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うちみずのおと -Uchimizu note- 第1回 打ち水の「水」大調査!

「うちみずのおと -Uchimizu note-」は、これまで日本各地で行われてきた打ち水を調査しながら、さまざまな打ち水の風景・事例をご紹介する連載企画です。

水道水は使わず、二次利用水を使うのが打ち水大作戦の基本ルールですが、全国の現場では一体どんな水を使っているのでしょうか?
第1回となる今日は、『打ち水の「水」大調査!』と題し、打ち水に使われているさまざまな種類の水をご紹介します!

①スケートリンクの氷を溶かして打ち水!

写真提供:みなとアクルスまちづくり推進協議会

愛知県名古屋市港区にある「みなとアクルス」は、「人と環境と地域のつながりを育むまち」をコンセプトとしたスマートタウン。2022年には環境省の「脱炭素先行地域」に名古屋市と共同で選定され、今後ますます「環境と省エネの取り組みによる先進的なまちづくり」が進んでいきます。

そんな「みなとアクルス」で開催されている「打ち水プロジェクト inみなとアクルス」では、まちにあるスケートリンク(邦和みなと スポーツ&カルチャー)の整氷でできるシャーベット状の氷を溶かした水で、打ち水を行っています。

スケート靴の刃で削られ、すぐにデコボコになってしまうスケートリンクの氷。スムーズに滑るためには定期的な整氷が必要ですが、作業の過程で生じた氷は捨てられてしまいます。2020年から実施されているまちの打ち水は、環境にやさしい取り組みとして毎年この氷を再利用しているそうです。氷を使った打ち水は、見た目にも涼やかですね!

②地域の雨水利用システムを使って打ち水!

写真提供:すみだノート

昭和初期の雰囲気を今に残す、東京都墨田区・鳩の街通り商店街で見つけたのは、地域の雨水利用システムを使った打ち水。墨田区の一部地域には「路地尊(ろじそん)」と呼ばれる、雨水を地下のタンクに溜め、手押しポンプで汲み上げて草花への水やりや子どもの水遊びに、また災害時の水源として利用する施設があります。

地元の子どもたちが中心となって実施された「向島・鳩の町通り商店街打ち水」では、この路地尊や、雨水の活用に向けてさまざまな活動を行うNPO、雨水市民の会が設置している雨水タンク「天水尊(てんすいそん)」の水を使って打ち水を行いました。

また、同商店街の名物である自転車タクシー「輪ぽっぽ」に乗って水を運んだり、水をかけると撥水塗料で描かれた絵が浮かび上がる「撥水アート」が行われたりと、打ち水をより楽しむための仕掛けも盛りだくさん。打ち水の楽しさや効果を感じるとともに、雨水の有効利用について考える良いきっかけになりそうです。

③雪を溶かすための水を使って打ち水!

ものづくりの街として知られる新潟県三条市で見つけたのは、地面から吹き出た水が道路を冷やす様子。すごい…!新潟では自動打ち水システムが発明されていた…?

実はこれは「消雪パイプ」を利用した打ち水。消雪パイプとは、地下水をポンプで汲み上げ、道路に埋め込んだパイプを通して散水し、雪を溶かすためのしくみです。発祥の地である新潟県を中心に、北陸や東北の雪が多い地域で導入されています。

三条市では、2018年から熱中症予防の指標「暑さ指数」が31を超える日に、こうして30分ほど消雪パイプを使った打ち水を実施しているそう。雪国ならではのしくみが、暑い夏の日にも役立っているというわけですね。「消雪」ということばの響きも相まって、なんだか打ち水もより涼しげに感じられます。

※注:三条市での消雪パイプによる打ち水は、昨今の電力のひっ迫状況、及び電力料金の高騰などの理由から、現時点において2023年の実施は未定とのことです

④神社のご神水を使って打ち水!

さいたま市岩槻区にある久伊豆神社(ひさいずじんじゃ)と、岩槻人形博物館での打ち水に使われたのは同神社のご神水です。久伊豆神社は約1500年前に創建されたと言われる由緒正しきお社。その字面から「クイズ神社」とも呼ばれ、クイズ関係者のパワースポットとして知られています。

この打ち水は、神事などの際に黒い半纏を着て行列の先頭を練り歩く、「岩槻黒奴(くろやっこ)」の伝統を守る岩槻黒奴保存会が、「埼玉打ち水の環2020」の一環として企画実施したもの。コロナ終息を祈願するとともに、毎年黒奴の実施に協力している岩槻商業高校3年生の学生最後の活動の場として打ち水を行いました。

涼をとったり、土埃をおさえたりするといった実際的な役割に加え、「清め」の役割も持つ打ち水。コロナ禍ですべての行事が中止となってしまった高校生たちにとって、きっと大きな意味を持ったのではないでしょうか。


ということで、本日はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました。ご紹介した中で、みなさんが気になった「水」はどんな水でしたか?

ほかにも、「こんな水を使って打ち水をしている」という報告や、打ち水に利用できそうな水のアイデアがあれば、ぜひTwitterやInstagramなどのSNSでシェアしてみてくださいね。

次回は、子どもたちによる打ち水について調査した「子どもたちで打ち水!」をお届けします。お楽しみに!

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