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ハゼノキの里山記録④ 植樹後のハゼノキの状況・1年目

みなさんこんにちは!今月は現在私たちの活動の中心拠点となっている「ハゼノキの里山」を通じたハゼノキの育成方法に関して簡単に書いてみました。まだまだ幼木の段階ではありますが、ここを乗り切れば後は数十年、数百年と実が収穫できる樹として育っていきます。植栽場所と、最初の手間を惜しまないことが重要だと感じました。そんな前回の記事はこちら!

さて今日は、前回までの育成方法を踏まえて、ハゼノキの里山は現在どういった状況になっているのか?について書いていきたいと思います。実は特に1年目はびっくりするぐらいうまくいきませんでした。そこを踏まえたうえで2年目以降はいろいろと改善して行くことになるのですが、まずは1年目に植樹したハゼノキがどのような結果になったか、そしてその原因を探っていきます!


■ハゼノキの育成状況

現在の育成状況に関して、初年度に植樹したハゼノキにフォーカスして書いてみたいと思います。植樹した品種と数はそれぞれ、葡萄櫨152本、昭和福櫨90本、伊吉櫨30本の合計272本です。そして、2024年5月現在の活着状況は以下の表のようになります。全体の数字だけを見ると8割以上が残っているので、問題ないように見えますが、問題は品種苗の活着率です。なんと49.3%…伊吉櫨に至っては3本だけ…さすがに少な過ぎない??

2022年に植樹したハゼノキの動向

植樹する前に色々な生産地でヒアリングをしていましたが、悪くても6割くらいは残るというお話を聞いていましたので、かなり予想外の結果でした。大多数を路網(林務を行う際重機が通る作業路)という、不適地にあえて植樹した葡萄櫨は仕方がないにしろ、あまりにも活着率が悪すぎます。地域差を計測する意味で、福岡県那珂川市にもハゼノキの植樹を行っているのですが、那賀川市の活着数は昭和福櫨が40本植樹→28本、伊吉櫨20本植樹→5本となり、活着率は55%でした。こちらもやはり低い!特に伊吉櫨。。。

※補足説明※
ハゼノキは接ぎ木苗です。品種の無いハゼノキを台木として、品種苗の穂を接ぎます。そのため育てるのは「接ぎ穂側」になります。接ぎ穂がうまく育った場合を活着とし、何らかの理由で接ぎ穂が枯れてしまった場合、台木萌芽として集計しています。

【補足】台木萌芽と品種活着

■初年度の失敗の原因を探る

以上の結果を踏まえて、活着率が悪かった仮説をいくつか考えてみました。

【1,植樹場所が不適地だった】
前述していますが、葡萄櫨に関しては大半(152本中94本)を路網に植樹したため、まずはこれが原因だろう!と考えました。しかし、路網以外の場所に植樹した苗の活着率も50%だったため、実は路網とそれ以外で大きな差はありませんでした。つまり植樹する場所の問題ではなそうです。

実証として明らかな不適な路網に植樹したハゼノキ

【2,品種と気候条件が合わなかった】
次に同じハゼノキであっても気候に対する耐性の善し悪しが品種によって違うのではないかと考えました。特に今回活着率が極端に悪かった伊吉櫨は比較的涼しい地域発祥の品種のため日射量が非常に多く、温かい鹿児島が合わなかったのではないか?と考えました。しかし、伊吉櫨発祥の地に近い那珂川市でも同じように活着率が悪かったため、気候条件でもなさそうです。

現在残っている貴重な伊吉櫨

【3,育て方が悪かった】
育て方の検証をするうえで、重要になるのが「いつ接ぎ穂が枯れたのか?」という問題です。2022年5月21日に最初の集計をとったのですが、この時点で272本植樹したハゼノキは202本(活着苗と台木萌芽苗合計)に減っており、実に70本ものハゼノキが初期段階で枯れてしまいました。最終的に、品種苗と台木萌芽の合計は221本まで増えたため、育て方でもなさそうです。

という事で、原因は初期の段階にあることが分かりました。残された可能性は「植樹方法」か「苗そのもの」のいずれかという事になりました。

■原因と対策

さて、原因の絞り込みができました。まずは「植樹方法」に関してですが、「ハゼノキの里山記録②」(https://note.com/uchida_t/n/ne70b7cc0320d)の方法で植樹は行っています。植樹はスピードが命と書いているのですが、実際の苗を受け取ったのが3月11日、すべての苗を仮植状態にしたのが3月13日でした。その時点でまだ根は乾ききっていな状況です。そして実際に植樹自体が完了したのは3月24日でした。13日間かかっています。

次に「苗そのもの」ですが、元々いろいろな方に教えていただいていた、初年度の活着率から考えると明らかに低い数字のため、この線が怪しいのですが、苗を比較する実証は行っていなかったため、一番怪しいのですが、これれだ!と言い切れない状況でもあります。

左から昭和福、伊吉、葡萄。実は伊吉が一番大きかった

この辺も踏まえて、2年目の植樹は最終的に残った2つの原因と、検討してみた仮説を補完する意味も込めて以下の対策と実証を行うことにしました。
●短期間で植樹を完了させる
●苗の仕入れ先を増やす
●路網(地面が固く粘土質)へ植樹し
●もう1つの福岡原産種である松山櫨を植樹する

以上が、1年目の状況でした。実は思っていたよりも全然うまくいっていなかったりしました。実際に育てたかった品種苗がこうもあっさり半減するとは夢にも思っていませんでした……この現実を踏まえての2年目!となるのですが、今週はここまでです。

本当は今回で終わらせる予定だったのですが、長くなりそうなので2年目の話は次週!果たして、本当に苗や植え方が原因なのか??よろしくお願いします!




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