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森に行ったら海があった2020年の夏

今年の夏、浜辺で遊びましたか?
真冬に海水浴について考える人はあまりいないと思いますが、夏の間「海開き」「海水浴場」を含むtweetをそれぞれ取得していたので(そしていままでほったらかしにしていたので)、これを使って2020年の夏に思いを馳せることにします。

Tweetの取得

例年、海水浴場での海開きは南国な沖縄方面を除いてだいたい7月頭~8月いっぱいらしいです。そこで、7・8月に前後2週間ずつを足した6/17~9/15の間、「海開き」(120,609件)および「海水浴場」(189,906件)を含むtweetを取得しました(tweet取得の詳細については前回記事を参照)。取得tweetの推移をまとめたものが下図です。

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「海水浴場」と「海開き」それぞれに顕著なスパイクがあるのがわかります。
まず「海水浴場」の方は、7/9(木)に取得期間中の最多である20,384件を記録しています。中身をみてみると、この日は下記のtweetが少なくとも14,549回(全体の71.4%)retweetされており、結果的に1日あたりのtweet数が突出したようです。

カツオノエボシ…映画『天気の子』でヒロインの周りを漂っていた謎の物体みたいですね。クリオネさんのご親類でしょうか。かわいいけど危険、しかも例年とは事情が異なる――となるとたしかにRTしておきたくなる。

一方、「海開き」でのスパイクは7/3(金)で、取得tweet数は25,383件でした。この日、最もretweetされていたのは下記なのですが、その数は取得tweet中では1,253回で全体の4.9%に過ぎません。つまり特定のtweetが拡散した(バズった)のではなく、特定の話題が流行った(トレンドになった)ことになります。

まあ、このtweetを見ればそのときのトレンドが何かは一目瞭然ですね。取得tweetのうち本文に「どうぶつの森」もしくは「あつ森」を含むものを合計すると、全体の59.1%にあたる15,001件でした(ちなみに、「鬼滅」は1,334件)。現実の海開きの時期に合わせて、ゲームの中で海開きがあったようです。

公式RTを除いた週単位での集計

では次に、直接的な転載である公式RTを除いたtweetに注目し、テキストマイニングによって単語の流通を可視化することで話題の変遷を探ってみます。
まずは、取得したtweetから公式RTを省き、1週間単位でまとめてしまいます(下図参照)。

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この集計した折れ線グラフにも表れているように、「海開き」のピークは先述の7/3を含む「07/01to7/07」の週(25,715件)でしたが、「海水浴場」ではピークが「08/12to08/18」の週(9,060件)に移動しています。後者は公式RTでの拡散の件数が除外されたのがよくわかりますね。
では具体的に各週にどんな単語どうしが言及されていたのでしょうか。以前にも用いた対応分析(単語・文書間の共起関係を2次元上の距離で表現)で調べます。

海水浴場tweetでの話題の変遷

まずは「海水浴場」です。

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赤字の数字が「06/17to06/23」(=1)から始まって何週目かを表しています。
上図をみると、1~6週目(左上の単語の丸と週の四角の密度が高いところ)は感染症対策の限界から海水浴場の開設が中止される、といった話題が続いていたようです。7週目(中央から左上にかけて)は水難事故の話題でしょうか。8週目(右上)になると何やらネット上のランキングが話題になっていたようにみえます。最もtweetが多かった9週目「08/12to08/18」(中央から右下にかけて)は、無断での海水浴を問題視する投稿が多かったのかもしれません。そして、例年は海水浴場が終わりの時期を迎える10週目以降(中央右)は「コロナ」を含むtweetが再び主流になった模様です。
具体的には中身のtweetをみてみる必要がありますが、全期間を通じて話題が変わって結局戻ってきていたこと、また全般的に何らかの報道への反応が中心的だったように読めます。海水浴場という単語が具体的な地名と結びつきやすいために、後述の「海開き」と対照的に、現実世界での時事的な話題をよく伴ったのかもしれません。

海開きtweetでの話題の変遷

では「海開き」はどうでしょうか。

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単語の円の大小関係をみると先ほどの「海水浴場」とは様子が異なり、「海開き」とその他大勢の小粒に分かれています。これは先にみたように3週目(上図では右上)のtweet数が突出していて、その他の週とかなり差がついていることと対応しています。実際、上図では3週目の赤い四角の近くに「どうぶつの森」や「あつ森」があって、この週にトレンドを作ったのがよくわかります。その前の2週目は、「アップデート」「泳げる」「楽しみ」、と「どうぶつの森」での海開きへの期待が表れています。またそのあとの4週目および8週目(左上)についても、「家具」「ベル」「カブ」など、「どうぶつの森」に関する話題に属するとみられる単語が出現しています。一方で5~7週目および9週目は、感染防止のために海水浴場での海開きが中止されたことへの言及が比較的多かったようです(8週目は追加のアップデートでもあったのでしょうか?)。1週目および10週目以降は、tweet数自体が少なくなりここでは単語からの話題の読み取りは難しそうです。
全体を通してみると、「海開き」が「どうぶつの森」での行事(アップデート、機能の追加)としてゲームのプレイヤーたちの反響を呼んでいた様子がみて取れました。たしかに、ゲーム内は現実の感染症とは無縁の世界なので、こちらでは「海水浴場」と違ってそれへの言及が限定的になるのも当然ですね。「どうぶつの森」のゲーム内では海水浴場という単語があまり使われなかったのかもしれません(未確認)。

まとめ

さて、今回は「海水浴場」「海開き」を含むtweetを使って、2020年夏の特殊な情景を振り返ってみました。
それぞれのtweet群から読み取ったことを突き合わせると、Twitter上の声としては、感染症対策で現実の海水浴場は遠のいたけど、代わりに「あつまれ どうぶつの森」が「海開き」をやってみんなに海水浴を提供した――のが2020年の夏だったようです(だよねって?)。なお、海水浴場に行けないと呟いていた人が実際に「あつ森」で「海水浴」していたのかは、tweetとユーザーの対応関係をみないとわかりませんが、そういうことはそれでお金が稼げる人にお任せしとくことにします。
ちなみに、筆者は時間給雇用の業務の一環でこの記事を書いていますが、浜辺よりも思いを馳せているハイラルの地はまだまだ遠そうです(少なくとも片道3万円ぐらいはかかる)。
ではまた次回。

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