絵の上手い人間が雪の日にすること
高2か高3のとき、めちゃくちゃ雪が降った日があった。
The・大雪
それはもうもう素晴らしく大雪だった。
高校生と言ってもまだまだ子供。
関東ということもあり、クラスの大半の人が窓の外に注目し、「めちゃ雪〜〜!」とはしゃいでいた。
「めっちゃ降ってんじゃん!」
「すげ〜〜」
「写真撮ったろ」
たまに「げー…電車止まるじゃん…最悪…」のタイプもいたけど、その子も内心、ちょびっとはワクワクしていたはず。
教室で写真を撮る人、外で雪合戦をする人、雪だるまをせっせと作る人、教室でただ雪を眺めぬくぬくする人、どうでもいい感出してる人
みんなが雪を堪能していた。
わたしは教室でぬくぬくしながら友達と雪を眺めていたが、ふと廊下に出て窓から顔を出して下を覗いてみた。
下は中庭?みたいな、少し開けた場所になっている。
昨日までゴツゴツのコンクリだった地面が、真っ白の、きれーいな、まっさらの地面になっていた。
そこにぽつぽつと人の足跡。
足跡を目で追っていくと、その先にクラスの女子が2人。
寒い中木の枝か何かを持って、何やら線を引いている。
何してんだろ。
絵でも描いてるのかな。
その2人はどちらも絵がすごく上手だった。
わたしのクラスには絵が上手い人がたくさんいたんだけど、その中でもセンスのいい2人。
そんな2人が何やら楽しそうに絵を描いている。
さすが、やっぱり白い紙を渡されたら何かしら描きたくなるよな。
ナスカの地上絵的な?
わたしは完成を楽しみにしておこーと思い、「さむっ」と呟きながら小走りで教室に戻った。
しばらくして、2人が息を切らしながら教室に戻ってきた。
鼻が赤く、体の周りにはまだ寒い空気が残っている。
「何描いてたの?」
2人はきらきらした子供みたいな笑顔で、
「見てみて外!」
と、窓の外を指差し、興奮気味に言う。
わたしは期待を胸に、廊下に出た。
なんだなんだ。
何ができたんだ。
そんな興奮気味に言うんだから、よほどいいものが描けたんだろう。
この2人が作り出すものは本当に魅力的なのだ。
美術の時間はつい作品を覗きに行ってしまう。
そんな2人。
わたしはワクワクしながら、2人に促されるまま窓の外を覗いた。
するとそこには、
大きい、
大きい大きい、
うんこが、
うんこが、
描かれていた。
…わたしは忘れていた。
2人が、くだらないことが大好きな人たちだということを。
そうだった、そういえば2人はおふざけさんだった。
忘れていた。
あぁ、そうか。
絵の上手いおふざけさんは、雪が大量に降った日、学校の中庭に、
巨大なうんこを、
描いちゃうんだ。
何がナスカの地上絵だ。
あんなに楽しそうに、子供みたいな笑顔で、あの2人、うんこ描いてたんだ。
The・うんこ
小学生がよく描くような、あの簡易的な、三段腹のうんこ。
わたしは爆笑した。
この2人だから、さぞみんなが驚くようなクオリティの絵を描いてしまうんだろうなと思った。
アニメのイラストかな、素敵な花の絵かな、はたまた先生の似顔絵だったりして。
巨大なうんこだった。
綺麗な真っ白の、積もりたての雪の上には2人の足跡と、巨大なうんこだけがあった。
最高の友をもったと思った。
爆笑するわたしを見て、満足そうに2人は教室に戻っていった。
こういった友達は、何年経っても面白い。
ずっと変わらず面白い。
絵上手いのに雪の日にでっかいうんこ描いちゃう友達、
これからも大事にしようと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?