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満洲引揚三世の備忘録

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2021年8月の記事一覧

[10] 『記憶を拓く 信州 半島 世界』(信濃毎日新聞社編集局編、同社刊、2021年)を読む

 象山に穿たれた地下壕は真夏でもひんやりしていた。掘りかけの壁は荒く、作業をしていた人たちの気配がまだ漂っているかのようだった。

 松代大本営地下壕で働いていた朝鮮人労働者は強制連行されてきたという案内板に対し、強制ではないという抗議があってその記述が修正されたという報道があったとき、どうにか事実を突きとめられないものかと思った。

 どんな人がどのように働いていたか、当時を知る人たちの間では共

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[9] 満蒙開拓青少年義勇軍の母

 戦時中の写真集の中に、実家の近くにあった小学校(当時は国民学校)の前で、村の満蒙開拓義勇軍父兄会の人たちが並んだ写真を見つけた。
 最前列には母親と思われる8人の女性が座っており、兄弟なのか小さな子もいる。

 農村では召集されていく男性が増えたため人手不足となり、満蒙開拓団の送り出し計画が政府の思うようには進んでいなかった。その穴を埋めるように、高等科を卒業する子どもたちをターゲットにして村や

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