[読書] システムインテグレーション再生の戦略

Slerとは全くではないけど、あまり付き合いがない。基本的に内製のシステムを使っているので、お話があってもお断りすることが多かった。
しかし、先々を考えると切り出し可能なところはSlerに手伝ってもらうのもありかと思っている、が、なにせSler業界に疎いので話題になっていた本書を読んでみることにした。

業務用システムも以前のような「オンプレミス」&「ウォーターフォール開発」一辺倒ではなく、クラウド、アジャイル開発なども広がりを見せているし、BIツールのスキルをもった非エンジニアの力も増している。そんな時代の変化のなかでSlerも変わらければ!というのが本書の趣旨になる。

本書を読んでSlerの考え方が少し理解できた気がする。

ポストSIビジネスの3つの戦略
特に読み応えがあったのが3章の 「ポストSIビジネスの3つの戦略と9つのシナリオ」でした。「ビジネス同期化戦略」「アプリケーションプロフェッショナル戦略」「クラウドプロフェショナル戦略」があります。

ビジネス同期化戦略
ITがビジネスの競争優位を創る武器として使われるとき、加速するビジネスのスピードに即応できなければならない。シナリオとして「内製化支援」「シチズンデベロッパー(一般人開発者)支援」「アジャイル型開発請負」がある。本書はSler視点で書かれているが、お願いする立場からすれば、どれもビジネスの変化(要件が変わってゆく)に素早く対応するというところがポイントである。及川卓也さんの「ソフトウェア・ファースト(めちゃくちゃいい本)」にもある「IT活用の手の内化」を実現するには、お願いする立場の方がIT活用とビジネスの効果をトライ&エラーの回数を多くしながら最適解を見つける必要がある。Slerがどのような視点でこの問題に向き合っているか興味深かった。

アプリケーションプロフェッショナル戦略
従来のSIビジネスで培ったノウハウを活かし、専門特化することで差別化する戦略。シナリオとして「特化型SaaS/Paas」「ビジネスサービス」「業種・業務特化インテグレーション」がある。これはお願いする立場からすれば、ビジネス特性に関係なく、どの企業でも同じように問題になっている領域や、自分たちでは背負いきれないくらいの専門性が必要な領域はSler側のノウハウが蓄積しているので、お任せしやすい。と、言ったところ。例えばECサービスに関するSaas/PaaS や、経費精算や決済、データ解析、在庫管理のSaaS/PaaS(特化型SaaS/PaaS)、文書スキャニング保管業務など(ビジネスサービス)、高度な安全・安心が求められるもの、法律制度と深くリンクしている領域のもの(業種・業務特化インテグレーション)など、、Sler側は標準化と汎用化の徹底が必要。

クラウドプロフェッショナル戦略
インフラがクラウド化するのは避けられないので、むしろ進んで支援する方にまわる戦略。シナリオとしては「クラウドコンサルティング」「クラウドインフラ構築」「クラウド運用管理」がある。

オンプレをクラウドへ移行する支援や、ビジネスに合わせてクラウド活用の企画支援(クラウドコンサルティング)、クラウドでインフラ構築を請け負う(クラウドインフラ構築)、クラウドでの運用管理を請け負う(クラウド運用管理)がある。
これはお願いする立場からすれば、どうなんだろう?自分で勉強すればいいのでは?と思うが、アドバイスが必要なケースもあるのかもしれない。またオンプレ老朽化→クラウドは経営者にも分かりやすく、結果も出やすいシナリオなのでSler側は儲けやすいところかもしれない。

他国の状況 
よくアメリカ企業は内製をし、日本の企業はSlerに丸投げする、、と、言われる。実際のところどうなのだろう?と疑問に思っていたのだけど、ちょうどいい資料があった(第4章 ポストSIビジネスをさせるグローバル戦略、プライシング戦力、人材育成戦略 /  グローバル戦略を成功させる考え方)。
これによると、アメリカ・中国・インドは大企業で戦略的にITを使用する企業は内製、中小企業はフルアウトソースとあり、ロシア・日本・韓国はアウトソースが多く、大小さまざまなSlerベンダーの多重構造となっている。と、ある。どう捉えるかはそれぞれだと思うけど中国はアメリカをよく研究したのだろうと思った。

パワーポイント資料
本書は他にも「第1章システムイングレーションの現実と課題」「第2章これからのカギとなる3つのトレンドと10つのテクノロジー」「第5章新規事業を成功に導くために知っておくべきこと」などがある。どれも興味深い。

また、本書の図表が全60ページにも及ぶパワーポイントにおさめられたロイヤリティフリーの資料を購入者特典としてダウンロードできる。価値の高い資料だと思う。

感想

良く知っているIT業界ではない大手グループも、これからのシステムは丸投げではダメだ!内製も挑戦すると言い出した。たぶん何かの受け売りなのだろう。しかし、今現在でもシステムとまで言わなくとも各部署がExcelなどを使ってツールを手作りすることはよくある話だ。今後はもっと増えていくだろう。なにせ義務教育でプログラムを学ぶ時代になるのだ。10年後にはある程度教育を受けた子供たちが社会人となる。また、今現在の社会人ももっとプログラムやそれに付随する知識を学ぶだろう。
そういった人々がみんなIT業界へ行くかといえば、そうとは思えない。IT業界以外の企業の人々がどのようにプログラムの力を業務に活かすようになるのかは興味深い。
本書でいうところの「ビジネス同期化戦略」が該当するだろう。
Excel + Jupyter notebook(python) あたりは即戦力として使えるだけのポテンシャルはあるような気がする。
どっかの企業でどのような課題とチャンスがあるのか見せてもらえるものなら相談させてほしいものだ。


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