狩猟へ向けて

前回までの投稿で、移住するきっかけから実際に移住するまでの話が終わりましたので、暮らしの話をしていこうと思います。今回はせっかくなので時事ネタを。

自給自足のひとつ

自給自足を目指しているのに、田んぼも畑もやらず、何をしていたかと言うと、狩猟に意識と時間を費やしていました!育児が忙しい真っ只中なので、やりたいことが限られています。家のことを放ったらかして好きなことをすべてやる選択肢もありますが、そんなことをしたら家庭崩壊が待っているので、今は取捨選択して、無理をせずにやっていく方針でいます。移住のことがあったので、あとはせっかく取得した狩猟免許を無駄にしないために動いていました。

なぜ時事ネタかと言うと、北海道以外は11/15〜2/15が猟期でまさに今、猟期を終えたばかりなんです。

狩猟デビュー

2018年に東京で狩猟免許を取得したのですが、鹿や猪の解体ワークショップには参加していたものの、猟に一度も行かず猟期が終わりました。でも限られた時間のなかでは、それで計画通り。2019年のはじめ頃から猟銃の所持許可申請を始め、間に移住を挟み、普通より少し煩雑なやり取りを経て、同年10月頃に念願の許可が下り、何とか今シーズンの猟期に間に合わせることができました。

早く狩猟の話をしたいところですが、ここはやはりきっかけを話さなければいけません。

スーパーに毎日並ぶ食肉…

スーパーに行けば野菜やお肉が並び、お金を払えば手に入れることができます。毎日補充され、商品がなくなることがありません。あるのがあたり前です。お肉が絶えず商品棚に並ぶということは、どこかで毎日牛や豚、鶏が誰かの手で殺されているということです。東京にいる時は1つの駅にいくつかスーパーがあり、1つの店舗でもなかなかの食肉を扱っているのに、それがお店の数だけ掛け算で増えると考えると凄い量になります。範囲を1つの区や市に広げて考えると途方もない数で、東京全体と考えるともう想像もできない数でした。

遠くなった いのちのありがたみ

昔はみんな家畜を飼っていて、それぞれが“いのちをいただく”作業をやっていました。今は分業化が進んだので、畜産農家や食肉加工業者の方がやってくれています。対価を払うのだから、それはそれで良いのかもしれません。ですが、スーパーにあまりにもあたり前に並ぶので、いのちの重さを感じにくくなったようにも思います。もちろん、食肉になるまでの行程を想像すれば感謝の気持ちを持つことはできます。でも、「この手でやらなければ本当の重さはわからない」そんな思いがあったんです。

「ある精肉店のはなし」というドキュメンタリー映画に出会う

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ひと昔前は屠殺が汚らわしい仕事として、軽蔑されていたという話を聞いてショックを受けました。お肉を食べるのに、食肉になるまでの仕事をやってくれている人に対して差別的な言動をとるのは信じられなかったからです。

家畜の生育環境と安全性

いろいろと調べるうちに現代の大量生産のための畜産業は、身動きのとれない狭い檻のなかで育てられたり昼夜問わず光を浴びさせられて、工場製品のような扱いを受けていることを知りました。「どうせ食肉になるために殺されるんだからいいだろう」とは僕はとてもじゃないけど思えなかった。

抗生物質で薬漬けであったり、ほとんどが遺伝子組み換え飼料を与えられていたりで、安全性にも疑問を持ちました。一時期いろんなスーパーの食肉コーナーの担当者に聞いてまわった印象では、こだわりがない普通のスーパーでは90〜100%のお肉がそんな感じでした。遺伝子組み換え作物を選ぶということは、回り回って日本の農家を苦しめることになり、環境汚染にも加担するということです。買いものは投票ですから、僕はそんな将来性のない選択はしたくありませんでした。

獣害問題を知る

増えすぎた猪や鹿が畑を荒らし、被害にあった農家は多大な損害を受けます。そこで数を減らそうと、猪や鹿が有害駆除の対象になるのですが、その内、年間数十万頭が産業廃棄物として焼却処理されたり、山に埋められています。

一方では増えすぎて棄てているのに、一方ではそんなこと関係なく大量生産している…

いろんなことが繋がり、僕のなかでおのずと答えが出ました。

「自ら獲り、自ら捌こう」

狩猟をはじめる前に解体ワークショップに参加しましたが、1頭解体するのに5,6人がかりでも数時間かかり、相当な労力がいりました。素人で不慣れな作業ということもあり、へとへとになったのを覚えています。お肉を食べるということはこんなに大変なことだったんだ、と痛感しました。それでもやめる気はありませんでした。

狩猟免許をとる

狩猟免許試験は毎年夏頃に開催され、東京だと3回あります。狩猟に興味がある人が増え、僕は申込み初日に都庁の環境局を訪れて申込みましたが、初日で定員になって締め切ったと後から聞きました。

必要書類として、医者から精神疾患や覚醒剤などの使用がないことを証明する診断書を書いてもらいに行きましたが、腕を見せたのと、1分ほどの簡単な問診だけで5000円とられて、「ぼったくりだー!」と叫びたくてしょうがありませんでした。

仕事が忙しがったのもあり、試験の2週間前から猛勉強を始めました。1週間前には猟友会の講習会に参加し、筆記試験の要点と模擬銃による実技講習を受け、残りの1週間は自宅にあった突っ張り棒を銃に見立てて、ひたすら銃の扱いの練習を繰り返しました。試験本番は講習会と復習の甲斐あって順調に進んでいきましたが、1つ大誤算だったのは狩猟していい動物や鳥を判別する“狩猟判別!”講習会では絵でわかりやすかったのに試験では写真で出題され、しかも夜行性の動物は夜の写真でわかりづらい…。全然手応えがありませんでした。

試験結果が出るまでの数日間は狩猟判別が頭から離れないくらい後悔のような不安な日々でしたが、無事に第一種銃猟狩猟免許(空気銃じゃなく、火薬の銃)と、わな猟狩猟免許を取得しました。

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狩猟免許の合格率は8、9割ほど。狩猟免許をとったからと言って、実際に獲物をとれる技術があるかはまったく別の話です。「獲ってもいい」という資格があるだけで、経験を積んで技術を磨いていかなければ獲物はとれません。ですが、狩猟免許は勉強すればそこまでハードルが高いものではないので、狩猟に興味がある人は気負わずチャレンジしてみてください。

すいません。やっぱり話が長くなってしまいました。また次回に続きます。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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