ついやってしまう体験のつくりかた_人を動かす_直感_驚き_物語_のしくみ__1_

「ついやってしまう」体験のつくりかた #UI/UXデザイン #レビュー

2019年8月に出た本。元任天堂の企画開発をしていた著者が、ゲーム開発で「つい」やりたくなるような体験をどうデザインしてきたかについて解説しています。

企画開発をしていると、どうしてこんないいものが売れないんだろう、伝わらないんだろうと感じることが誰しもあると思います。僕自身、機械学習の仕事をする中で、同時並行で走っていた別のモデルが採用されて悔しかったりという経験があったりします。

実際機械学習に限らず、プロジェクトってどれがうまくいくかわからなかったりKPIを決めても一長一短だったりするので、最終的には心が動く方を採用したいというのは、エモさを重視する現代社会では合理的だとみんなが考えるんじゃないかなと思っています。

※意識高めの界隈でエモいって言葉が流行ってるし判断基準にも反映されてる感じがする。落合陽一さんが広めた言葉だけど、もう文化として受け入れられつつあると思う

ゲームって、人生になくてもいいものなので、ありとあらゆる選択肢に本来負けるはずで、めちゃくちゃ不利な立場にあるのだけど、
それでもついやってしまうような面白さ、体験を提供してきたからこそ存続し発展してきた。

そんな本来なくてもいいものですらついやらせてしまうようなデザイン技術の蓄積から、心を動かす技術を学んでいきましょうというのがこの本の趣旨。

そもそも、この本自体がついやっていしまう体験を生み出すよう作られています。例えば・・・









とくればつい続きが読みたくなると思うのですが、こういう漫画のヒキのような、続きが気なる、ページがめくりたくなるような仕組みが沢山仕込まれています。

個人的に一番面白かったのは、直感で動かし、一生忘れないルールの楔を心に打ち込むデザイン技術

「直感で動かす」というのは、プレイヤーが自身の力で直感的に理解する体験を指し、例えばスーパーマリオというゲームでは山やマリオの配置やスクロールなどで直感的に右に行きたくなるような仕掛けを施しています。

さらに、この右に進むという直感を確信に変えるために、クリボーのようなシンプルな敵を配置し、そしてそれを無視できるようにもすることで右に進むので合ってるよ!と繰り返し教えます。これを繰り返すことで、この右に進むというルールが心に深く深く刻まれていきます
そして最後にはクッパという、基本的にはボスの右に行くだけで勝てる敵まで作ることで右に行くゲームという唯一にして絶対のルールを徹底して守っている。

これが直感で人を動かすデザイン技法です。他にもたくさん載っていて、どれも馴染みのゲームで解説されるので非常にわかりやすかったです。

サービスを作る際にも、UI/UXデザインの文脈で似たような話がありますが、各論的・散文的にUI設計例などでまとめられていることが多いような気がしていて、なかなかその本質的な部分を学ぶことは難しいように思います

この本は、UI/UXデザインの本とは全く角度が違っていながらも、その本質的な部分が学べる良書だと思いました。

サービスづくりにおいては、サービスが根本的に目指しているものに目が行きがちで(当然)、UXから作り込み始めることは少ないように思いますが、
今は世界中の質の高いサービスがアプリストアやスマホ画面などの同じ土俵で戦っている時代ですし、ユーザー体験を損なえばすぐ使ってもらえなくなります。

例えば Airbnb は創業時からデザインをとてもとても重視していたことが有名です。

つい触らせてしまうサービス設計にぜひ活かしたいと思いました。

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