるパラドックスは、恐れ、不安、防衛反応などの不快感を刺激する。こうした感情に基づいて行動すると、了見の狭い択一思考に陥るおそれがある。両立思考を可能にするには、こうしたネガティブ感情に対処しながらも、次の3つのツールでポジティブ感情を刺激する必要がある。

      • 間を置く:ネガティブ感情と反応の間に間を置く(深呼吸をしたり休憩をとったりして、状況から一時的に距離をとる)ことで、パラドックスへ即時的かつしばしば非生産的な反応を引き起こさずに、感情を大切にすることができる。

      • 不快感を受け入れる:ネガティブ感情を拒否しようとすると、ネガティブ感情をかえって強化するリバウンド効果が生じる恐れがある。ネガティブ効果のインパクトは、拒否や隠蔽ではなく、受け入れて身を委ねることで最小化できる。

      • 視野を広げる:不確かさを前にしたときに、エネルギー、不思議、高揚感といったポジティブ感情が生じると、思考が拡張され、さらなるポジティブ感情が生まれるように拍車をかけることができる(ポジティブ心理学の基礎理論「拡張-形成理論」)。このフィードバックループは、パラドキシカルな緊張関係に対し、よりオープンな両立型アプローチの採用を促す。

    • パラドックスを乗りこなすことは、パラドキシカルである。競合する要求に効果的に対処するには、ネガティブ感情とポジティブ感情の両方を活用する必要がある(感情の両価性)

  • D.ダイナミクス(動態性):動態性を備え、緊張関係(テンション)を解き放つ

    • 択一思考によって、溝に挟まることがある。これに対処するため、学習、成長、変化を可能にする両立思考がともめられる。次の3つのツールは極めて重要で継続的な動態性を備えるために役立つ

      1. 反応を測定しながら実験を繰り返す:小さく、頻繁に、低コストで新しいアイデアを段階的にテストし、フィードバックに学び、前進すると、不確かさを経験している間にも組織を推進することができる。

      2. セレンディピティへの備え:備えている人に訪れる幸運を通じて、イノベーションと変化の可能性を、よりうまく広げられるようになる。意図的な探索によって、チャンスを経験または創出する立ち位置に身を置き、チャンスに取り組むマインドセットを備えておくことができる。

      3. アンラーニングの学習:パラドックスは動態的で、知っていることを常に考え直し変化させることを求められる。そうするためには、既存の確かさを手放す心構えが必要になる。

組織の課題→4種類のパラドックスの関係

  1. オブリゲーション(義務) → パフォーマンス・パラドックス

    • 自己と他者/仕事と私生活/目的と手段/ミッションと市場

  2. イノベーション → 学習パラドックス

    • 短期と長期/現在と未来/安定と変化

  3. コーディネーション(調整) → 組織化パラドックス

    • 管理と柔軟性/集権化と分権化/創発と計画/協力と競争

  4. グローバリゼーション → 所属パラドックス

    • 全体と部分/グローバルとローカル/内部と外部/私たちと彼

組織リーダーシップ:リーダーがやるべきこと

組織にABCDシステムを取り入れるためにリーダーがやるべきこと


以上です。


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