見出し画像

私のコト〜着られなかったドレスと辿り着けなかった人たち〜

数年前のこと。
ついこの前の台風のように、毎週新しい台風が発生しては各地の様々な人々をハラハラドキドキヤキモキさせた時期の話である。

当時の私は色々あって、疲れていた。
仕事では上司からの期待と先輩からの嫉妬に悩まされ、プライベートでは空き巣に遭い、婦人科系の通院もあって、とにかく疲れていた。
それでもなんとかこの日を迎えられた!
そんな中、私は更に不安で胸を押しつぶされそうになる。

そう、台風予報と結婚式がバッティングしたのだ。

そんなまさか…
確かに私の人生の節目、悪天候に見舞われる事は多かった。
幼稚園の入園式は季節外れの雪、大学の卒業式は大雨。
ただ、多かったと言ってもこれくらいである。
インパクトが強いので、かなり印象には残っているのは間違いないが。

結婚式、そんな日にまさかである。
ちなみにリゾート地での結婚式であった。
予定の数日前から夫は何度もプランニング会社に連絡をし、約款を読み、キャンセル要項についての確認を続けた。
天気予報とにらめっこしては、キャンセルの判断に迷っていた。
この時のプランナーは今でも忘れない。
こちらが何を言おうと、キャンセルはさせないのだ。

希望を持ちましょう
先週の挙式は実施できました

希望はいつでも持っている。
なんなら希望に満ち溢れた結婚式だ。
先週の挙式についてはしらんがな。
私たちの結婚式は今週末だ。

約款では当日現地でキャンセルの場合は全額支払い。
ただ、天候により現地へ行けなかった場合などについては少し不明瞭であった。
電話で何度も問い合わせる。
そして、何度目かの電話で出てきたのは、台風で当日キャンセルの場合、全額返金である、と言う口頭での説明のみだった。

結婚式前日、なんとか私たちは現地入りすることができた。
飛行機はなんとか飛んでくれ、家族旅行はスタートした。
道中も楽しく、ホテルも新しく綺麗で、天候の影響を受けているとは言え、海の綺麗な場所だった。
子どもの頃のような家族だけでの旅行は何年振りだろう。
家族は観光へ行き、私たちは前日の最終打ち合わせへ向かった。

だがしかし。
ここに来て、まさかの話に2人してフリーズしてしまった。
・既に台風の暴風域に入っているので最悪中止になるかもしれない
・当日キャンセルなら返金なし、今の時点で判断、キャンセルなら半額返金
まったくプランニング会社と現地とで、話が違ったのだ。

そこからはもう言った言わないの話に近くなってしまい、本社に確認するので一旦お戻りくださいとホテルに帰されてしまった。
この時の現地スタッフさんには同情しかない。
何度も確認してきますと1時間以上かけて確認に行き、戻ってまた私たちに説明し、そしてまた確認。
とても真摯に対応してくれたように思う。
だがしかし、こちらも事前に確認した上で判断し、家族も来ている。
台風については何日も前から分かっていたのだ。
希望を持ちましょうと期待させたのは誰なのか。
いや、その根拠のない希望に縋ったのは私たちなのであるから、私たちが判断を誤ったのか。
見る目がなかったのか。

控え室には、翌日に備えウェディングドレスとタキシードが掛かっていた。
事前に悩んで選んだ、お気に入りのドレスだった。
ただし、それを着ることは二度となかった。

控え室から戻って2時間ほど待った後、プランニング会社側から天候による安全を憂慮し、キャンセルとさせてくださいと説明に来られた。
これにはまた驚き、言葉が見つからなかった。
この状況になるまで、安全は憂慮せず希望を持ちましょうと言っていたのか?

観光から戻った家族と夫が、今後の話をしに出て行った。
私は1人、ひっそりとホテルのベッドで泣いた。

ちなみに辿り着けなかった人たちは、夫の友人たちである。
家族のみでの予定だったが、ぜひ参列したいとのことで数名招待していた。
現地の上空数100メートルの時点で着陸不可、そのまま引き返したそうだ。
彼らは旅行のテンションを抱え消化不良を起こし、その足で別の地へ思いつくままに旅行を楽しんだらしい。
彼らもまた、ある意味では被害者であるが、楽しく過ごせたそうで、それだけで私の心は軽くなり胸のつかえが少し取れた。

この話はまだまだ続きがあって、きちんと別日程で結婚式を挙げることはできた。
それはそれで思い出深く、また機会があれば書きたい。
あのプランニング会社については、広告に使っていたタレントが離婚し、これほどまでにざまぁと思ったことはない。

性格悪い?

写真はリベンジを果たした際に行った海で撮った写真。
良い思い出で上書きできて良かった。

#結婚式の思い出


この記事が参加している募集

#結婚式の思い出

1,448件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?