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性格診断で黙認している怪しさ

なぜか流行りがちな性格診断。
心理学風に解説されることもあり、有意義そうな見た目をしている。

しかし実際のところ、かなり怪しい。
説得力のある根拠はないし、簡単に反論できる。カジュアルな性格診断に限らず、ビジネスでよく出てくるMBTI診断ですら同様だ。

そもそも性格診断やタイプ分類は学術的に扱われることがほとんどない
理由の1つに再現性の乏しさがある。同じテストを受けても違う結果になることはザラにある。

しかしそれより重大なものとして、性格診断が暗黙のうちに前提にしている問題がある。

性格診断やタイプ分類を採用した場合に、何を黙認したことになるのかを検討してみる。

性格診断で黙認していること

  1. 言動だけで診断できる

  2. 常に当てはまる

  3. いずれかのタイプに分類できる

前提① 言動だけで診断できる

何らかのテスト結果で診断 (分類) される。
つまり観察できる言動だけで十分評価できることを前提としている。

そうだとすると、次のことも言えてしまう。

  • 表に出さなかったプライベートな思考は、その人と関係ない

  • 自分でも分からない無意識部分は、その人と関係ない

前提② 常に当てはまる

診断された性格、分類されたタイプがあるとして、それが常に当てはまるのかという問題だ。

もし当てはまるなら、次のことを言っているのと同じだ。

  • 人は、相手や状況に関係なく同じ言動をする

  • 人は、努力しても性格やタイプを変えられない

前提③ いずれかのタイプに分類できる

たとえばMBTI分類 ("ESTJ"などアルファベット4文字で分類されるもの) では、16タイプ用意されている。それ以外の "分類不能" だとか、"ESTJ と ISTJ の中間" のような結果はない。

つまりMBTI分類によると人間は16タイプしかいないのである。いま生きている人だけでも80億人以上もいるのに。

多様性を真っ向から否定するような前提である。

しょせん性格診断

性格診断やタイプ分類を信じることは、
  言動でしか評価できず
  努力で変わることができず
  多様性もない
と考えることである。

人間は、そんなにつまらない存在なのか。

もちろん、本当にそう思っている人は少数だろう。
実際、思っていても言わないことだっていくらでもあるし、家族や友達と職場では性格・態度を変えるなんてことは普通だ。そういうのを含めて、人間らしさだろう。

しょせん性格診断だからと割り切って、面白い結果だけをかいつまんで楽しむのが、きっと適当な距離感なのだろう。その距離感をしっかり守りたい。

それを越えて、性格診断やタイプ分類を真面目に信じ込んだり、他人に押しつけたりしてはいけない。思っている以上に重大な侵害になるからだ。

カジュアルな遊び (性格診断) や理論的マネジメント (MBTI診断) に見えるが、根拠のない人格の決めつけ・レッテル貼りにならないよう、扱いに注意が必要だ。

参考書籍

『自己啓発の教科書 禁欲主義からアドラー、引き寄せの法則まで』. アナ・カタリーナ・シャフナー (著), ナショナル ジオグラフィック (編), 大島 聡子 (訳). 2022. (ISBN 9784863135277)

今回の話題は「自己理解」という項で紹介されている。

そもそも性格診断以前に、「自己」はどのように成立するのか、そもそも不変・独立した自己など存在しないのか (仏教的)、という哲学的問題がある。
確立された答えはない。

この本、かなり良い。
ビジネス書を読む前に読んでおくと便利だ。
ビジネス書界隈が、いかに既知の知見を新発見かのように擦っているか、よく分かる。

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