今の私たちにおけるスピリチュアリティの在り方について、一考察

『ポップ・スピリチュアリティ-メディア化された宗教性』(堀江宗正著、岩波書店出版)という本を、偶然図書館で見つけました。
東大の先生が、スピリチュアルを研究?
しかも、ポップ・カルチャー寄りのスピリチュアルとは???

目次を見た限りでは、2000年頃からカリスマ霊能者が大衆メディアを通じて巻き起こしたブームの話、現代の日本人が輪廻転生をどう捉えているかの話、神社を中心として盛り上がるパワースポット現象の話、アニメやライトノベルなどのサブカルチャー世界で取り扱われる「魔術」についての話など、たしかに軽めのキーワードが満載です。
でもパラパラと中身を見てみると、様々な工夫を凝らして取得したデータをもとに分析し、大真面目に学問的な研究をしているようなのです。
これは、借りてみるしかない!

あとがきにご本人が記していますが、スピリチュアリティ現象はいまや全世界的な広がりを見せています。
海外ではずいぶん前からニュー・エイジと呼ばれる人々が一定の認知を得、西洋における仏教は宗教というよりスピリチュアリティ領域と認識され広まっているようです。
日本国内の動きも独特で、多方面から研究ニーズはあるものの、参考になる先行研究が乏しいという課題があるとのこと。
そこで、この分野に興味をもつ学生へ論文の書き方を教授する意味も込めて、メディア情報の分析手法なども複数採用し敢えて実践的に書き記したのが本書なのだとか。
巷の軽~いブログや過去の雑誌での特集記事、テレビ番組、あまたあるアニメやライトノベルのあらすじなどを、データ化して整理して分析して…あちこちにみられる苦闘の跡に、頭が下がる思いがしました!

本書の中で興味深いトピックはいくつもあるのですが、今回は一つだけ、パワースポット現象について私が「なるほど…」と思ったことを書き残しておきたいと思います。

皆さんは日本のパワースポットというと、どんな場所を思い浮かべますか?
全国津々浦々、様々あるかと思いますが、どうも神社と結びついていることが多いのではないでしょうか。

神社、神道の位置づけって、面白いなぁと思いました。
神道はれっきとした組織宗教であり(当たり前か!)、第2次世界大戦が終わるまでは権威主義的な教えと天皇崇拝を強力に主導する役割を担っていたのに、現在そんな政治的側面を意識する人はとても少ないでしょう。
今の私たちはなんとなくそんな過去をスッカリ無しにして、日本の風土に根差した神様だったり、自然崇拝を重んじる側面に大きな魅力を感じているというのが一般的な風潮なのではないでしょうか。

そして、私たちがそんな神社を訪問する理由とは、どんなものなのか。
神社をはじめとした多くのパワースポットには祭神がいて、その逸話からどんなご利益がもたらされるか説明されていたりします。
それもあって、多くの人は「現世利益」(お金、出世、パートナーなど)を求めて参拝するのでは…と想像していたのですが、実は「心理利益」(癒し効果、浄化、覚醒など)を求めている比重の方が高そう、というのがデータからは読み取れるとありました。

どうなんでしょうね?
実際、「○○神社は△△の御利益がある」という情報はまことしやかに流布されていて、それを目当てに訪れるケースはとても多いように感じます。
ただ、本当に御利益があったことを証明するのは難しいこともあり、行ったあとはその効果について気に留めることもせず(これもデータから言えるらしい!)、結果的に現地に行って良い氣を浴び、満たされた気持ちになることで期待したものが得られたということになる…という感じが大半なのではと想像します。
さらに、御朱印集めをしたり、SNSにきれいな写真や動画を上げることによって、娯楽型の観光という目的も満たされたりしますよね。

つい先日、あるテレビ番組で伊勢神宮と出雲大社への参拝が特集されていましたが、『ご利益スポット』という名称で煽る一方で、それだけではないよ、感謝をしたり自分を整えさせてもらうという姿勢も大切だよ、というメッセージも前面に出すような構成になっていました。
これが今の一般的な日本人に受け入れられやすいトーンなのだろうなと、私自身も改めて理解した感じです。

かつてのナショナリズム的神道とは相容れそうもない、今の神社の在り方って、日本人特有の文化的柔軟性を如実に反映しているんだなぁ…と、改めて思います。

昨今はデザイン性の高い御朱印帳を取りそろえた神社も多いし、かわいいキャラクターを採用したり、敷地内でポップなイベントを開催したりすることも増えましたよね。

あらゆる良いものにOKを出していけるので、他の教えや宗教とケンカをする必要もない。
この部分はやっぱり日本人としてはいいなぁ…と感じます。

ただ、やっぱり少し意識をして、自分なりに考えてみる部分も必要なのかな、と思う側面もありますね。

MOMOYOさんがずっと以前、日本に帰国されている最中にパワースポットを訪問され、浄化をお手伝いされた動画が残されています。
多くの人が訪れると、やっぱり様々なものが蓄積されて行くわけで、その"お掃除"も大変になっていく。
私の割と身近な知人にもそのような”お掃除”を請け負う方がいますが、相当身体に堪える様子を垣間見た頃から、さすがに訪問の在り方を考えるようになりました。

そんなことを考えていたら、今度は島田裕巳さんという研究者の本の紹介が目の前に現れてきました。
『神道はなぜ教えがないのか』-10年ほど前に書かれたものを、今年9月に増補して再出版されたのですね。

これも目次を見てみましたが、とても興味深い!
あれもない、これもない…「ない宗教」がもともとの神道?!
…次はこれを読んでみましょう!

自分では色々考えて、調べて、感じて、行動している…つもりでも、
冷静になってみるとなんとなく無自覚に周囲の空気に流されているだけ、コマーシャルをそのまま鵜呑みにしているだけ…かもしれない。

それは、この分野にも言えることです。

あれ、本当のところはどうなんだろう?

ちょっと見直してみる必要があるとき、研究者のアウトプットは大きな助けになると思います。

これも、眠らされがちな世界から目を覚ます方法の一つですね。

長年の公私に渡る不調和を正面から受け入れ、それを越える決意をし、様々な探究を実践。縁を得て、不調和の原因となる人間のマインドを紐解き解放していく内観法を会得。人がどこで躓くのか、何を勘違いしてしまうのかを共に見出すとともに、叡智に満ちた重要なメッセージを共有する活動をしています。