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地域への愛情が原動力!組織のDX推進を加速する「周囲を巻き込むリーダーシップ」とは?|岐阜県高山市のUdemy活用事例【前編】

岐阜県高山市では「人にやさしいデジタル化による“便利”かつ“快適”で“活気”ある 未来創造都市 飛騨高山」を掲げ、「高山市DX推進計画」を進めています。
その一環としてUdemy Business(以下、Udemy)による「高山市DX推進リーダー育成研修」を行っています。

この研修に参加し、DX推進リーダーとして学びを実践に結び付けている、高山市商工労働部 商工振興課の葛井さんにDX推進をするうえで大切にしていることを伺いました。

市内企業のデジタル化やコロナ禍からの回復策など、高山市独自の支援策を展開

―葛井さんの普段の業務について教えてください。
高山市は人口約8万4千人で、観光関連産業や木工業が盛んな地域です。
私の所属する商工振興課 商工振興係では、近年のコロナ禍で大きな打撃を受けた市内企業に向けた様々な支援を実施しています。
多くの自治体が取り組んでいるプレミアム付き商品券などの消費活性化策、中小企業の資金繰り支援、デジタル化に関する施策などが主な業務です。

企業によってコロナ禍の影響も様々なので、それぞれの状況を踏まえた施策、そして国や県の補助制度等の隙間を埋める支援活動に市独自で取り組んできました。
そういった守りの施策に加え、中小企業の労働生産性向上をめざし、商工会議所や商工会などの団体と連携して企業の伴走支援事業を実施しています。

他にも市内に8つある道の駅の所管、その他物産展関係など、少ない人員ながらも幅広く市内の商工振興という視点で業務に取り組んでいます。

高山市の企業が抱えるDXの課題とは

―地元企業が抱えるDXの悩みには、どのようなものがありますか。

高山市内の企業のDXに関する課題は、「DXと言われても具体的に何をやればいいのかわからない」という部分に集約していると考えます。
DXを導入することでどんな効果があるか具体的に想像できず、やろうという流れにならないのが理由の一つです。

さらに中小企業の経営者からよく聞かれる声として、「業務効率化のために新しいシステムを入れようとしても、従来から勤めている社員が抵抗感を示す」というものがあります。
これもDX化を妨げる要因として挙げられると思います。

DX化においては、ただシステムを導入するだけでなく、自分たちの業務も一緒に見直す必要があります。
しかし、既存業務の見直しは非常にストレスがかかる部分が多いため、うまく進んでいない現状があるようです。

DXに踏み出すきっかけづくりとなる「デジタル技術活用促進支援事業」

―地元企業のリアルな課題を解決するために、高山市ではどんなことに取り組んでいますか。

市内企業の「DXの何から手を付けたらいいのかわからない」という声に応えるため、高山市では次年度に「デジタル技術活用促進支援事業」を開始します。

すでに国や県も中小企業向けのデジタル化支援に向けて動いていますが、これらの施策では事前に重厚長大な計画書を作って採択期限までに申請し、その申請が通ってようやく補助が出るという仕組みがほとんどです。
普段から市内の中小企業の声を聞いていると、そもそも計画書を作るノウハウがないために国や県の施策を利用できない会社が非常に多いです。

高山市の「デジタル技術活用促進支援事業」ではこの課題を解決すべく、国や県の施策はハードルが高いと感じる企業に向けて、中小企業がDX化に向けて一歩を踏み出せるきっかけづくりをします。
DX関連機器の導入はもちろん、業務の見直しにかかる費用、専門家の派遣費用まで補助の対象とし、トータルで市内企業のDX化を支援します。

そもそも自分たちの課題が何なのかを把握できていない企業に対しては、「何が課題で、解決のためにどんな業務改善やシステム導入が必要か、そしてDX導入でどれくらい労働生産性が向上するのか」を明らかにすることから始め、地元の中小企業にとって近い存在である商工会議所や商工会などの力を借りながら、伴走型の支援をめざします。

職場内の業務改善をめざしDX推進リーダー研修を受講

―今回、Udemyを活用した「DX推進リーダー研修」に参加された経緯について教えてください。

私自身がリーダーとしてDXに関する知見を深めたいと考え、参加を決めました。
もともと興味のある分野だったことに加え、職場内の業務改善として、単純な事務仕事だけでなく補助金の仕組みなども含めた改善を促したいと思っていました。

どうすれば業務の品質が上がるのか、業務プロセスのどの部分の改善が必要なのか、そしてプロセス改善に伴う職員の意識改革にどう取り組むべきかという点について、DXの切り口で何か学べればいいなという期待がありました。

市役所内の業務においても、DX推進によって業務がよりうまくいく可能性が高いものはまだまだたくさんあります。
令和3年度に市で実施した中小企業への給付金事業では、コロナ禍の真っただ中ということもあり、初めてオンライン申請の導入に挑戦しました。
当時は電子化への意識が全く無かったため果たしてできるのかと最初は不安でしたが、他の課の職員とも協力しながら進め、無事にLoGoフォームを活用したオンライン申請が実現しました。

この成功体験をきっかけに、様々な業務で「こういうやり方をしたらもっと効率化できるのでは」といった話が職場内で自然と出るようになったと思います。
DX化への意識が職員間で少しずつ芽生えてきた感覚があるので、その機運をさらに高めるという意味でも「DX推進リーダー研修」は役立つと考えました。

UXデザインを学んだことが、行政サービスの提供から活用までの流れを見直すきっかけに

―DX推進においてUdemyの学びが役立ったエピソードがあれば教えてください。

数多く学んだ中でも、UXデザインの講座が一番印象に残っています。
私たちの仕事では補助制度を作ったら「どうぞ使ってください」とお知らせするだけになってしまいがちなのですが、UXデザインについて学ぶことで「それを使うユーザーがどう感じるだろう」と自然に考えられるようになったと感じます。

例えば、対象となる中小企業がどういうタッチポイントで支援制度のことを知るのかという視点や、制度を知った後に行動を起こすまでのハードルについて考えるようになりました。

そういった「市民の皆さんが行政サービスに出会ってから使い終えるまで」の一連の想定をしっかり立てる必要があることに改めて気づけたのは、大きな収穫です。
UXデザインを踏まえた制度設計について部署内で共有する場面も最近増えつつあるので、UXデザインを学んで良かったと思っています。

職員や関係機関を巻き込み共創するリーダーシップのポイント

―葛井さんが数多くのDX推進プロジェクトを牽引される際に気をつけているポイントがあればお聞かせください。

市内企業へのDX推進はもちろん、部署内でのDXの浸透においても、多くの協力者を巻き込むことは不可欠です。
そのため、普段から円滑なコミュニケーションを心がけています。

商工会議所や商工会などの団体とは、腹を割って話せる関係性を作るのが大事です。そうするといざという時にアドバイスをくれたり、力を貸してくれたりします。

また部署内では、部下の職員も企画段階から参加してもらい、トップダウンにならないようにしています
しっかりと対話しながら進めることで、職員に納得感が生まれて力を発揮しやすくなります。

中にはRPAなどを使って自主的に業務効率化を進めている職員もいますので、そういうモチベーションの高い職員の存在をしっかり把握し、巻き込み、活動を周囲に広める支援をしていくのがリーダーの役目だと思います。

組織のDX化は特にデジタルへの理解度が高い若手職員を巻き込むことがポイントになると考えていて、若手が小さな成功体験を積み重ね、徐々にDX推進への取り組みの幅を広げられる組織風土を作っていきたいと考えています。
また、自分の部署だけに限定せず、他部署とも垣根を越えて話せる雰囲気づくりも大切にしていきたいです。

地域への愛情がモチベーション 他自治体と連携してDX推進を成功に導きたい

―パワフルにお仕事をする葛井さんのエネルギーはどこからきているのですか。

これを言うのは少し恥ずかしいのですが(笑)、私は自分が生まれ育った飛騨地域全体がとても好きです。
そこに少しでも貢献したいという想いはやはり大きいですね。

入庁時は今ほど強い気持ちはありませんでしたが、働くうちに「地域のためになっている」という実感が得られ、モチベーションが上がっていきました。
自治体に勤める方は私と同様に、少なからず地域への愛情を持ってこの仕事に就き、業務に携わる中で「地域のために」という気持ちを育ててきた方が多いのではないでしょうか。

―最後に、全国の自治体のDX推進者の皆さんにメッセージをお願いします。

自治体のDX推進は様々な地域で進む一方で、まだ誰もはっきりとした成功を見ていない領域でもあると感じます。
現状はみんながそれぞれの場所でそれぞれの努力をしている状態だと思いますので、複数の自治体で連携して、良い取り組みや結果につながったノウハウを共有できる関係性が作れたらいいですね。
暗中模索なDX推進の中でも「地域を良くしたい」という想いは同じだと思いますから、ぜひ一緒に頑張っていきましょう。


素敵なメッセージをありがとうございました。わたしたち行政DX通信も引き続き様々なDX推進事例・ノウハウを発信していくことで、全国のDX推進に励む自治体を応援していきたいと思います。

次回は引き続き葛井さんから、学習との向き合い方やUdemy活用方法などについてお話を伺っていきます。