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デザイナーがカナリアのようにドタバタする作法

PLAID Design Advent Calendar 2024 Vol.4はプロダクトデザイナーのuepon /  上野 翔平が投稿します。最近は自社で持っているデータを使い広告効果を根本的に改善するKARTE Signalsを担当しつつ、デザインシステムへの昇華もしています。
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お気持ち→ドタバタ

今年のある日、社外のデザイナーさんと話をしていた時のことです。普段事業や組織の都合上、理想とは異なる意思決定をせざるを得ないケースについて、「お気持ち」として伝えているという話を聞きました。
その時に、原研哉氏と良品計画会長の金井政明氏との対談で語られてた「カナリア」の比喩が頭に浮かび、その例をもとにドタバタすることの大切さについて話が弾みました。

(15分くらいからこのお話の文脈がはじまります)
原研哉氏は、デザイナーの在り方について興味深い示唆を投げかけていました。かつて炭鉱で使われていたカナリアのように、危険を察知したらドタバタと警鐘を鳴らす存在としてのデザイナーの役割と近いという内容です。

自分も今年の社内・社外含めて、デザインを主軸としたものづくりの仕事を振り返るとドタバタしている事が多いことに気づきました。
そしてこのドタバタを改めて大切にしていきたいという想いを持ち、このお題で記事に書くことにしました。


『カナリア的特性』とは

デザイナーは長期的なビジョンやコンセプト、一貫した体験から形、ブランドの本質など、非言語周りから言語部分まで広げて、物事を捉えるのが上手な人が多い印象です。もちろんデザイナー以外にも上手な人はいます。

この特性は、突き抜けるサービスを作る上ではとても大切なことであり、同時に目先の論理的な解が長期的な価値と相反する可能性を察知することなのではないかと思っています。

ドタバタの実践例

具体例を挙げると、あるプロジェクトでユーザーに対する機能開発の範囲を決める局面がありました。その時様々な角度からのアイデアやHowが発散され、もしかしたら我々の目指す方向とは異なる方角に傾きかけたときに、「ビジョンから見たときに、達成するために必要な方向性は何かで考えるとアイデアAやHowA'は近づきそうですよね」という視点を投げかけました。

また、上記の類似シーンにおいて、「ブランドでBと定義しているのでHowB'が1番、らしさがありますよね」と議論を進めていくこともありました。

目先の改善施策がプロダクトのビジョンやブランドを損なうリスクがあると感じた時、しっかり延長線上に点を置ける選択肢を提案することで、本質的な価値を保つことができました。これは典型的な「カナリア的な動き」だったのなかなと思います。

このように意思決定を行うプロセスを踏むことで、複数の方角の解のアイデアに対して光っている方角が見え、そちらへ一歩進められるイメージがありました。

これらを見逃してしまうと、体験レイヤーで負債が溜まってしまい、長い目で見た時にコンセプトからの再設計→…→実装で大きく時間を費やす必要が出てきてしまいます。

ドタバタの実践へ

このようなドタバタを効果的なアクションに変えるには、以下の実践が重要だと思います。

  1. 正しい言語化と視覚化

    • MTG中で即座に必要な場合は、違和感を言語化して伝える。そしてそれを解決できる別のHowもセットで伝えて全員が比較できる状態にする。

      • そのHowが積み重なった時にビジョンに近づくか?コンセプトを体現できるか?問いかける。軸が変化しないか?変化する場合はどう全体適応させるかもセットで考える

      • 普段の人が日常取り扱うメンタルモデルで伝えると伝わりやすいことがある

        • 通知:家のポスト

        • 買い物系:お店の棚/自分家の棚

        • レター:印刷されたテンプレのチラシ/自筆の手紙

    • 必要に応じてプロトタイプやビジュアルで示す

      • 一定時間の猶予があるのであれば、対面であればホワイトボードや実際のPrototypeを作ることで各々の脳内のイメージから共通理解が生まれる

  2. 情緒と論理の往来

    • 論理的な解を情緒的な視点で見直す

    • 情緒的な判断を論理で裏付ける

    • 上記2つ切り替えを具体↔抽象のように反復思考する

目先の効果よりも大切なこと

こうした取り組みの効果は、チームの状態によって異なると思います。ビジョンやコンセプトの設計度合いから浸透度、課題に対する切迫度、チームの構成や組成目的の種類によって、共感から実行の度合いは変化します。

しかし、上記前提が様々であっても一番重要なのは、少し先の未来に行き着いたときに、「正しい」と思える意思決定につながる確率を上げることです。
このためにファーストペンギンからセカンドペンギンまで広げられる活動をすることもデザイナーの1つの役割として大切なことです。
これは小さいようで、この1つ1つの積み重ねが非常に重要だと思っています。

ドタバタの作法

  1. 継続的なドタバタ

    • なんか違うかも?という信号を察知したらドタバタする

    • 具体的な懸念点を示す

    • より良い代替案を提示する

  2. 本質への回帰

    • 複雑化を避け、シンプルに本質を突く

    • 長期的な価値を見据えた判断を促す

    • チーム全体でビジョン・ブランドを共有する

このドタバタは、組織やプロジェクトの健全性を保つための重要な役割を果たすものです。それは単なる異議申し立てではなく、より良い未来に向けた建設的なコトの提示であり、続けることに大きな価値があるはずです。

MTGの雰囲気を悪くしちゃうかも?嫌われちゃうかも?と思う人もいるかもしれません。
でも察知をスルーせずに、まずはドタバタすることで、少し遠い未来の何かが良い方向へ進むと私は信じています。

少し早いですが、皆様今年もお疲れ様でした。良いお年を。来年もドタバタしましょう!





次回12/5はYusuke Nakanishi sanの「Figma Dev Modeの基本と実践:デザイナーとエンジニアのための機能ガイド」になります。


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