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週末だけのスパイスカレー店、 1年が過ぎました

週末だけのスパイスカレー店として2020年8月1日にオープンしたウチマサラが1周年を迎えました。

1年だろうと10年だろうと、いずれもそれは日々の積み重ねでしかなく、1週間、1ヶ月、を繰り返せばいつかこの日は必ずやってくるもの。それは変わらない日々のうちのひとつだろうと思っていたのですが、経ってみればちょっと思っていたことと違うことが…起こるんですね。実際やってみて、どうだった?ってところと、主に驚きと喜びを伴う、ちょっとした、と言うには私の中では深く印象にのこったことなどをここに残しておきます。

井土ヶ谷下町というロケーションは、駅からもほどほどに遠く、人の流れは近隣にお住まいのみなさまが主なもので、企業があるわけでもなく、人が集まる場所もない。飲食店だけでここをやって行くのはなかなか大変だろう、というのが正直なところなのだけれど、そこは、ライフスタイル系自転車店シコーバイシクルサービスの中でやらせていただいていることで、自転車店のお客様が作業待ちついでにカレーを召し上がっていってくださるという理想的な関係を得ることがかなっています。お客様については後述しようかな。

店内は自転車屋さんの奥、広めのスペースに客席7席(二人がけテーブル×2、3人がけテーブル×1)という欲張らない配置。今となってはとってもコロナ禍向きだと胸を張って言えるものです。といえば聞こえがいいだろう、というあざとい発言をしつつ、実はこれが飲食業初心者がワンオペで回す上限、でもあります。良い意味で「身の丈」。

お皿の数は10枚。グラスは8個。スプーンは10本。7席だからこれで1巡できる、溜めずに洗えばちゃんと回る、という設定。収納もこれがギリギリ。ちなみに、1年で割れたグラスは2個、お皿は1枚。週末だけだから、こんなもんかな。その一方でカレーの仕込みの何から何までを全てまかなっている片手鍋は3個使い潰しました。そろそろプロ用のいいお鍋にした方がいいのか…と思わなくもないけど、焦げるリスクは取れない弱気。

営業は週末だけど、木曜日から始まるウチマサラ

月ー金の日中はフルタイムで働いているわたしのウチマサラ、仕込みのスケジュールは、木曜から始まります。

木曜日、スパイスやお米などの乾物、要は生鮮品以外の買い出し。お水やドリンク類なども木曜までに手配をつけておきます。

金曜日の勤務時間終了後、生鮮品買い出し。一晩寝かせた方が美味しくなるタイプのアチャールの仕込み、ビリヤニの肉のマリネ、フライドオニオン、カレーのベースづくり。冬は金曜日のうちにカレーを作ってしまってもすぐに冷めてくれるからよかったんだけど、夏は粗熱をとる時間が待てない。よってカレーを作るのは土曜の朝。炊飯のタイマーをセットしておきます。

夏の土曜日は慌ただしく。ベースは出来上がっているとは言え、肉を切り、スパイスを合わせるところからカレー、ビリヤニのグレイビー、カレーを彩る副菜を1〜2種類…となかなかやることが多いのだけれど、作業開始は7時半〜8時くらい。最近は10時のオープンに出せるのはカレーだけ、と割り切って、ビリヤニは炊き上がりをお昼前にずらすことで少しラクすることを覚えました。これも成長です。うんうん。ちなみに土曜朝のBGMはFM横浜。FutureScapeだけは毎週欠かさず聞いています。

で、本当の余談だけど、日曜の朝の仕込みはタイムフリーでFM横浜土曜23時〜放送の本牧RED HOT STREETをこれも毎週欠かさず。剣さんのCKB作品「以外の」選曲が幅広くてイカしてるのがとてもよい。またフライデーでJBメドレー聴きたいな。あ、剣さん、カレー食べに来てくれたりしないかな(笑)

昨年オープン当初、ご祝儀ムードのバタバタを終えて以降この一年は、COVID-19 による緊急事態宣言の乱れ打ちなんかもあって、最近では営業中でものんびり過ごす時間も多く、そんなときは玉ねぎの皮を剥いて、ベースの炒め玉ねぎを作る準備を進めたりもしますが、試しに営業中に欲張って炒めてみたものの、結局途中で接客するから火を止めることになって、今ひとつ作業に集中しない(できない)ので、客足が止まる14時すぎてから炒める方が良いという結論になっています。

コロナ禍、井土ヶ谷下町、でもうかりまっか?

ウチマサラをはじめて、ようやく本当の意味での「ぼちぼちでんなぁ」を自分の口が発した。だって、それ以外に言いようが、ない。調子が良いと言うほどでもないし、悪い、って言うほどでもない。たとえ悪くても悪いって言うともっと悪くなっちゃいそうだから言いたくない。そんな心理が「ぼちぼちでんなぁ」と言わせるんだな、ってことだ。今ならわかるよ。ぼちぼちでんなぁ、ほどその裏が深いことが。

収支はわずかにプラス、で上出来じゃないかな。原価計算なんてざっくりとしかしてないけど、近所のスーパーで買い物してるから原価を低く抑える努力はあまりしていないし、それは今の規模でやってもあんまり意味がなさそうだと判断しています。ちょっとの金額をケチるより近所で小回りがきく利便性。細かいことはさておいて、昼間の仕事でいただいているお給料からウチマサラでの活動へ財政出動はしていない。すなわち、ウチマサラで発生した利益で翌週もお店ができている、そんな循環で1年。何も余らないけど、ひとまずは回ってりゃ十分、ってことで。もちろん、「儲からない仕事はやっててつまんなくなるぞ」ってのは一つの真理だと思うし「回ってる」だけで満足していいはずないよねというあたりはこれから自問自答します。そりゃアナタ、何かを残せるくらい儲かったらもっと楽しいでしょうよ、とは思ってます。ので、みんなもっと食べにきてね!

お客さまとの距離感

そもそも飲食や接客業に向き合ってこなかったからこそ、もっとも気を使うところでもあるけれど、こんなに小さい週末だけのお店であまりかしこまった感じってのもしゃらくせぇ、と言う本音もあって、丁寧さには若干欠けるけれど、ちょっと親しみやすい感じでいいかなと。小売酒屋の女将であった実母の姿のかけらが私のウチマサラでの振る舞いの根っこにあるのかも。だいたい、一人でやってる(あ、シコーくんはいるけど)んだから、私の人格がそのままお店のキャラクターを決めても許されるんじゃないかな、なんて。あとは受け入れてくださる方が足を運んでくれるはず、と相手任せにしてしまっている。

「常連さんと呼んでもいいですか?」

私がこの1年、決して声に出さず心のなかで何度も呟いたこと。驚いたことに、毎週かならず、とまでは言わないけれど、今、結構な頻度で足を運んでくださる方々の顔が思い浮かびます。それも一人や二人でなく。つい先日も4連休に4日連続で営業したら、うち2回も来てくださった方が複数いらして…もう本当に(なんとお礼を申し上げればよいのやら…)飲食店なんてそれこそ星の数ほどあるなかで、選んでいただいているという事実にフォーカスすると、ずしっときますよね。あなたの健康の一部は私が支えています、なんてこっちから言っちゃうと重いかしらと思うけど、わたしが心の中でそっと呟く「常連さん」がこれからも増えてくださればいいなぁ。声に出すのは烏滸がましくて、これからもこの言葉を口にすることはないだろうけど。

単純なんだけど、ここは当初の予想より嬉しいところなんですよね。これまでの自分の人生になかった出会いや、関わりの新しい手段を得たというか。人との距離感や関わりの物理的な量が激減せざるを得ないCOVID-19時代に、それをウチマサラという手段を使って自分のやり方で抗い、強引に押し広げて前に進んでいる感じはとてもわたしらしいと感じる。コロナ禍の初期の一時期、外出の自粛をストイックに守っていた頃に発語の量が減って、思考と発話の瞬発力が落ちたな、と感じた危機感も、今は昔。これは本当にウチマサラをやっているおかげ。平日昼間の仕事も終日黙々と作業するタイプの職場だから、会社と家の往復だけだったら自分が自分でなくなってしまったかのようなジレンマを感じていたかもしれない。

1年を迎えた際、少なくないお客さまにお祝いをいただきました。ありがとうございます。これからも、ウチマサラは続いて行く限り、少しずつカレー作るのも上手になっていくと思います。ご期待ください。

シコーバイシクルサービスのシコーくん、例えばウチマサラが鳴かず飛ばずの日も「こんな日はゆっくりすればいいんだよ〜」と穏やかでいてくださるのが本当に安らぎます。ウチマサラが私らしくいられるのはシコーくんのおかげです。いつもありがとう。

CICADA UNITEDを始めとする自転車のつながりのみなさん。ライドがてらカレー食べに来てくれがてら、みんなの元気な顔が見られるのはウチマサラをやってる理由のひとつになっています。この1年、イベントも軒並み中止になっている最中、多くの仲間とウチマサラで会えていたの、とっても貴重だったな、と思い返しています。ありがとう。またいつでも遊びに来てください。井土ヶ谷で待っています。


1周年を祝って?…祝って(だよね?)、あさかさんがチャイを淹れに来てくれました。スケジュールはあらかじめ決めてあったものですが、結果、COVID−19の感染爆発?とも言える感染者の増大が発表された直後となっていまい、来客は少なめ。それでも久しぶりにあさかさんといろんなことを話せて、脳に刺激が入りました。インスピレーション!!ありがとう。これからもたまにはチャイ淹れに来てください。あ、この記事の冒頭の画像はその時のものです。(イベントはひっそりと行われ、すでに終了しています)

そんなこんなで一区切りとしましょう。このnote、もうちょっと更新頻度上げられるかと思ったけど、意外とカレー屋ってそんなに書けることなかった。また書きたくなったら書きます。

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