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創業期に頼れるコミュニティとは

UB Venturesが運営する起業家のためのソーシャルクラブ「Thinka」 の第1期メンバーが、2020年12月に卒業を迎えた。第3期メンバー募集を開始するにあたり、Thinka卒業生であるSpir大山晋輔氏、Flyle財部優一氏に、創業直後に感じたコミュニティの存在意義について聞いた。(聞き手は、UB Ventures 大鹿琢也)

事業の立ち上げ期に、なぜThinkaに参加したのか

――大山さん、財部さんのお二人は、起業の前後のタイミングでThinkaに参加していただきました。Thinkaに参加するスタートアップの中でも、特にアーリーステージにあったかと思います。2019年にThinkaに応募された理由からお聞かせください。

Spir大山:当時は、今提供しているSpirという日程調整ツールの構想が固まったころでした。私自身、ユーザベースの卒業生で、起業経験はなかったもののスタートアップにいた経験はあったので、スタートアップに関するナレッジの獲得が一番の魅力だったわけではありませんでした。

私にとっては、Thinkaのスペースがいちばんの魅力でした。オフィスを借りる状況でもないし、コワーキングスペースも考えましたが、コミュニティの中で使わせていただける場所があるのなら応募してみようかな、というのが正直なところでした。

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大山 晋輔 Shinsuke Oyama Spir 代表取締役
東京大学経済学部卒業。戦略コンサルティングファームのコーポレイトディレクション(CDI)の東京・上海オフィスでの勤務を経て、2014年に株式会社ユーザベースに入社。ユーザベースではSPEEDA事業の事業開発・プロダクト開発の責任者、営業部門を経て、2017年にNewsPicks USAのCOOに就任し米国事業の立ち上げ責任者として事業戦略策定やプロダクトマネジメント、マーケティング等に従事。2019年に株式会社Spirを設立。

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Spirについて
SpirはGoogleカレンダーやOutlookなどのビジネスで利用している複数のカレンダーと連携し、Google MeetやZoomなどのWeb会議の日程調整からカレンダーへの登録までをワンストップで行うことが出来るカレンダープラットフォームです。

――Flyle財部さんはいかがですか?

Flyle財部:僕の場合は、まだ会社登記前でした。しっかりと共同創業者をみつけて、プロダクトの方向性を固めたうえで会社を作った方がいいのではと思っていたのです。ですから、Thinkaに応募したのはビジネスプランを練っている段階でした。

前職のZUUには、創業1期目に入って上場前後を含め、激動の5年間を経験できました。成功だけでなく失敗もあるわけですが、生々しい体験はなかなか表には出ません。Thinkaの、「失敗体験を共有しよう」というコンセプトを魅力的に感じたのです。

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財部 優一 Yuichi Takarabe Flyle 代表取締役CEO
慶應義塾大学卒業後、5番目のメンバーとしてZUUに入社し、金融メディア『ZUU online』の収益責任者や新規事業・海外進出などを担当。創業期からマザーズ上場までの急成長期を経験。2018年にはメディア・新規事業管掌の執行役員を務め、19年に独立。2020年に株式会社フライルを設立。

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Flyleについて
Flyleは、顧客ニーズをいち早く捉え、プロダクトに反映させることをサポートするプロダクトマネジメントクラウドです。仮説検証や優先順位付け、顧客フィードバック管理などの業務のうち労働集約的な部分を自動化し、プロダクト開発の生産性・創造性を高めます。

Thinkaでの壁打ち、共通言語の獲得

――起業直後にThinkaにいて、いちばん役立ったことは何ですか?

大山:私の場合、先に起業することを一人で決めてしまったので、CTOがみつかるまで、とても苦しみました。ビジネスアイデアは思いついて、ユーザーへのインタビューや検証までは自分一人でできますが、プロダクトを作ってくれる人がいない。

前職の人に声をかけるのも気が引けるし、ビジネスマッチングアプリで初めて会った人に、いきなり「一緒に経営しましょう」とも言えず、「まずは副業から」となるのが自然です。フルコミットしてくれる人がみつかるまでが一番苦労しました。

そんなときに、毎日のようにThinkaに顔を出して、悩みを聞いてもらえたのはとても助かりました。

――CTOが決まったと聞いたときには、私たちも自分のことのように嬉しかった記憶があります。財部さんはいかがですか?

財部:僕の場合は、Thinkaで、プライシング、営業戦略、PLG、マストハブの考え方など、おさえるべき論点を網羅的に学べたことが、糧になりました。ほかの共同創業者の2人は、ユーザベースとビズリーチ出身なので、SaaSの経験があったのですが、僕自身は全くありません。創業メンバー3人が同じセッションに参加して、初期の段階で共通言語を持ち、目線合わせができたことが一番大きいです。

どういう課題に向き合ったプロダクトにするかを議論する中で、これはマストハブになれるか?作業代替性はどの程度あるのか?というような言葉が自然とでてくるようになりました。今ではエンジニアメンバーも含めて当然のように使っています。

――なるほど。初期のプロダクトの構想からPMF(Product Market Fit)に入っていくとき、一緒にやっているメンバーのプロトコルを合わせるのに意外と時間がかかることもありますね。そこに役立てていたのは、私たちとしても新しい発見です。

財部:プロダクトについては、どんどん行動して、仮説検証を繰り返し、ときには失敗もします。そこでは、良質な失敗も積み重ねることが大事です。

一方で、組織やファイナンスは不可逆です。とりあえずやっちゃえ、ではダメ。慎重に総合的に検討して判断すべきものです。これについても、Thinkaで体系的に学ばせていただけたのが大きかったです。

ベンチャーが成長していく過程では、組織づくりもファイナンスも、ハレーションが起きたとか炎上した、といった話はなかなかオープンにできません。僕はどちらかというと、行動派でどんどんやっちゃうタイプ。だからこそ、組織とファイナンスの2つについては慎重にいこうと思いました。科学的な理論と具体的な失敗事例の両方が頭に入っている状態を、創業者とともに作れたのは良かったです。

大山:組織とファイナンスについては、私も役に立ちました。起業してみると、今までに体験したことのない事象にいっぱい直面します。J-KISSの細かい論点や、資本政策でいつ何%くらいダイリューションさせて…といった話は、今までまともにやったことがないわけです。過去に実際に経験された先輩たちから話を聞くことで、それらの解像度がぐっと上がりました。

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過去の「Monthly Thinka」(月例での勉強会)

失敗の共有、自己開示ができるメンバーの存在

大山:もう1つは、講師やパネラーの方から学ぶだけではなく、同じフェーズで悩んでいる方がすぐそばにいることですね。数カ月先を進んでいる方もいる。一番最初に投資家のところに行くとき、どうやってアポを取ればいいのかとか、お金をくださいと言うのかとか、どんな提案を持っていくべきなのか、とか。失敗談を含め、そういう具体的な話をメンバー間で共有できたのがとてもよかったです。

特に、資金調達まわりの話はネットで検索しても会計事務所や税理士事務所のようなサービス提供側が、宣伝として出しているような情報が多い。Thinka では、起業家が実際に資金調達の相談に行って、どんなタイプのVCだったのか、どこの銀行のどの担当がどうだといったリアルな相談ができてアドバイスももらえました。

財部:プロフェッショナルサービスを依頼する際のフィーがブラックボックスになっている中で、具体的な相場観や値切り交渉など生々しい話はソーシャルでも投げられないですからね。

大山:起業家の立場からすると、投資家とお話しするときも弱みを見せにくい。まだイケてないタイミングでピッチをして、「全然ダメ」と言われたら、二度と話を聞いてもらえないリスクを考えます。

じゃあ、事前に「あの投資家はどんな方ですか?」と評判を聞くとする。でも、よほどの信頼関係がないと起業家にとって投資家のネガティブなフィードバックをすることはリスクなので、普通はポジティブなことの方が言いやすい。

Thinkaでは、いろいろなフェーズで日ごろから自己開示をしているからこそ、投資家についてもメンバー同志で相談できました。そして、実際に、財部さんにはエンジェル投資家を紹介してもらえました。

ファイナンスの状況もタイミングによって全然違うので、数年前の話を聞いても役に立たないこともあります。この半年、1年の状況がどうなのかを聞けるのはとても助かりました。

――投資家は日々投資の話をしているのですが、起業家の資金調達は1年に1度あるかないか。しかも、そのときの相場に関しても圧倒的に情報が少ない。何%ダイリューションして、バリュエーションはいくらで、というお金の話は、お給料を聞く感じに近い。

アメリカでは資金調達の前後でのバリュエーションも公開されているのに比較すると、日本では特に、起業家と投資家の間には情報の非対称性があるのが現実ですね。

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起業家目線でのコミュニティ運営

大山:Thinkaの運営がUB Venturesなので、UB Venturesの投資先が集まっていると誤解されることも多いのですが、そうではないことがいいなと思っています。Thinkaの初期も、投資先は1社もなかった。投資先にアドバイスするのは当たり前でしょうが、投資を前提としているわけではないですよね。

そういう環境でVCの方に相談できる場所はあまりないように思います。昔からの友人がベンチャーキャピタリストをしていますが、自分が起業家になってみると、いつかは投資してもらう可能性があるかもしれないと構えてしまい、ぶっちゃけ話はしづらくて。

――それは、私たちUBV側も同じです。投資先候補としてではなく、Thinkaメンバーとして話しています。投資家としてだと、こちらの投資戦略や投資の目線も入れざるを得ない。Thinkaでは、メンバーを応援したいという気持ちでやっているからこそ、できることの幅が広げられる。経済合理性を越えた関係を築けることで、私たちもVCとして大きな学びがあります。

財部:代表の岩澤さんや大鹿さんといった、SaaS事業経験のあるキャピタリストからプロダクトにいただくフィードバックは、解像度が高いので本当にありがたいです。この特徴はまだまだ知られていないので、自分がThinkaのエバンジェリストになりたいと思うほどです。

大山:投資先という前提ではないからこそ、何かをジャッジするスタンスではないアドバイスをいただいている感じがします。そして、結果的にこういうアドバイスをしてもらえるならUBVに出資してもらいたいなと思える、いい関係構築のステップです。

「どうせ投資先の青田買いでしょ」と見られるかもしれませんが、全然そんな感じじゃないということはぜひお伝えしたいです。

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Thinkaを創業期のチームコミュニケーションの場に

――これから始まる3期に向けて、コミュニティをこんな風に使えたらいいという改善点はありますか。

大山:財部さんのお話も聞いて、この場をチームで活用できるといいなと思います。本当の立ち上げのタイミングは業務委託や副業でサポートしてくれる人もいる。週に1~2回でも、そんなメンバーも含めて打ち合わせやブレストができると、同じ空気感を共有して、もっとスピードアップできたかもしれないと思います。

財部:ここに来て作業するだけで、接点が増えて自然に仲良くなれるというのもありますね。月一のセッション以外にもコミュニケーションを増やして、楽に話せるような場を作っていただけるといいですね。

――それはぜひやりたいです。財部さんは本当にThinkaを活用していただいたと思っています。

これから3期のメンバーを募集します。2期はコロナの影響もあってリモートでのセッションも多かったのですが、3期は1期2期のフィードバックをうけてアップデートしていきます。

まさに、財部さん、大山さんのように、ゼロからここで創業していく方を応援していくような場にするというコンセプトです。ぜひ、お二人にも先輩起業家としてフェローの立場でサポートしていただけると嬉しいです。引き続きよろしくお願いします。

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Thinka 3rd Batch募集ページはこちら

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構成:久川 桃子 | UB Ventures エディトリアル・パートナー
2021.06.02

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UB Ventures(UBV)は、サブスクリプション・SaaSスタートアップへの投資に特化したVCです。 SPEEDAやNewsPicks立上げ経験者の「リアルな事業経験」を活かし、国内外のスタートアップの成長を支援しています。