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インド映画初心者が「RRR」3回観てきた感想

ちょっとずつ寒くなってきた今日この頃。みなさんいかがお過ごしですか?

最近の私は、来年発表する音源制作のためにライブ活動をセーブして、イメージのインプットとアウトプットを繰り返す日々を送っています。競技の本番に入る前の脳のストレッチのようなことをしてる。芸術の秋ですしね、落ち着いて世の中を見渡すのにちょうどいい季節ってことなんでしょうかね。何か面白いものに出会えていますか?

私はこの秋、2022年ぶっちぎり1位のエンタメに出会ってしまいました。どうせあの話をするだろう?と思っているファンの方、その通りです。話題沸騰のインド映画「RRR」の話を今日もします。

「RRR」推しポイント

この映画との出会いの経緯や、2回鑑賞した時点での感想は、見田村千晴さんと制作してるポッドキャスト番組「女ふたり、映画のばなし」の第126回で勢いのまま語っていますので、まずそちらを聴いていただきたいです。

ポッドキャストとYoutubeで聴けます

この配信のあと、3回目を観てきました。
同じ映画のために3回劇場に足を運んだのは今回が始めてですね…中学生の頃ハリーポッターやスターウォーズにはまっていたときでも2回までだったな…。
今回びっくりしたんだけど、なんと3回目が一番面白かったんですね〜〜〜!さすがに飽きてるだろうと思ったんだけど全っ然そんなことなかったです!!!

3回目の鑑賞中、Fireな興奮を味わいながらも頭の中の冷静なWaterな私は、配信のおしゃべりでIQ3くらいの言語化しかできなかったことを非常に悔いていました。ですのでこの場で改めて、感想の補足をぐだぐだとやらせてもらえればと思い筆をとった次第です。

まず前提として、私はインド映画初心者ですので、何かの解説ができるわけでも読者のあなたの利益になるようなことが書けるわけでもないので、IQ3が5〜7くらいになれればな〜〜という自己満での文章ということをおゆるしください。

①アクションにも物語がある

配信のなかで私が挙げた推しポイントのまず1つ目は「ぶっ飛びすぎてるアクションのアイデアとクオリティ」でした。
RRRの熱波に頭やられてる世界線の私は、おしゃべりの中で「アクションやべえ」ということしか伝えられてないと思うのですが、ネタバレはしたくないので詳細を記すことは避けつつ、3回目を観ながら感じたことを書きますね。

物語のある創作物で、伏線をばらまいてそれを最後に回収させることって受け手の満足感を高めるために有効な手段だと思います。アクションの伏線に関しては、宇多丸さんのラジオでもどこかで触れられていた気がします。

派手にドンパチやる映画は大好きなのでよく観るのですが、これまで私が気づいてなかった視点で今回この映画で新鮮に感じた部分は、それぞれのキャラクターのバックボーンを反映した戦い方が観れたところです。

例えば主人公の一人であるラーマは、英国政府の警察官として任務に就くインテリジェンスな男。物語の後半に明かされますが、彼は壮絶な過去を乗り越え、ある強い信念を持って帝国軍の下についているキャラクターです。その過程で並々ならぬ努力をして様々な武術を身につけてきたことが、戦いのシーンで想像できるほど、複雑に計算されたアクションが披露されます。

そのラーマと運命的な熱い友情でつながるもう一人の主人公ビームは、田舎の森のなかで育ってきた天然の最強戦士。主人公二人がぶつかりあうシーンでは、技ではラーマに勝てず、受け身もうまく取ることができないので、殴られるときは殴られっぱなしになってしまう。ところがやり返すターンになったら、腕力や脚力が野生生物を上回るレベルのビームは、パンチ一発で相手を彼方にぶっ飛ばすことができます。

とにかく見せ場だらけ、見せ場しかないような映画なのですが、アクションシーンにもそれぞれ一つ一つ理由があってドラマがあって、それに呼応した戦い方を構成してるんだな〜というような見方にハマると、何回観てても飽きないんですよ…!「さすがラーマだな…」「ビームらしいな…」というお前誰…?な目線でニコニコしながら観てしまいます。

②「踊れる音楽」とは

インド映画といえば…歌って踊ってる。そんな物語ばかりのイメージがやはりありませんか?
私もちょっと前まではそうでした。ですが「女ふたり、映画のばなし」の課題作としてNetflix映画「ホワイト・タイガー」を観たときに、自分の無知と感覚の古さを知りました。当たり前だけど、きっと時代に合わせて多様な表現が生まれているんだろうと。インドの映画産業や社会構造に関して私は全く知識がありませんので、そのあたりの背景を勉強したらもっと面白いんだろうな…と感じている今日この頃です。

インド映画にとっての、インドの人にとっての音楽ってどんな存在なんだろう?ということが全然理解できていない状態でこの映画を楽しんでいる遠い国の日本人ですが、「RRR」が魅せてくれる、王道足り得る、歌と踊り演出には本当に圧倒されてしまいました。

この映画の宣伝でも一番目にすることが多いであろう「Naatu Naatu」という歌のダンスシーン。綺麗に着飾った上流階級の白人たちのダンスパーティーで、人種や肌の色をあげつらい侮辱してきた男を、インドのダンス「Naatu」で打ち負かすという超楽しい場面です。

音楽の始まりは、ドラムのビートから。ムカつく白人男がビームに足を引っ掛け、倒れこんだ先にいたインド人の使用人が持っていたシルバーのトレーが吹っ飛ばされ、それをラーマが足で拾い上げドラムセットの上で叩く!(よく覚えてるな私)
そのスティックの持ち主は、白人の楽隊のなかに一人浮かない顔で参加していた黒人のドラマー。Naatuダンスが始まった途端、彼は嬉々とした表情でビートを刻み始めます!

今私がいっしょくたに西洋由来のものだと思って享受しているカルチャーって、実は隠された歴史がたくさんあるんじゃないかというのは、ここ最近すごく感じていて、そのきっかけとかそこから繋がる考えについてはこのあとこの後書いていきますが、このシーンもその延長線上だなと思ったんです。

白人社会のなかで生まれた管弦楽を中心とした音楽に、アフリカ系の人々のビートが重なって、かつてのジャズが生まれたりブルースが生まれ、それがロックンロールとしてまた白人文化のものに変化していったり、クラブミュージックが生まれた社会的な背景もまた、人種が関わる社会構造が強く影響しているのではないかとか…。

今私が「踊れる音楽」として認識しているもののなかには、アフリカやアジアのビート感が根っこにはきっとあるんだよな、ということに気づいたんですよね。のばなしの配信のなかではそこまで言及しきれていなかったのですが。なんかその辺も、しっかり勉強したら面白そうだなという興味がぐつぐつ沸いてます。

Youtubeには踊ってみた動画がたくさん上がってて楽しい^^言うまでもなく私も部屋でひとり踊り狂ってます。


③180度反対側の視点を知る

最近ネットフリックスで「ダーマー」というドラマシリーズを観ました。アメリカに実在したシリアルキラーの話で、全10話に渡りじっくりと事件を追っている内容です。
この作品に関しては批判もあって、被害者遺族の許諾がないまま放送していることや、事件を再現している演出が人の死をエンタメとして消費している側面があると問題視されていたり、制作した側が果たさなければいけない責任というのも当然存在していると思っていますが、でも私が受け取ったメッセージはそれを乗り越えてでも必要なものなんじゃないかなーと思って観ていました。(この作品についてはまた違う記事で書きます…どんどん長くなる)

ダーマーのおぞましい凶行の被害にあったのは、ほとんどがアフリカ系やヒスパニック系の人々。このことが、差別を社会構造に組み込んでしまっているアメリカの闇を浮き上がらせています。これは他人事では全くなく、どのコミュニティでも、もちろん日本でも、同じ問題が存在していますよね。

ひとつの出来事を中心に、立つ場所を変えるだけで全く違う事実が見えてくるんだなあと、私が感じたきっかけは昨年に遡ります。

のばなしの配信でも取り上げてお話した映画「カナルタ 螺旋状の夢」。監督本人が、アマゾンのある部族とともに現地で一年を過ごすなかで撮影されたドキュメンタリーです。今年に入って、水戸での上映会の際の太田明海監督のトークライブに呼んでいただく機会もあって、この映画も劇場・配信含め3回以上は観ています。

文化人類学者としてヨーロッパで研究をされてきた監督のインタビューなどをネット記事で読んでいて、学問も西洋中心なところがあるということなのかなと読み取れるところがあって、それにハッとしたんですよね。この世界の説明そのものが、特定の属性の人たちの言葉なんじゃないかと。違う文化の違う言葉で語られる、常識とかルールとか価値観が、この世界には無数に存在しているんだと。(この映画についてもまた違う記事で改めて…)

これらの作品から受け取ったメッセージと同じ、世界の見方を180度変えることのスリリングさと未来への可能性というものを、「RRR」にも感じたんです。
ひとつの歴史的事実に対して、奪う側・支配側ではない、搾取された側・被支配側から描くとどんな表現になるのか。それは、どんな人にとってもブーメランのように自分の属性に向けられた刃にもなりうるし、そのことがまた、よりよい社会を作っていくための芸術のひとつの役割にもなる。

配信でも話しましたが、こういう歴史ものの映画を作って日本人が悪者として描かれる可能性も多いにあり得るけど、それを受け入れられる教養を私たちは持っているのかな…?というのは非常に不安だし無理だろうなと思うと悲しくなったりしました。これが自分たち、日本の話だったら?というのは「スペンサー ダイアナの決意」を観たときもいろいろと考えてしまいました。

世界の勢力図(国家単位でも小さなコミュニティでも)がここ数年で大きく変わってきていることに、不安はありながらも、おおむね期待感を持って、他人事ではなく、自分が関わる世界のこととして感じる必要があるなと、ここ最近はとても強く感じます。わくわくする世の中がいいよね。

さいごに

長くなってしまいましたが…ここ最近自分が考えていたことと、「RRR」が見せてくれたものがリンクした部分をまとめて書いてみました。

「RRR」現在全国の劇場で上映中です。一部、IMAX上映も復活するみたいです。私は初回IMAX、あとの2回は普通の劇場だったのですが、断然IMAXをおすすめしたい。野生動物が一気に出てくる衝撃的なシーンがあるのですが、あそことかはデカいスクリーンのほうが絶対見応えあります。

新宿ピカデリーには出演者のサインが!!!!

観たらぜひ「女ふたり、映画のばなし」にメール送ってください。見田村さんはきっと「?」だろうけど私が喜びますのでぜひ感想教えてください。
futarinobanashi@gmail.com

IMAX上映、たぶん私行くので、どこかの映画館で私を見かけたら話しかけてね…
それでは〜


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