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読書_マネジメントへの挑戦/一倉定

本書の初版は1965年に発行された。
著者の一倉定さんは多くの中小企業にドラッガーのマネジメント理論をもたらした経営コンサルティングの方のようです。
多くの中小企業の社長と向かい合い、マネジメントを理論だけだけはなく泥臭い実践にまで落とし込んだ。
古い時代の本だからと言って内容は古臭くない。時代に合わないものは枝葉の葉の部分だけであり、枝や幹は今の時代にも十分通用する。というか、こういった教えがあったのにも関わらず、なぜ、多くの日本企業は現在の姿になってしまったのだろう?
例えば「報告主義の誤り」「朝令暮改は必要」「責任と権限は一致しない」など、当時より現在の日本企業の方が必要なことが書かれている。さらに「知識にかたより過ぎた教育」過ちとはっきり言っている。今まさに学校教育改革でうたわれていることだ。日本は海外との競争に負け、圧力に負け、ようやく重い腰を上げたが、1965年に企業経営の中心にいた人物がすでに唱えていたのだ。

ユニクロの柳井正さんの書棚には一倉定さんの著書がぎっしり並べられているという。
簡素にまとまった言葉の数々は読みやすく理解しやすい。(ドラッガーは簡素とは言えないと思う)

偶然手に取った本だけど、良いものを読んだ。

「有能な経営担当者への道」という章では

以下を説く、

自分自身を管理せよ
上を向け
決断せよ
目標を設定せよ
結果に注目せよ
時間を有効に利用せよ
優先順位を決定せよ
人の長所を利用せよ
自己啓発を

簡素にて完璧な指南だと思う。
自分自身を管理できなければ他人を管理できない。上手くいかない日本企業の目標は上を見ておらず、決断もしていない。
結果、時間、優先順位はもちろん、人の長所は部下だけではなく、取引先、上司の長所を利用せよと説く。
上司のマネジメントは 元Googleの人の本「ゼロから“イチ"を生み出せる! がんばらない働き方」にもあったことだ。

「計画は本来机上論である」という章では

経営は「将来に関する現在の決定」というドラッガーの言葉を使い。計画以上でも計画以下でもいけないとする。電車の時刻表が計画であり、早くても遅くてもいけないとする。高い目標を掲げそれ通りに行うのが計画であるとしている。

また、できるだけやるのような曖昧な”できるだけ主義"ではなく、いつまでに完成する、これだけ安くするという具体的な"これだけ主義"の計画を勇気をもって採用するべきとしている。

また、計画の基礎の第一を「生きること」、第二を「トップの意思」としている。
そのうえで、計画の最高峰を「経営方針」としている。

さらに、「作業改善」的な考えは誤りであり、結果から計算するべきとしている。高い目標が先にあり、それを実現するための現状調査、新基準と目標のギャップを埋める必要がある。

予算についても、現状ベースからではなく、目標から逆算して予算編成すべしという。

ここまで読んで、嫌な気分になった人も多いのでないかと思う。実現不可能な目標のための無理な計画、無理な予算、苦しい活動という話はよくある話だ。しかし、形骸化した流れの本来の目的やあるべき姿を知ることが重要だと思う。

本書で特に良いと思ったことは、予算の中に将来の事業のための「未来事業費」を入れるべきと書いてあることだ。

売上 - 現事業費 = 現事業利益 - 未来事業費 = 純利益 

としている(財務会計上の話ではありません)

コストダウンの近道はこの未来事業費を削ることが手っ取り早い。しかし、それをしたら未来を失うということになる。

3度の飯(現事業費)は2度にしても(節約)、子供の教育(未来事業費)をするのが親の役目 という。

バブル後の日本企業の多くはそこを削ってしまったのかもしれない。



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