年代層別選挙区分法を考えてみる
問題点:少子高齢化社会では、子育て世代の政治への影響力が少ない
現在の人口を比較すると、有権者のうち18~30代の子育て世代の総数(約2886万人)に対して、子育てを終えた世代の多い40代以降(8310万人)の総数が圧倒的に多くなっています。(およそ2.88倍)
このような状況下では、極論を言ってしまうと、もし高齢者よりも子育て世代を優遇する政策を取った場合、その政治家は子育て世代の1票を獲得するために高齢者の2.88票を失うことになります。
つまり多数決の原理によって、少数派である子育て世代を優遇する政策が取りづらくなっている、取ったとしても票が失われて以降の政策を提案する機会を失ってしまう、という状況なのです。
そして子育て世代が苦しくなると子供が生まれなくなり、少子高齢化がさらに加速するという悪循環になっています。
そこでまずは、政治的な影響力の少ない若年層の1票の価値を大きくする方法を考えてみることにしました。
考え方:1票の格差を利用できないか
州ごとに選挙区を持つアメリカでは1票の格差の問題が昔からあって、「人数の少ない州で勝つ」ことで票を稼ぐ政治家がいたりします。
具体的にどういう事かと言うと、人数の少ない州、たとえば30人しか住民のいない州で演説を行った場合、たった20人と仲良くなって票を入れてくれるようお願いすれば、過半数の票を得てその州では当選します。
これが、人数の多い州、たとえば30万人も住民のいる州だったら、全員と話をするだけで何年もかかります。何回も何回も演説を行わなければ過半数の票は得られません。そこまで苦労をしても演説を聞いた人が票を入れてくれるとは限らない。
それで、可能な限り多くの州で勝利を収めるために、人数の少ない州ばかりをあえて選んで演説を行う、という戦法が成立するのです。大統領の立候補者が票を獲得した州を見ると、人口の多い大都市を避けてうねうねうねって見えて、これをサラマンダーと呼んだりするとかしないとか。
ここで日本の問題に戻ってみましょう。
子育て世代の人数が少ないことが問題ならば、それを逆手にとって、人数の少ない選挙区で1票の価値が高くなる現象を利用できないか。
国民の年代別に選挙区分を設ければ、政治家は少数派の年代のために政治を行うのではないか、という考え方です。
年代層別選挙区分法
現在、試験的に考えているのが
若年層 10代~30代・・・約2886.1万人(18歳以上の有権者のみ)
中年層 40代~50代・・・約3498.0万人
高年層 60代~ ・・・約4360.4万人
という3つの選挙区分に分ける方法です。
これを今の社会で適応させると、中年層は若年層の1.2倍、高年層は若年層の1.5倍という格差があります。
さらに、票の数え方にも工夫を設けます。
それぞれの層の有効票を調べて、たとえばA立候補者が若年層で50%の支持率、中年層で30%、高年層で20%だった場合、50+30+20で100/300票がA立候補者の獲得票、という具合になります。
従来の選挙ならば、たとえ若年層で100%の支持率を得たとしても、有権者の全体の26.8%ぶんの影響力しかありませんでした。
対して、高年層で100%の支持率を得た場合は40.5%となります。
これでは他の層がいくら反対しても勝ち目がありません。
しかし、この選挙法ならば、いずれの世代も全体の1/3の影響力を得ることになり、全体に配慮した政策が期待できます。
格差は自動的に解消され、バランスを取る
ちなみに、現在のこの格差は少子化が解消されると自動的に解消されます。
若年層は18歳から39歳までの22世代、中年層は40歳から59歳までの20世代なので、2世代ぶんの開きがあります。
各世代が均等に10万人いたとすると、
若年層 220万人
中年層 200万人
となり、中年層が少数派になって、政策の中心に切り替わります。
また、高年層は60歳から100歳超まで40世代以上も複合されていますが、自然減少が若年層の何倍もあるため(厚生労働省令和3年簡易生命表にて確認)、急速な人口増加があれば少数派に転じます。
こちらは計算が難しいのですが、簡単に第二次ベビーブーム世代と同じ200万人が毎年生まれ続けると仮定すると、若年層は4400万人となり、現在の高年層の4360万人を上回ります。
高年層が少数派になるため、高年層重視の政策を推進しやすくなるという効果が見込まれます。
このように、票を受けやすい政策が自動的に切り替わることで、人口のバランスを取ることができるシステムです。
本来ならば、政策の中心は個々人が状況を見て決定しなければならないものです。
ですが、現実問題としてそれができていないという欠陥があるため、新たなシステムを取り入れる意義はあります。
実現のためにするべきことは?
実現は割と簡単で、すぐにでも実施可能です。
今も投票所では投票者の住所・氏名・生年月日と入場券を係員が確認して、投票用紙を手渡しています。
このとき生年月日に応じて「○○層」のような印が施された投票用紙を渡せば、あとは集計するときに分別するだけで完了です。
事務作業の間違い防止のために、入場券や帳簿に年代層の項目の追加、投票用紙の色分けなども必要かもしれませんが、大勢に影響が出るような間違いは、ほぼないと思われます。
あとは政策に取り入れるために様々な自治体で検討を重ねることとなります。
もう一度言いますが、政策で何を優先すべきかの判断は、本来ならば人間が自分で判断してやるべきことです。
得票を操作することで政策の中心を誘導するシステムを構築するということは、逆にこのシステムを改悪されれば(自分の支持者の多い年齢区分が常に有利になるように年齢区分を勝手に変えてしまうなど)政策が間違った方向に誘導される可能性もあります。
ですが、現実問題として少子化の問題が取り上げられて、なお解決されておらず、際限なく悪化しつづけているですから、現状の枠組みを変更する時代に来ているのではと浅慮しています。
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