Queenと岡本太郎と私

記憶が確かならば『ボヘミアン・ラプソディ』という作品を知ったのは『死霊館のシスター』を観に行った際にその予告映像を目にしたことがきっかけでした。
しかしQueenについてバンドとボーカリストの名前くらいしか知らない私は「あーQueen・・・白タンクトップの拳を突き上げるひと・・・」などと思いながら流し見るに留まりました。
公開後かなり話題になっていましたが、やはり興味を持つことはありませんでした。
が、一転して観に行こうと思ったのは治安の悪い映画館に行って胸糞悪くなったので「普通の映画館に行ってこの不快感を払拭せねば・・・」と思ったためです。
Queenのこと全然知らないけどなんか色々吹き飛びそうな映画だよな、という印象により『ボヘミアン・ラプソディ』に決めました。
少し前に公開されていた『判決、ふたつの希望』も観たかったのですが、近辺では上映されていなかった。残念。
まず本編開始前のファンファーレからしてロック仕様になっているのがときめき。
しかも後から知ったことには、Queenメンバーによる演奏とか。ニクいわ。
フレディ・マーキュリーのルーツもなんにも知らなかったので、空港で働きながら「パキ野郎」などと罵られる辺りでは「ん?この彼が主人公?」とか思いながら観ていましたが、しかしいちばん冒頭からして観ているこちらをわくわくさせる構成でした。
自分がライブに行くときってもちろん客席からの風景しか見えないので、舞台上からの風景を疑似体験できるのはちょっと楽しい。
Queen結成からライブ・エイドまでの彼らの道のりについても、ファンのみならずわたしのような何も知らない人間が観ても楽しめるものでした。
あの有名なリズム、こうやって生まれたのかーーーー!!!!!とか。
こちらもハンドクラップ&足踏したくなってしまうこと請け合いです。
尊大かつ繊細、周囲の人は振り回される部分も大きかったかもしれないけれど、でもとっても愛されたんだろうなあ。
彼自身もその愛をそのまま受け取ることが出来たら、ずいぶん生きやすかったかもしれないのに。
人間、難しい生き物です。ポールはクソ。猫は最高。
そしてライブでの登場時に"Her majesty, the Queen!!!!"て紹介されるの恰好良すぎました。

そして本日は監督の舞台挨拶に合わせて『岡本太郎の沖縄』を観てまいりました。
岡本太郎のことも私はよく知りません。有名な壁画(渋谷に移されたやつ)と、太陽の塔と、銀座の時計くらいしか知らない。
しかしこの映画冒頭で出てきた彼の作品を観て感じたことには、彼の作品と打楽器の相性の良さ半端なし。
太鼓のリズムと共にカットが切り替わりつつスクリーンに映し出される作品たち、気圧されるものがありました。
そして岡本太郎という人と沖縄という土地があまりにマッチしていること。
彼が沖縄を旅したのはわずかに10日あまり、その限られた期間で無数の素晴らしい写真を残したと言います。
「沖縄に恋をした」という表現が用いられていたけれど、傍から見ているこちらからは完全に両思いに思えて、ちょっと羨ましくなりました。
彼が久高島の風葬を暴いたとされる「後生(グソー)事件」についても私は全く知らなかったのですが、当時同行していた沖縄の写真家は「知る方も知られる方も良い気持ちはしない、自分は発表しようとは思わなかった」としつつも岡本太郎が週刊誌に発表したことについては「自分が調べたことはすべて発表するという先生の持論に基づいた行動だろう」と否定はしないし、地元の人も、賛否両論ではあれども「いずれは世に出ることだったのだろう」という意見の持ち主もいる。
必ずしも否定的な人ばかりでないということに驚きました。
そして実際のところ、岡本太郎が禁止されている場所に許可なく立ち入ったわけではないこと、約束を破って発表したわけではなかったこと、撮影された遺体の方の親族の中には精神に異常をきたした人もいたという事実はなかったということ。
彼の行動が正しいのか否かは分かりませんが、これらのことが知られぬままに糾弾・批判されまくってしまうのはなんだかとても嫌だなと思いました。
また、長く続いてきた神事であるイザイホーが途絶えてしまうという場面では、巫女の声がとても悲痛なものに響いて聞いているこちらも辛かった。
けれど久高ノロの孫であるお爺さんたちの表情は意外にも穏やかで、「途絶えてしまう事を、(祖母は)知っていたと思いますよ」と話す。
よそ者の勝手な意見に過ぎませんが、彼らの美しい信仰はそのまま未来に受け継がれていってほしいなあ、なんて思います。
やんばるは喜如嘉に暮らし芭蕉布を織り続けてきた平良敏子さんの描写もとっても良くて、ある程度の時間を割かれてはいたもののもっと観ていたいくらいでした。
「手を抜いたらすぐに分かってしまう。偽ることは出来ない」というような言葉が印象的でした。
岡本太郎のことを好きなひと、沖縄を好きなひと、どちらのことも好きなひと、どれかに該当する人は観て損なしの一本であると思います。

おわり

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