知らないと後悔、海上自衛官から民間船員への転職

ーはじめにー


 この記事は私が海上自衛官から民間船員に転職した経験を元に民間船員に興味がある海上自衛官へ向けた記事となっております。
海上自衛官以外の方へはあまり参考にならないと思います。
 私は約10年間自衛官として勤め、船員歴は2年です。
実際に転職する際に色々な方から話を伺い、調べ、準備をして転職しましたが転職後、転職前に知りたかったなと思うことが多々あったので転職を考えている方向けに記事を書きたいと思いました。
なお、この記事は海上自衛官と499トンの内航貨物船とを比較した内容になってます。外航船、タンカー、タグ、フェリー等に興味があられる方へは参考にならないと思います。

海上自衛官と民間船の違い7選

1.職種の種類が少ない

 民間船員には基本的に航海、機関、(大きい船だと調理)しかありません。それ故、幅広い知識と技量が求められます。例えば、航海が運用員の仕事もしたり機関はディーゼル、電機、応急工作の仕事をしなければならないということです。しかし、2年勤めてそこまで深いことは求まられないと感じてます。自衛隊のようなその職種のスペシャリストに!というよりかは浅く広くという感じがします。

2.給料、休暇等は会社による

 民間船員は会社員ですので給料、休暇等会社によって異なります。給料で言うと自衛隊のように総支給額を提示される会社もあれば手取り額を提示される会社もあります。手取り額の場合もらえる給料は多いが総支給額は低いと言うこともあり得ます。どう言う事かというと総支給額を低く見積もって手当てによって加算し手取り額を増やしている場合もあるという事です。そうすることによって税金を抑えれるというメリットがあります。しかし、年金の支払額も抑えられているのでそこは注意が必要です。

3.訓練がない

 基本的に訓練はありません。戦闘訓練は勿論、基本7部署についても行いません。大きい船、外航船等は行うところもあるのかもしれませんが周りで訓練しているというところは聞いたことがありません。しかし、何かあった時のため自分で備えておくことは重要かもですね。

4.通勤がない

 会社によるのですが基本的に乗船下船時の移動費は会社負担となります。日付等関係ないので下船して2、3日遊んで帰ったとしても負担されます。休暇中呼び出されることはまずないです。

5.居住区が個室

 ここが一番大きい違いですね。ベッド、テレビ、冷蔵庫、クーラー、机、椅子、船によっては洗面所まで部屋に付いてるみたいです。待ち時間、休憩、仮バース(寄港地)ほとんどの時間を居住区で過ごします。

6.一人ワッチ、固定ワッチ

 基本的に499トンクラスの船は一人ワッチです。最近はどこの船も自動操縦なので電波が入れば携帯をいじったり、本を読んだり過ごしてます。ワッチは固定で下っ端は0〜4、12〜16です。何時に出航しても変わりません。

7.当直がない

 当直がないので、仮バース(寄港地)で船を空にしてみんなで飲みに行く事もあります。舷門、発電機ワッチ等もないので停泊中交代で見張る事もないです。何かあれば警報が起こしてくれるといった感じです。投錨中も作業がなければ休みみたいなものです。

会社の選びの注意点 確認事項

1.航海日数の確認 

 これが個人的にはすごく重要だと思っています。航海日数というのは、荷物を積んで、揚げたら1航海となります。月15航海という船は2日に1回は積み荷役、揚げ荷役を行っているという事なのでなかなかしんどいと思います。参考までに私の船は月に5航海くらいなので仮バース(寄港地)もあり、そこまで忙しくないです。

2.調理員の有無 賄いは個人か

 小さい船は調理員が乗っていないことがほとんどなので基本的に個人で調理することになります。会社によっては下っ端が用意しないといけなかったり航海中は機関が用意する会社、船もあるみたいなんで確認しておいた方がいいです。調理員がいない船は会社から食費が手渡されます。基本どの船もそうみたいです。食費を浮かせるとお小遣いにもなるので個人的には個人賄いがおすすめです。聞いた話になるのですが小さい船で調理員が乗っているということは自分達で買い出しに行く時間、調理する時間もないくらい忙しいということらしいのでそれも踏まえた上で検討された方がいいと思います。

3.乗船、下船の移動費 会社か個人か

 最近の会社は負担してくれるところが多いらしいのですが確認しておいて方がいいと思います。給料は良かったけれど交代する度に移動費が飛んでいくとなると大きな出費です。北海道や九州まで移動するなんてこともザラなので確認しておきましょう。

4.給料体制 手取り、総支給、手当etc…

 海上自衛官と民間船の違いでも触れましたが、給料体制は会社によりきりです。また、退職金、手当て等についても会社によって異なります。個人的な意見としては手取り計算で年金税金健康保険料等を抑えてもらった方が得のような気もします。年金税金健康保険料は前年の収入で決まります。船員の給料はやはり陸上の仕事と比較すると高額なので船での仕事が嫌になり陸上の仕事に転職した際最初の年がキツくなるので総支給額は抑えてもらった方が船員としてはいいと思います。あくまで個人の意見ですので参考までに。
 その他にも休暇中と乗船中の給料に変動はあるかについても確認した方がいいと思います。

5.頻繁に求人を出している会社は気をつけろ

 各所運輸局に行くと求人情報を確認することができます。船員求人情報ネットというサイトでも同じものが見れます。ここに頻繁に求人を出している会社は人離れが激しい可能性上がるので気をつけてください。また、運輸局で名前を登録すると頻繁に電話がかかってくるみたいなのでそれが嫌な方は携帯で自分で確認する方が良いと思います。

ーおわりにー

 私自身、転職して後悔はありません。むしろ、もっと早く行動に移せていればという思いもあります。これはあくまで私個人の意見で中には自衛隊の方が良かったと感じる方もいると思います。
 しかし自衛隊と違って船の雰囲気、人間関係が合わないなと感じたら辞めること、船(会社)を変えることができます。自衛隊だとなかなか個人の意見は通りにくく、私も家庭の事情で人事を変えてもらったことがあるのですが2年間報復人事を喰らいました。自分の人生を自分の思った通りに生きれるのは民間船員かなと私は思います。
 この記事が現役自衛官で進路に迷っている方のお役に立てれば幸いです。
 最後まで、ありがとうございました。おわり



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