怖くない話

ホラーな実体験を少ないが持っている。

夜道で突然、耳元で野太い男の笑い声を聞いたのがその一つだ。

これは人に伝えても怖くない。
野太い男の笑い声が聞こえたのが言葉にするとなんか面白い。体験した私としてはメチャクチャびびって、自転車に乗っていたのだが咄嗟に全力でブレーキをかけてしまったので転倒しかけたほど驚いたし怖かった。
笑い声が聞こえたシチュエーションも恐ろしく。夜道なのだが、それに遭遇した場所は海と空き地に挟まれた護岸道で周囲は電灯一つ無く本当に真っ暗だった。自転車の灯りや月明かりがなければ自分の手も確認できない程の闇。

そんな場所で私は聞いたのだ。
耳元で発生する野太い男の笑い声を。

勿論周囲には誰もいない。両サイドは海と空き地で見晴らしがよく。電灯の無い暗い夜道と言っても月光で景色の輪郭が朧気ながら見えた。
そんな場所で夜道を一人で行く怖さからアニメの勇壮なOP曲を熱唱し、全力一歩手前で自転車を漕いでいたので耳元で笑い声が聞こえるなど絶対にあり得ないのだが聞こえてしまった。

そして、何事もなかった。

私の心臓は縮み上がり、肝を冷やす不思議な現象が起きたが笑い声の後には本当になんの怪奇現象にも出会うことがなかった。
テンションは異様に下がって心底怯えながらも普通に帰宅できてしまった。

夜道で突然、耳元で野太い男の笑い声を聞いた。

この話はこの一言で終わってしまう。娯楽作品以外で怖いことなど会いたくは無いが、死なず憑かれず呪われずで済んでしまうのなら、もうちょっと不思議な体験をしてみたかったと少し思ってしまう。

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