Book Guide 2 ── 「まち」は、オルタナティブを求めている
『第三次産業革命: 原発後の次代へ、経済・政治・教育をどう変えていくか』 ジェレミー・リフキン 著 / 田沢恭子 訳〈インターシフト〉
著者であるジェレミー・リフキンは経済学者として世界的に高い評価を受けています。副題のとおり、経済・政治・教育を変えていくためのヒントになる、興味深い本です。リフキンは特にこの数年、経済学の世界で最もインスピレーションを与えてくれる学者の一人で、中国やドイツ、EUのグリーンエコノミーとポリシーの中心的なアドバイザーを務めています。この本は、今後の資本主義の傾向とそれを変えていけるポテンシャルを明確に説明していて、僕にとって重要な本です。【ビジネス】(選 / 井上 聡さん)
『都市で進化する生物たち “ダーウィン” が街にやってくる』 メノ・スヒストハウゼン 著 / 岸 由二 、小宮 繁 訳〈草思社〉
都市はいろいろなものが「みえがくれ」する。わたしが大好きなこの概念を教えてくれたのは、進化生物学者の手になる本書ではなく、建築家・槇牧文彦氏の著作だが、本書は、都市が内包する「みえがくれ」とそれを生み出す構造物の群れ、そして人々の群像劇が、いかにして都市を “生物進化の最前線” たらしめているかを語っていて、鳥肌が立つような読書体験をもたらしてくれた。雑然としたまちなみも複雑で立体的な「みえがくれ」をもたらす。例えば自転車置き場がもたらすみえがくれと自転車群は、スズメのような低木の枝葉で生活する小鳥にとって棲みやすい。それぞれの種に特有の空間解釈と利用形態は「前適応」によっていて、生物が都市を新たな棲み処として再定義するきっかけとなる。しかしそれで終わらない。都市を再定義した生き物たちは、今度は都市に再定義されてゆく(進化してゆく)。万年単位の生物史では一瞬の「進化」は、都会に住むあなたの目の前ではリアルタイムの現実で、あなたもどうしようもなく、それを助けている。【評論】(選 / 竹村泰紀さん)
『スペクタクルの社会』 ギー・ドゥボール 著 / 木下 誠 訳〈筑摩書房〉
フランスの著述家で映画作家の著者ギー・ドゥボールは、「生と都市の解放」「資本化された合理主義社会の改革」を掲げます。そこには都市という人の環境を、効率や経済活動といった資本の要請のみで考察することへの批判が込められており、メディアによる扇動的な〈大量消費〉を「スペクタクル」とみなし、その対極に〈状況〉を構築することを「シチュアシオニスム(状況主義)」と定めます。そして転用や漂流といった概念により、能動的に日常秩序から逸れて街の状況を変えることを提唱します。
売り上げや利益といった資本主義的な評価基準から離れた価値や、個人それぞれの人生の中で自由になれる空間を選択できる可能性など、さまざまな意味を考えさせられます。ファッションデザイナーのマルコム・マクラーレンが、この本に影響を受けてパンクカルチャーをつくったように、さまざまな読み解き方や表現の理論的支柱となりうる本です。【評論】(選 / 井上 学@NTT都市開発 デザイン戦略室)
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『神々のたそがれ』 監督: アレクセイ・ゲルマン / 2013年 / ロシア
映画という物理的な媒体を通して観客の身体感覚を揺さぶる ── 巨匠アレクセイ・ゲルマンによる、人間が神になる惑星を舞台にしたロシアのSF寓話。【映画】(選 / 和田夏実さん、牧原依里さん、西脇将伍さん)