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読書_サクッとわかるビジネス教養 地政学

地政学とは「国の地理的な条件をもとに、他国との関係性や国際社会での行動を考える」。図が多く基礎知識というか基本的な原則を理解できるのでよい本だと思いました。

地政学の基礎知識

まず、地政学を知るうえでの基本知識から。

バランス・オブ・パワー:No1 の国が No3の国を巻き込んで、No2の国を敵視する。例えばアメリカの場合、No1のアメリカは日米貿易摩擦と言われた1980年代はNo2の日本をNo3の中国と組んで敵視した。現在ではNo2の中国をNo3の日本と組んで敵視。

チョーク・ポイント: 物流の中心は海路(ルート、シーレーン)であり、そのルートの命綱のポイント。例えばパナマ運河、スエズ運河、マラッカ海峡、ジブラルタル海峡など。アメリカが強いのは世界一の海軍をもちチョーク・ポイントに影響を持つことができるから。

ランドパワーとシーパワー:ランドパワーは鉄道などの陸運中心の「ロシア」「ドイツ」「フランス」、シーパワーは「アメリカ」「イギリス」「日本」などの海洋国家。地政学的にはランドパワーとシーパワーを同時に持とうとすると失敗するとされる。旧日本はシーパワー国家であったのにもかからず、中国を攻めランドパワーをも持とうとして失敗したと考える。

ハートランドとリムランド:ハートランドはユーラシア大陸の中心部、リムランドはユーラシア大陸の海岸部。リムランドに人口が集中しており経済の中心。紛争の中心になる。例:アジア(中国vsアメリカ)、中東(イランvsアメリカ)、ヨーロッパ(ロシアvsEC NATO)。

拠点:影響力を持つために、重要地点付近にレーダーや軍隊を置ける拠点が重要、横須賀、沖縄はアメリカのアジア戦略における重要拠点。

そして、各エリアごとの地政学の紹介。

日本の地政学

明治維新まで日本は国内完結のランドパワー国家だったが、やがて海外進出をめざし、強い海軍によるシーパワーと大陸進出(ランドパワー)を同時に持とうとして失敗。戦後はアメリカの傘のもとシーパワー国家になる。
拠点としての横須賀基地と沖縄基地はの重要度は大きい。1万キロメートル圏内にロンドン、モスクワ、北京などの主要都市がすべて入る。また横須賀は世界最高峰の基地設備があり、アメリカ国外での唯一の空母の基地でもある。アメリカの世界戦略に欠かせない。
また、日本は石油の消費量が世界四位で、中東からの輸入が命綱。そのシーレーンを守っているは100%アメリカ。

そういった基本知識を持ったうえで、基地問題などを考えないといけない。

アメリカの地政学

北南アメリカ大陸に拮抗した国家がない、巨大な孤立したシーパワー国家と見ることができる。世界中に拠点を持ち、ユーラシア大陸の重要地点、アジア(中国vsアメリカ)(重要度が高い)、中東(イランvsアメリカ)(以前より重要度が低い)、ヨーロッパ(ロシアvsEC NATO)(ロシアの拡大を防ぐ)をコントロールしている。
アジアではシーパワー国家と連携して中国をけん制しているが、エネルギー問題を自国で解決できる見込みになったため中東問題からは手を引きたいのが本音(中東の石油に依存する日本との違い)。

ロシアの地政学

2000年以降に北極周りの「北極海ルート」が開拓された。ロシア・ソ連の長年の地政学的戦略は「凍らない港の確保」だったため、このルートは大きな意味を持つ。北極まわりには石油や天然ガスもあるため開発が進むと思われる。
そのルートんため、ロシアにとって千島列島の意味は拡大している。
ハートランド国家なので経済力は低い。

中国の地政学

巨大が故に周辺国家に攻められる恐怖心がある。漢民族以外に50民族以上がいる(防衛費を上回る治安維持費)。中国史上2度目のシーパワー国家を目指している。

中国の海洋進出:尖閣諸島への侵入を繰り返す、南シナ海に人口島建設、スリランカに港を建設(中国企業が運営権を獲得)、紅海・アデン湾に初の海外基地、北極海に砕氷船を送る。

一帯一路:陸ルート(一帯)、海ルート(一路)を確立しようとする戦略。

地政学的にはランドパワーとシーパワーの両方を確保できた国は歴史上存在しない。中国はどうだろうか?

感想

国際紛争、競争の基礎原理を抑えることができる。違和感を感じる部分もある、例えば地政学的には古代ローマはランドパワー国家だったのにシーパワーを獲得しようとして崩壊したと書いてあったがそうとは思えない。
ランドパワー・シーパワー両方を得ようとする中国の挑戦はどのような結果になるのか興味深い(日本も多大な影響を受けるので他人事ではないのだけど)。


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