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ぷりぷりきゅあきゅあ3月27日

『Spring』恩田陸さんの最新刊。
バレエの天才を描いた物語。恩田陸さんは、天才を書く天才だと本当に思う。『チョコレートコスモス』では演技の天才、『蜜蜂と遠雷』では音楽の天才を。『Spring』はまだ一度しか読んでいないが、きっと繰り返し読むに違いない。

わたしが初めて天才だなと思ったのは、中高時代の部活の同期だ。小学校までの同級生も、その後ピアニスト、ダンサー、陶芸家、医者などなど天才と呼ばれそうな人たちはいる。だけれど一緒に育ちすぎて、ただの個性にしか思えなかったのだ。
でも、彼女は違った。
目が違ったし、見ているものが違った。感覚も感情も違っていて、いつも不思議に思っていた。合宿の夜、隣の布団で寝転んでいた彼女はおもむろに腕を天井に向けた。指を重ねるようにして、井の字を作った間からみていたのは一体何だったのか。いつもは激しく騒がしいのに、ときおり見せる静けさにどきまぎした。
今では、彼女は大人びているところと幼いままであるところのバランスが稀有だということを知ったのだけれど。

わたしには何の才があるのだろう。そもそもあるのか。
一番するするできたのは、書道かもしれない。毛筆。美しい字がわかったし、欲しい場所に筆を置くことができた。ただ真似しかできなかった。生み出すことはできず、オリジナルの字は迷子になった。

プリキュアに憧れたあの日から、天才は特別で主人公で唯一無二の存在だった。自分は違うけれど惹かれる。どうやらプリキュアも歳を重ねているらしい。「なんとかなるーー!」が口癖だったプリキュアが、なんとかならない壁に直面していると、「オトナプリキュア」ではあらすじが紹介されていた。

天才が天才でなく見える瞬間。天才に憧れるのと同じくらい、それもまたぐっと惹かれるものがある。

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