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金属加工業の技術継承と知的財産蓄積の課題 取り組む中で湧き出るアイデア

▼東京都「DX人材リスキリング支援事業」※にて、経営戦略コースを受講されている佐藤電研株式会社の佐藤駿吉さんに現在の学習方法について取材しました。

佐藤駿吉さん(佐藤電研株式会社
昭和23年、バフ研磨専門の町工場として創業。ヘラ絞り・バフ研磨・サンドブラストを行い、特にテレビスタジオ照明や舞台照明等の反射鏡の加工を得意としている。佐藤さんは大学卒業後、製薬会社に営業として勤務。家業である佐藤電研株式会社に2023年1月に入社。


技術継承と知的財産の蓄積など属人化していることへの危機感

ーこのプログラムに参加したきっかけを教えてください。

現在、弊社は6名の社員と50・60代の職人に支えられています。
これまでは個々の力で会社を成り立たせてきましたが、技術継承や知的財産の蓄積といった重要な要素が属人化してしまっていることに気づきました。これらを失わないためには何とかしなければならないと感じています。
私は入社して10か月のため、どのような専門家に相談すれば良いのか分からずにいました。そんな時、このプログラムを知り、応募することにしました。

エクセルとクラウドでの管理で効率化と情報共有

ー今取り組まれていることを教えてください。

注文一覧表と在庫管理表をエクセルにて作成して、クラウドサーバーで管理するようにしました。これまで父が一人で管理をしていましたが、私への情報共有が必要になりました。口頭での共有を行ってきていましたが、より効率的な方法を求めて、サーバー管理をすることにしました。現在は、社外との情報共有にもこのクラウドサーバーを使用しています。

学習の中で刻まれた「技術を売り込む発想」

ーこれまでの学習で一番記憶に残っていることを教えてください。

買い手は一般の人ではないため、自分から売り込みに行くようなイメージは持っていませんでした。しかし、実践ゼミやUdemyBusinessの講座で、「技術を売り込む」という考え方を知り驚きました。金属加工業の技術は高い精度や品質、効率性などの特長を持っています。そういった発想から、ホームページなど改修したいなと考え始めました。

光を反射させる加工技術で差別化を図る

ー技術を売り込む発想は素晴らしいですね。
 佐藤電研様はどういった技術を売り込むとよいと考えられましたか?

ヘラ絞りを行う工場は数多く存在しますので、他社との差別化が重要ですが、入社10か月目で会社の強みを具体的に把握できていなかったため、技術の売り方を考えることに苦労しました。

色々調べた結果、私たちの強みは「光を反射させるための加工技術」であると感じました。テレビスタジオ照明や舞台照明の反射鏡を弊社は得意としています。金属加工において成形する作業は他社でも行われていますが、後工程のことまで考えて表面の粗さを抑えて成形する加工はあまりありません。この「光を反射させるための加工技術」を売り込むことで、弊社の差別化を図りたいと考えています。

学習から湧き出るアイデア

-それでは、今後の目標をお聞かせください。

このプログラムで学んだことにより、さまざまなアイデアが湧いてきました。
まず、技術継承の属人化を解消し、自動化する方法はないかと考えました。加工マシンの使用においても、最初の一手は職人の技術によるものです。しかし、センシング技術やAIを活用することで、これらの工程も自動化できるのではないかと考えました。光センサーメーカーやロボットアームの開発会社との連携ができれば実現できるかもしれません。興味をもっていただける企業の方、よろしくお願いします!(笑)

また、金属加工業の企業がBtoCのアウトドア商品を販売して成功した事例もあります。このような分野にも興味を持ちました。

上記のようにアイディアは沸いてきていますが、一番大切なことは反射鏡の技術継承です。
テレビスタジオ照明や舞台照明以外でも、灯台や漁船照明の反射鏡などをこれまでフルオーダーで受けてきました。こういった製品は、10年後に同じ製品の発注があることも少なくありません。その時のために技術継承と知的財産蓄積の課題に取り組み、企業として存続し続けることが重要だと考えています


※東京都では、2023年度現在、都内中小企業を対象にしたDX人材を育成するための学習プログラム、「DX人材リスキリング支援事業」を実施しています。(事業概要はこちら
※本記事は、株式会社ベネッセコーポレーションが東京都の許諾の下取材を実施しています。