鈴木直文 Naofumi Suzuki

NPO法人ダイバーシティサッカー協会(https://diversity-soccer.org)代表理事、ラクロスコーチ、大学教授(スポーツ社会学)

鈴木直文 Naofumi Suzuki

NPO法人ダイバーシティサッカー協会(https://diversity-soccer.org)代表理事、ラクロスコーチ、大学教授(スポーツ社会学)

最近の記事

【修論ゼミ(2)】修論で「オリジナルな知識」を生み出せるのか?

さて、第2回です。 前回は、修士論文という成果物の中途半端な性格についてのお話でした。修士論文とは研究者の仲間入りをする意思表示であるから、オリジナルな知識を生み出す営みの一部であることを示せなければならない。そう仮置きしてみました。それはオリジナルな知識を生み出すことそのものでもいいのだが、2年間というスパンでそれをやることはなかなかに窮屈だ、ということも言いました。本当にオリジナルな知識を生み出すことが必須になるのは博士論文であるから、修士課程とは元来そのための準備であ

    • 【修論ゼミ(1)】修士論文とはどんな成果物なのか?

      2年前、「卒論ゼミ」という記事を書いていました。10年以上に渡って苦心してきた卒論指導の方法を、一度しっかり言語化してみようという試みでした。当時のゼミ生のみなさんとの対話形式で、9回に渡って書きました。とても体系的とは言い難いものでしたが、その翌年の卒論生のみなさんにも、密かに役に立っていたようでした。毎年同じようなことを繰り返し(相手は別のグループなのですが)伝えなければいけないもどかしさを解消したい、というのが一つのモチベーションでしたので、後続のみなさんの独学を促すこ

      • 【卒論ゼミ(9)】データとの対話とは

        今回も予告通り、データを早めに取り始めることのメリットについてお話ししたいと思います。 データと言っても、すごくちゃんとしたものを取り始めると思わなくてよいです。小手調べ的なもので、最初は十分。というよりも、後に方針の変更が必ず必要になるので、むしろスタートの段階でフレキシブルな部分を残しておくことが大事です。ここでの一番の目的は、自身が研究の対象にしようとしている現象についてよく知る、ということです。それには本で読んだり、論文で勉強したり、もいいのですが、なんと言っても「

        • 【卒論ゼミ(8)】先行研究から学ぼう

          さて今回は、予告通り「先行研究」について書いてみます。先行研究を精査することをLiterature Reviewという、という話は、第3回でも書きました。Literatureは不可算名詞で、無限に続く一塊のもので、そのどの辺に何をちょこんと乗せたかが、研究論文の貢献である、といいました。なんだか膨大な作業が必要になりそうに感じますね。 何を隠そう、私自身も、いつも先行研究のレビューをしようと思うだけで、胸が押し潰されるかのようなプレッシャーを感じてしまいます。博士論文を書く

          【卒論ゼミ(7)】アクションリサーチとアクションインクワイアリー

          第7回です。 前回は少し先走りが多くて、卒論が余計にややこしいものかのように思わせてしまったかもしれません。今回は、もう少しみなさんのプロポーザルの個別テーマに寄り添う形でやってみたいと思います。 前回の2つの報告は、ひとつがリーダーシップ論や組織論にかかわるもの、もうひとつがジェンダー論にかかわるものでした。リーダーシップ/組織論の方は、ご自身の部活動での経験を入り口に、よいリーダーシップとは、あるいは、強い組織とそうでない組織を分けるものは、という疑問に展開したもので

          【卒論ゼミ(7)】アクションリサーチとアクションインクワイアリー

          【卒論ゼミ(6)】 理論、仮説、概念、そして”グレー”な文献

          第6回です。 前回から、卒論の「プロポーザル」を作ってみよう、という課題に入っています。プロポーザルとは何か?というのを、それほどしっかり説明できていないかもしれません。研究者になると、自分のやりたい研究をなんでもできるわけではありません。研究をするには、お金がかかるからです。研究をするために使えるお金のことを、研究費といいます。研究テーマに関連した書籍や資料を購入したり、調査票を印刷して郵送したり(最近はオンラインで、ということも多いですが)、インタビューや実験に協力して

          【卒論ゼミ(6)】 理論、仮説、概念、そして”グレー”な文献

          【卒論ゼミ(5)】 「問い」と「方法」のマッチングとは

          第5回です。 前回は、卒論に相応しい問いをどのように「鍛えて」いくのか、というテーマでした。「鍛える」という言い方でイメージされる通り、最初の問いの形でそのままオーケーということにはほとんどならず、高温で熱しながらトンテンカンと叩いた鉄のように、徐々に、しかし大きく、形を変え、くっきりとした輪郭に整えられていく。それが、卒論を進める過程そのものだ、ということでした。 そこでまずは、最初の鉄塊に当たる、問いの候補を、いろいろ挙げてもらいました。最近ちょっと気になってること、

          【卒論ゼミ(5)】 「問い」と「方法」のマッチングとは

          【卒論ゼミ(4)】「問い」を「鍛える」プロセスとは?

          第4回です。 前回は、研究論文の特徴は「理論」があることだ、というお話でした。ゼミでの議論では、みなさんの「理論」についての理解が私の意図したことと結構違っている、ということが発見されました。「理論」とは何か、ということにも、いろんな答えがありうるのですが、私の使っていたのは、「具体的な現象に意味を与えてくれる抽象概念」というような意味かもしれません。普通、科学的な理論というのは、現象の法則性について説明してくれるものを指します。ただ社会科学になると、社会的な現象というのは

          【卒論ゼミ(4)】「問い」を「鍛える」プロセスとは?

          【卒論ゼミ(3)】研究論文には何が書いてあるのか

          さて、第3回です。 2回のゼミを通して、卒論がどんな内容によって構成されているのかについて、結構理解が深まったのではないかと思いますが、「なぜ卒論を書くのか」には、そこまで深く踏み込めませんでした。 前回のゼミ内の議論で面白かったことは、「概念」と「観察」の関係についてでした。「遊び」と「けん玉」の関係とか、「学習」と「段位」の関係とか、そういうことでしたね。ある概念同士の関係を調べたい時に、実際には観察可能な事象同士の関係をみることになるのですが、概念と観察する事象の対

          【卒論ゼミ(3)】研究論文には何が書いてあるのか

          【卒論ゼミ(2)】なぜ卒論を書くのか

          さて、第2回です。今回は「なぜ卒論を書くのか?」というテーマでやってみましょう。 まずは、第1回のリフレクションです。先輩が書いた卒論のうち、優秀作品を3つ読んでもらい、ディスカッションをしましたね。すでにうろ覚え(すみません…だから、書き残すことが大事なのです…)なのですが、いくつもとても大事な気づきがあったようでした。思い出しながら、列挙してみます。 レポートと違うのは、卒論は自分で問いを立てなければならないこと(レポートは問いを与えてもらえることが多いし、問いがなく

          【卒論ゼミ(2)】なぜ卒論を書くのか

          【卒論ゼミ(1)】卒論には何が書いてあるのか

          今日から何回かに分けて、卒業論文について考えていきたいと思います。まず第1回は、「卒論には何が書いてあるのか?」です。「なぜ卒論を書くのか?」とか、「何をどうしたら卒論が出来上がるのか?」とか、「どうやって卒論を書くことに意義を見出すのか?」とか、「社会調査ってどうやってやるのか?」とか、「社会学とか社会科学ってそもそも何なのか?」とか、「理論/仮説/概念/枠組み/方法論/質的v量的調査…って何?」とか、「そんなにたくさん文字を書くって可能なの/意味あるの?」とか、テーマは際

          【卒論ゼミ(1)】卒論には何が書いてあるのか