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「ひたすら面白い映画に会いたくて」6本目『クワイエット・プレイス』

6本目:『クワイエット・プレイス』

    『クワイエット・プレイス』(2018)

脚本:スコット・ベック/ジョン・クラシンスキー/ブライアン・ウッズ /
監督:ジョン・クラシンスキー

  「静けさの中に突如鳴り響く恐怖のメロディ」

 音を立てたら襲いかかってくる正体不明の異星人。本作は、この異星人に人類が為すすべなく狩られていき、生き残りが少なくなってきた地球が舞台だ。だから本作の登場人物は非常に少ない。この登場人物の少なさが物語に一層「静寂」をもたらすことになる。

 まずはこの映画の世界でのルールを整理しておく。大きな音に異星人は反応し、全速力でその音がした場所へと集まってくる。どうもこの異星人は目が見えないらしいのだ。音を発した生物を一瞬にしてカマキリのような手で抹殺する。例外として、大きな音が近くでしている場合(例えば、川の音や滝の音)、その音より小さな音であるならば音を出しても異星人は反応しない。

 以上がこの映画の世界で生き残るためのルールである。大きな音を立ててはいけない(しかも基準は曖昧)というルールの中で毎日生きていくなんて考えられない。私ならばストレスが溜まりすぎて、いつの日か大声を上げて発狂してしまうに違いない。「もうひと思いにやってくれ!」と。

 この映画ほどポップコーンの音が鳴り響く映画は他にないであろう。冒頭から息がつまるほどの沈黙描写が続く。「この映画は音を立てたらいけないんだな」というルールを冒頭の数十分の映像で私たちに知らせてくれる。こんなに静かな映画は観たことがない。

 また「音を立ててはいけない」というルールは、この映画の特徴の一つではあるが、別段目新しいものではない。『ドント・ブリーズ』と同じようなルールである。しかし、『ドント・ブリーズ』とは全く違う特徴がこの映画には存在する。

 それは、「耳」である。この映画には登場人物の1人に耳の聞こえない少女が出てくる。観客はその少女と共に音のない世界を味わうことになる。「無音の世界」、「補聴器をつけているが音のない世界」、そして「音の存在する世界」という3つの世界を場面が変わるごとに観客は体験することになるのだ。これがこの映画最大の特徴だといえよう。


私の1番好きな場面

 私の1番好きな場面は、この映画のラストシーンだ。娘が母に向かって無言で頷き、その娘の頷きに応えるように銃を装填する母で終わるというこの一連の流れが好きなのである。まるでゾンビ映画のワンシーンから切り取ってきたのではないかと疑うくらいのシーンであったというのも好きなポイントである。戦う覚悟を決めた娘と母。その顔は美しかった。というか、やっぱり母親役を演じたエミリー・ブラントは終始美しかった。

私のトラウマシーン

 トラウマシーンは、息子の1人が橋の上でおもちゃのロケットで楽しそうに遊んでしまう場面である。あれだけ冒頭から静寂を守っていたにも関わらず、おもちゃのロケットは無残にも軽快な音楽を奏でるのを止めない。このおもちゃのロケットの音楽だけが劇場に鳴り響くシーンは、この映画の中でも1番怖いシーンだったんじゃないか。

 この場面ではポップコーンを食べる音すら聞こえなかったぐらいだ。みんな次の展開への心の準備をするのに忙しかったのだろう。それにしても、あのおもちゃのロケットをあそこまで恐ろしく描くことができるなんてすごい映画だな。

最後に

 最初から最後まで常に緊張感を与えてくれるスリリングな映画であった。これは是非とも映画館で観ることをおすすめする。この臨場感を自宅のDVD鑑賞で味わうのは至難の業であろう。きっと観終わった感想も違ってくるはずだ。本作のように、映画館で観ないと最大限に楽しめない作品はホラー映画に多い気がする。これからは、ホラー映画も食わず嫌いせずに劇場へ足を運ぶようにしていこうと思う。

予告編

↓映画『クワイエット・プレイス』の予告編です↓

(出典 : 【YouTube】パラマウント・ピクチャーズ(日本版) 「『クワイエット・プレイス』本予告」)

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