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教材を深く読み解く思考法NO2

前号では、教材を深める思考法の一つ「相対主義で教材解釈を深める思考法」について述べました。本号では、第2弾「人間理解から教材解釈を深める思考法」について私なりの見解を述べていきます。

2 人間理解で教材解釈を深める

人間理解とは、「道徳的価値は大切であるが、実際の行動に移すことは難しい」ということを理解するという考え方です。

例えば・・・
親切にすることは大切だと分かっているが、実際に困っている人を助けることは難しい。
ルールは大切だが、ついつい破ってしまうこともある。
などです。

つまり、善さが分かっていても、めんどくさかったり、忘れてしまったりするため、常に正しい行動することは難しい、ということを理解させるという考え方です。
道徳の授業では、「正しいこと」だけを学ぶのではなく、このような人間理解を深めることで、人間の弱さと同時に奥深さを学んでいくのです。


実は、人間理解の考え方は、子どもにとても共感されやすく馴染みやすい考え方です。
なぜなら、子どもはこのようなことを数多く経験してきているからです。

とはいえ・・・
授業の中心に人間理解の考え方を持ってくることは、とても難しいことです。
なぜなら、「努力することは大切だ。でも、人間だからできないこともある」で授業を終えた場合、「理想は努力することだけど、自分には難しい」と子供への学びも浅くなってしまいかねないのです。。

だからこそ、人間理解を中心に授業を組み立ていることはあまりしません。
しかし、子どもに共感されやすい人間理解の考え方を取り入れることは、授業を格段に良くしてくれる可能性に秘めています。
そこで、本号では人間理解を中心に据えた教材研究と授業作りの提案を行います。

人間理解で教材解釈を深める観点は、次の3つです。

(1)「やりたい」と願うことが人間の良さである。
(2)「正しい」と分かっていてもできない時ってどんな時?
(3)自分の行為を後悔することはスタート地点。

上述しましたが、「大事だけど、人間だからできない事もある」というのが人間理解の考え方です。
しかし、これで終わりではなく、実は、その続きがあるのです。
その続きがポイントで述べた3つの観点です。
そして、何よりその続きの方が人間理解の本質的のです。

1つずつ説明していきます。

(1)「やりたい」と願うことが人間の良さである

先ほど、人間理解には「〜できない事もある」の続きがあるということを述べました。
では、その続きとは・・・

①「〜できない事もある」
②けど「やりたい」と思っている。
③その「やりたい」と願うことが人間の善さである。

例えば・・・
正直について考えさせたい時、次のように教材解釈を深めていくのです。
関連教材:「のりづけられた詩」

このように、人間の弱さも認めながらも、本当は「よりよく生きたい」と願っている善さまで考えさせることができれば、子どもにとっても新たな発見があるはずです。

(2)「正しい」と分かっていてもできない時ってどんな時?

もう1つの「〜できない事もある」の続きです。
それは・・・

①「〜できない事もある」
②でも、それってどんな時?
③そんな時に、気をつけよう。

例えば・・・
規則やルールについて考えさせたい時、次のように教材解釈を深めていくのです。
*関連教材:「黄色いベンチ」

このように、「正しい」と分かっていてもできない時の心の状態を理解させることで、
「次からは気をつけよう」
「そんな時に、ルールを破ってしまうんだ」
と客観的に自分を見直すことができるのです。

(3)自分の行為を後悔することはスタート地点

それでは最後です。
それは・・・

①「〜できない事もある」
②そんな時には、「なぜできないんだ」と後悔する
③しかし、「よりよくなりたい」と願っているからこそ後悔する
④後悔の気持ちは、「次こそは」というエネルギーに変わる

詳しく説明します。
例えば・・・
努力することは大事と分かっていても、人は安きに流れてしまいます。
しかし、その後「もっと努力すれば良かった」と後悔の念が生まれます。
それは、次の同じようなシチュエーションになった時に、「前は怠けてしまったが」「次こそは」というエネルギーになることがあるのです。
*関連教材:「夢に向かって〜三浦雄一郎〜」「まどガラスと魚」

このような気づきがあれば、できなかった自分を恥じるのではなく、後悔する気持ちに向き合うことが大切なのだということを理解できるはずです。

今回は、少し難しかったかもしれませんが、道徳の授業で行き詰まった時に読んでいただけると、何かのヒントになるかもしれません。
ぜひ、ご活用していただけると幸いです。

次回は、Pointの3つ目「人間の本質から教材解釈を深める」について述べていきます。

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