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道徳科における拡散と収束 No4

本シリーズでは、登場人物の心情理解のみに偏った道徳授業から脱却するために必要な「拡散的思考」と「収束的思考」について私なりの考えを述べて参ります。興味のある方は、シリーズの最後までお読みいただけると幸いです。
*前回号で、「収束的思考」の必要性について投稿させて頂きました。合わせてお読みいただけると幸いです↓

1 コンパクトに分類整理する

前号で、子どもの拡散した情報に対して収束的思考を促し、深く掘り下げて考えることで、道徳的価値の理解が深まることをお伝えしました。
では、どのように収束的思考を促せば良いのでしょう。
その鍵は、教師が子どもの発言をどのように分類し、整理してあげるかだと思います。
例えば・・・

【定番教材:手品師で考える(内容項目/正直、誠実)】
教師:男の子の約束を守った手品師は誠実ですか。
子ども:約束を守ったから誠実だと思う。
教師:でも、「大劇場で手品をする」という自分との約束は守っていないよね。(拡散的思考を促す)
子ども:確かにそうだ。誠実じゃないかも。
子ども:大劇場に行く方が夢に誠実だ。
子ども:でも、男の子を裏切ったら誠実じゃなくなる。
子ども:裏切りではない。自分の夢を追いかけているだけだ。
子ども:そうだ。紹介してくれた友人にも失礼だ。
子ども:いや、手品師は自分にとって大切なことは喜んでくれる男の子だと考えたから誠実だと思う。
子ども:大勢のお客さんを喜ばせるのは大劇場の方ができる。

このように様々な視点や観点から考えが出てきます(図1)。

図1 拡散的思考

そこで、教師が次のように分類し、整理してあげます。

このように板書などを活用し分類整理することで、子どもは自分がどの立ち位置から発言しているのかがはっきりと見えてきます。

2 収束的思考を促す発問


子どもが、自分の立ち位置(視点)や大切にしている(観点)が見えてきたら、その後の発問がとても重要です。なぜなら、まだこの段階では、分類整理はできていても収束的思考が働いていない状態であり、ねらいに迫るような一手を打てていないからです。そのため、次のような価値の理解を深めるアプローチが必要です。
○自分の視点や観点で考えを深める。
 →あなたは、誠実に生きる時に何を大切にしたいですか。
○登場人物の視点や観点で考えを深める。
 →手品師は、お金や名誉を失ってまで何を大切にしたかったのでしょう。
○多様なの視点や観点で考えを深める。
 →手品師が、男の子の約束を選んだ誠実さは、誰にどんな影響を与えるのでしょう。
○時間や空間の変化で考えを深める。
 →手品師(または「あなた」)の選択は、これからの生き方にどのような影響があるのでしょう。

教師が、子どもの発言を分類整理してあげ、さらに価値の理解に焦点化するような問いを与えることで、子どもの収束的思考が促され、深い学びに向かうことができるのです。

次号では、「道徳科の書く活動」について投稿いたします。
*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。

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