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OEM車をまとめてみた

OEMは「Original Equipment Manufacturer」の略です。

直訳で「元の機器生産者」という意味で、他社ブランドの製品を製造するメーカーを意味します。

外注で生産委託している製品全般が該当するので、対象は世の中に沢山あります。
スーパー・コンビニ等、販売店のプライベートブランドなどが顕著です。

自動車業界では主に自社ブランドでも販売し、他メーカーのブランドでも販売することが多いです。
(自社ブランドで販売しない場合もあります)

関連するメーカー間で行うことが多いですが、一見関係なさそうなメーカー間でも行われます。


【OEMのメリット/デメリット】

〈OEM車導入メーカーのメリット〉
・技術・ノウハウがないうちに市場に自社ブランドの車を投入できる。
(いずれオリジナルブランドで生産するという目論見を組める)
・ディーラーで囲い込みが出来る。
(お客が欲しい種類の車を提供できなければ客を逃してしまう)

〈OEM車導入メーカーのデメリット〉
・かつてオリジナルブランドで生産していた場合、市場にからの事実上の撤退を意味するので技術力が衰える(流出する)。
・失敗体験から市場への参入が及び腰になり、市場への復帰は難しくなる。
・自社の得意分野以外の車を取り扱うことで不得意な商売を行わざるを得なくなる。
・アフターケアが行き届かなくなったときに自社の信用を失う。


〈OEM生産メーカーのメリット〉
・生産数が多くなり、台あたりの開発コスト、購買コストが押さえられる。
・市場シェアの拡大が狙える。

〈OEM生産メーカーのデメリット〉
・自社のみでの生産調整が難しくなる。
・アフターケアが行き届きにくくなり、それが原因でユーザーの不利益が出た場合に信用を落とす。
・自社ブランドの競合を作ることになる。


〈ユーザーのメリット〉
・乗り換えや追加購入時にディーラーを変えずに済む。
・同じ車種で複数ディーラーを競合させ、より安く購入できる可能性がある。
・無名ブランドの中古車は不人気になるので、同じ車が格安で手に入る。
・大量生産のため安心感がある。

〈ユーザーのデメリット〉
・同じ車が他メーカー名で出ている。
・別メーカーの車と間違われる。
・車名を言っても「なにそれ?」と反応される。
・オリジナルのメーカーではないので、アフターケアに不安がある。


【バッジエンジニアリング】

OEM車はバッジエンジニアリングとも呼ばれます。

イギリス自動車業界の空洞化を招き、衰退させた要因となる業界風習でもあります。


以下、2017年4月の国産車まとめです。


【トヨタ⇄ダイハツ】

関連会社で開発・生産する車種を棲み分けているのでお互いに供給し合っています。

〈現行〉
トヨタ プリウスα→ダイハツ メビウス
トヨタ カムリ→ダイハツ アルティス
ダイハツ ブーン→トヨタ パッソ
ダイハツ トール→トヨタ タンク
ダイハツ トール→トヨタ ルーミー
ダイハツ ミライース→トヨタ ピクシス エポック
ダイハツ キャスト→トヨタ ピクシス ジョイ
ダイハツ ウェイク→トヨタ ピクシスメガ
ダイハツ ハイゼットトラック → トヨタ ピクシストラック
ダイハツ ハイゼットバン→トヨタ ピクシスバン

〈現行以外〉
ダイハツ ビーゴ→トヨタ ラッシュ
ダイハツ ストーリア→トヨタ デュエット
ダイハツ クー→トヨタbB
トヨタ パブリカ→ダイハツ コンソルテ
トヨタ ヤリス→ダイハツ シャレード
ダイハツ テリオス→トヨタ キャミ
ダイハツ ムーヴコンテ→トヨタ ピクシススペース
ダイハツ ブーンルミナス→トヨタ パッソセッテ
トヨタ ノア→ダイハツ デルタワゴン
ダイハツ アトレー7→トヨタ スパーキー


【スバル⇄トヨタ】

GMの経営不振から押し付けられたスバルの再建を任されたトヨタは共同開発車という分かりやすい形で世間にアピールすることになりました。
スバルの工場で生産しています。

他、スバルには無い小型車の提供も行い、ラインナップの拡充を図っています。
現在はダイハツからの供給になっています。

〈現行〉
スバル BRZ→トヨタ 86

〈現行以外〉
トヨタ ラクティス→スバル トレジア


【ダイハツ→スバル】

ダイハツは関連会社でスバルは自社製のプラットフォームが1つしか無いのでラインナップを拡充するために行っています。

スバルはかつて自社製の軽自動車を販売していました。
ダイハツからのOEM供給を受けている車種にもかつて製造・販売していた車種名を付けて販売しています。

〈現行〉
ダイハツ トール→スバル ジャスティ
ダイハツ タント→スバル シフォン
ダイハツ ムーヴ→スバル ステラ
ダイハツ ミラ→スバル プレオ
ダイハツ ミライース→スバル プレオプラス
ダイハツ ハイゼットトラック→スバル サンバートラック
ダイハツ ハイゼットバン→スバル サンバーバン

〈現行以外〉
ダイハツ クー→スバル デックス
ダイハツ アトレーワゴン→スバル ディアスワゴン
ダイハツ タントエグゼ→スバル ルクラ


【スズキ→三菱】

資本関係はありませんが、スズキの車種を供給することでラインナップの拡充をしています。
デリカD:2は自社生産の普通車デリカD:5の弟分扱いです。

〈現行〉
スズキ ソリオ→三菱 デリカD:2
スズキ エブリイワゴン→三菱 タウンボックス

〈現行以外〉
なし


【三菱⇄日産】

日産は軽自動車を持っていませんでしたが、三菱と日産は共同開発をして生産を三菱が行うことになりました。
三菱は燃費偽装問題をきっかけに日産の傘下に入っています。
現行にはありませんが、高級車のOEMを日産から受けていました。
かつては自社生産の高級車を持っていましたが、選択と集中の結果無くしました。
ほとんど三菱関連のの重役専用車としてしか機能してなかったのではないかと思います。

〈現行〉
三菱 ekワゴン→日産 デイズ
三菱 ekスペース→日産 デイズルークス
日産 AD→三菱 ランサーカーゴ
日産 NV200バネット→三菱 デリカD:3

〈現行以外〉
日産 フーガ→三菱 プラウディア
日産 シーマ→三菱 ディグニティ
三菱 ミニキャブトラック→日産 NT100クリッパー
三菱 ミニキャブバン→日産 NT100クリッパー
三菱 ekワゴン→日産オッティ
三菱 パジェロミニ→日産 キックス


【スズキ⇄日産】

今は三菱は日産との関係が深いですが、かつては多くの軽自動車をスズキから供給していました。
ラインナップの拡充のためにお互い不得意な分野の車種を供給し合っています。

〈現行〉
スズキ エブリイワゴン→日産 クリッパーリオ
日産 セレナ→スズキ ランディ

〈現行以外〉
スズキ MRワゴン→日産 モコ
スズキ パレット→日産 ルークス
スズキ アルト→日産 ピノ


【マツダ⇄日産】

日産はマツダからラフェスタのOEMを受ける前にオリジナルブランドの車を生産していました。
ティーダ・マーチなどのBセグメントのプラットフォームを採用した両側スライドドアをそれなりに売ってきたはずですが開発を行わずOEMを受けることにしました。
モデルを廃止するそうなのでフェードアウト戦略でしょう。

商用車は生産するメーカーが少なくなりOEMで調達することが多くなりました。

〈現行〉
マツダ プレマシー→日産 ラフェスタ
日産 AD→マツダ ファミリアバン

〈現行以外〉
なし


【スズキ⇆マツダ】

マツダには軽自動車のプラットフォームが無いので、ラインナップの拡充を図るためにスズキの車種を供給しています。
かつてはオリジナルブランド(キャロル、スクラム)や軽自動車を中心としの販売チャネルのオートザム(AZ)を持っていて、車名にはその名残があります。

〈現行〉
スズキ ワゴンR→マツダ フレア
スズキ アルト→マツダ キャロル
スズキ エブリイ→マツダ スクラムワゴン
スズキ スペーシア→マツダ フレアワゴン
スズキ ハスラー→マツダ フレアクロスオーバー
スズキ キャリイ→マツダ スクラムトラック

〈現行以外〉
スズキ ワゴンR→マツダ AZワゴン
スズキ ジムニー→マツダ AZオフロード
スズキ パレット→マツダ フレアワゴン
マツダ オートザムAZ-1→スズキ キャラ
スズキ エスクード→マツダ プロシードレバンテ


【スズキ→シボレー(GM)】

スズキはかつてGMと提携を結んでいました。
小型車の不得意なGMは自社ブランドにスズキの小型車をOEM供給していました。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
スズキ ワゴンRプラス→シボレー MW
スズキ ワゴンRソリオ→シボレー MW
スズキ スイフト→シボレー クルーズ


【スズキ→フィアット】

今はクライスラーとの関係が深いフィアットですが、スズキがGMと提携していた時代、GMとも提携がありました。
同じグループでの共同開発とOEM生産ですが、GMがフィアットとの提携を解消し、スズキがGMとの提携が解消された後もフィアットとスズキの関係は続きました。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
スズキ SX4→フィアット セディチ


【オペル→スバル】

かつてGM傘下だったスバルは、同じGMグループだったオペルのミニバンを導入することにより、ラインナップの拡充を図りました。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
オペル ザフィーラ→スバル トラヴィック


【シボレー(GM)→トヨタ】

日米貿易摩擦の緩和を目的に半ば押し付けられるようにOEM販売。
アメ車好きで有名な所ジョージをCMに起用するなど、力を入れはしたが振るわず一代限りで撤退。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
シボレー キャバリエ→トヨタ キャバリエ


【三菱→スマート(ダイムラー)】

三菱は今でこそ日産との関係が深いですが、ダイムラー(当時ダイムラークライスラー)と提携している時期がありました。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
三菱 コルト→スマート フォーフォー


【スバル⇆いすゞ】

いすゞとスバルは業務提携を結んでいた時期があります。
いすゞは乗用車部門が斜陽になると自社ブランドの後継をOEMでしのぐことになります。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
スバル レガシィ→いすゞ アスカ
いすゞ ビッグホーン→スバル ビッグホーン


【ホンダ⇆いすゞ】

いすゞは乗用車部門からの撤退に際し、様々なメーカーからOEM供給を受けています。
一方ホンダは本格的なSUVが得意ではないので、様々なメーカーからOEM供給を受けています。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
ホンダ ドマーニ→いすゞ ジェミニ
ホンダ アコード→いすゞ アスカ
いすゞ ミュー→ホンダ ジャズ
いすゞ ビッグホーン→ホンダホライゾン
いすゞ ロデオ→ホンダ パスポート
ホンダ オデッセイ→いすゞ オアシス


【ローバー⇆ホンダ】

現在はランドローバーブランドしか残っていないローバーですが、かつてローバーとホンダは資本提携を結び、お互いにOEM供給を行なっていました。
得意分野の車を供給し合うことでラインナップの拡充を行っています。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
ホンダ バラード→ローバー 213
ホンダ クイント→ローバー クインテット
ホンダ クイントインテグラ→ローバー 416i
ランドローバー ディスカバリー→ホンダ クロスロード


【スバル→サーブ】

スバルとサーブはGM傘下にいた事があります。
同じグループ内のOEM供給です。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
スバル インプレッサ→サーブ 9-2x


【クライスラー→ホンダ】

ホンダのSUVのOEMです。
クライスラーからも供給を受けています。

〈現行〉
なし

〈現行以外〉
クライスラー ジープ・チェロキー→ホンダ ジープ・チェロキー


【まとめ】

OEMは基本的にメリットが大きいので幅広く行われます。

自動車業界も度重なる業界再編で様々なグループが出来ており、トヨタグループの会社やGMの名前が数多く登場します。

今世界をトヨタグループと二分するVWグループがここには登場していませんが、シュコダやセアトなどで幅広く行われています。
(登場していないのは私が詳しくないからです)

ここで眼を見張るのはスズキのOEMが多いことです。
日本市場では軽自動車という特殊枠があるので日本独自ですが、グループなどお構い無しに販売網を広げまくっています。
スズキはインドや中国への進出など、行動力が半端ないです。

【追伸】
OEMは幅広く行われているので足りないかも知れない。
特に商用車と国外メーカー。

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