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日曜日のクルーメイト #0065 Erupt!!

ハロー、クルーメイト! 元気にお過ごしですか?
冲方は先日、久々に対面で飲みながら意見交換をする機会があり、楽しく勉強させて頂きました。
仕事ではリモート大好きの効率重視ですが、やはり、じっくり面と向かって話し、視野を広げる時間も大切ですね。

えー、さて。
今回は噴火!!(Erupt)、という物騒なサブタイトルとなっておりますが、こちらは、最新話『剣樹抄』第16回のネタ。
舞台は日光街道ですが、当時、浅間山がめちゃくちゃ噴火しているのです。

そうしたネタや、取材の様子などを、前回ご紹介できなかった扉絵とともにご紹介してゆきたいと思います。

では、さっそく参りましょう!

『剣樹抄』連載第16回 オール讀物 扉絵

画・遠藤拓人

立ちこめる火煙の中に立つ了助。
騒然とする背景に、静謐とした佇まいや穏やかな眼差しの対比が大変素晴らしい。
口元を覆う布が火煙とともに舞い上がるさまがカッコイイ!上手い!
髪も伸び、旅に出てのちの時間の経過が感じられます。

旅装に蓑をまとい、いまだ旅路にある了助の行く手に待つものは!?

今号のオール讀物は『江戸の夢』と題し、時代歴史ものの特集号となっております。是非ご覧下さい。


さて、今回の『剣樹抄』の冒頭で噴火している浅間山、現代でも地殻変動が見られますが、かつては毎年のように噴火を繰り返す「怒れる山」であったことが記録からわかります。

調べるだに、毎年のごとく火山灰がまき散らされ、川は泥流となり、一帯の人畜田畑は甚大な被害を受けていたわけですから、これは飢饉が発生して当然だ、と薄ら寒い思いに襲われるほど。

現代の浅間山一帯は、地震大国である日本において、ようやく訪れた「平和」の時期を享受しているのだな、と、おびただしい死者の積み重なりの歴史に思いを馳せるのでした。


『剣樹抄』取材 大谷(おおや)編

さて、今回の『剣樹抄』は、日光街道の要所の一つである宇都宮から西に向かったところにある大谷(おおや)が舞台。

江戸時代から、加工が容易な「大谷石」の産地として知られ、現代でも様々な建材や商品に用いられており、採石やそれにまつわる施設が豊富にあって充実の取材となりました。

まずは大谷資料館へ。
実際に採石場に入れるだけでなく、旧い道具も陳列されており、人の手で「石を採る」ということがどういうことか、とっくり見て取ることができます。

また、地下深く掘り進められた岩窟は、びっくりするくらい様々な映画のロケ地にもなっているほか、アート展示もあり、別の意味でも見応え抜群。

また、映画の撮影時に打ち込んだ杭やフックがそのまま残されているなど、原状復帰しないでいいんかいと、ロケ地として自由すぎる開放ぶりにも驚かされたり。

位置的には、街道と川が重なる辺りの、東側。
この南北に、採石場や寺院が点在しており、陸運と船運が交わる一帯を中心に、主要な施設が築かれていったのだろうか、と想像されます。

下の写真は、大谷資料館の岩窟の内部。
ひんやりしていて天然のワインクーラーとして使われている一角も。

ツルハシ一本で石を切り取っていったら別の地形が生まれるわけですから、人の力というものの途方もなさを思い知らされます。
機械化されたとしても重労働には変わりなく、感嘆するほかなし。

切れ目ごとに、石をブロック状に切り抜いていったことがわかります。
結果的に大変アーティスティックな壁模様に。

ライティングされている一角にて。
「何か中二っぽいことを」しろと言われたので、一度は正義に敗れたものの、そのせいでかえって覚醒せんとしているヴィラン、みたいなポーズを。
取材観光で疲れないこつは、適度に遊ぶことにあり。

さておき。お次は資料館の北にある、カネホン採石場へ。

立岩街道を北に向かったところに入り口が。
見学はツアー形式になっており、あらかじめ電話で確認と予約をとるべし。
冲方一行は、ふらっと立ち寄ったため、予約してからまた来るはめに。


大谷石の竃。この独特の風味が良いです。
ピザを焼くツアーも。やりたかった。

石自体に脱臭効果もあることから、キッチンやトイレの建材にも良いとか。


こちらは岩窟ではなく、山を抉り、切り開くように掘られた採石場となっております。
地面がなくなってる! と驚愕。

採掘したあとに雨水が溜まるため、せっせと排水する必要が。
放っておくと湖が生まれるというのですから、人が年月をかけて何かをやり始めると、こうして地形をも変貌させる力を発揮するわけです。

なお、ここも、ロケ地として使われたとか。そのときのセットの足場が普通に残っています。原状復帰とは。


切り出されたブロックの数々を前に呆然。

綺麗に形を整えて出荷されるため、大量の石くずが積もっていくので、それもまた運び出さねばなりません。なんという重労働。

これを機械ではなくツルハシだけでやっていた時代は、道具である鉄を鍛えなおすための鍛冶場も必要だったとか。
水と石と、火と鉄と、神話的かつ原始的なイメージを刺激されました。

山を丸ごと掘っていくというマイクラでも躊躇してしまう大仕事の跡地を、しっかり全身で味わってのちは、南の大谷寺へ。

南北に一直線に進んで取材すれば良かったものを、諸々の都合で行ったり来たりになってしまいました。


道路を挟んで、北側に寺院が、南方に公園があります。
こちらは公園にある像。
でかい! これまたものすごい石掘りの技ですが、作られた時代がずっと後のため、『剣樹抄』には登場させられませんでした。

こちらが大谷寺
岩の中から現れたかと思うような大迫力の岩窟寺院です。

本尊の「岩壁に掘られた千手観音」は撮影禁止のため、脳内に焼き付けてきましたが、ものすごい存在感でした。

ただ、もともとは綺麗に彩色されていたとか。
現代にいたるまで多くの歴史遺産が火災などで損耗しているのが現実であるため、執筆時には「元の姿」を想像しながら書くことになります。

かくして。
驚くべき名所を巡りながらの『剣樹抄』日光街道編も、いよいよ佳境!

了助と光國、それぞれの戦いの行方を、どうぞ見届けて下さいますようお願い申し上げます。

コメント・トーク

さて、ここからはクルーメイトのコメント紹介!

前回のお題は、「あなたのこの夏の映画」でした!
皆様が、絶対に見るぞと心待ちにしているもの、これは早くも思い出になったというものなど、ぜひ冲方の映画ライフの参考にさせて頂きたいと思います。

森人さんからのコメントです!

『戦場のピアニスト』のポランスキー監督が、ドレフュス事件に挑む! 熱い! 
ドレフュス事件とは、フランスの反ユダヤ主義によって起こった、大規模なスパイ冤罪事件である、くらいの知識しかないため、映画をきっかけに学べそう。ありがとうございます!

再び森人さんからのコメントです!

どちらも楽しむべしです。
なお冲方はすでに観て参りましたよ『シン・ウルトラマン』!

幼少期を海外で過ごしたため、日本の特撮にまったく疎い冲方でも、ウルトラマンは子どもの頃に何話か観たことがあり、大変興味深く拝見しました。
キャストを知らないままでしたので、ドラマ『剣樹抄』のあの方が出てきたときは、なぜか妙に嬉しい気分に。

そのうち個人の創作noteで、しっかり分析したいと思わされる展開の早さ、大いに楽しめました。

シシオリシンシさんからのコメントです!

おう、吉田恵輔監督ご自身が脚本まで。
ラブ&ポップと見せてからの失墜と狂乱劇、ヒリヒリする悪い予感を楽しむならこれ! という夏の一本になることでしょう。

これまた、展開のプロットをしっかり学びたいところ。ありがとうございます!

てらにしさんからのコメントです!

スクリーンで「浴び」る!上手い!そのフレーズだけで、どう楽しめばいいか明白。
スタート・アイディアが素晴らしいですね。それをどう物語にし、そしてエンタメに仕上げたか、興味津々です。

また、配信との時間差が、普通とは逆なのが驚き。ネフリで観て、映画館で楽しもう、という流れ。
これがどう今後の公開手法に影響を与えるのかも注目したいところ。

再び、てらにしさんのコメントです!

確かに。音響設備が良くなるにつれ、どんな映像も「音でも観る作品」の面が強くなっている分、上映設備や技術が相応のものでないと、異様にしんどい気持ちにさせられますね。いずれ優秀なAIが映写を担うことになるかもしれません。
ともあれ無事に浄化されて何よりです。

kei.さんからのコメントです!

イエス! 『トップガン』は冲方も今夏の一本になる予感がしております。
レビューも軒並み高評価で、旧作の興奮を上回る体験ができそう。

また、映画館で見たいと思わせるシーンの一つは、やはり空戦でありましょう。巨大なものが猛スピードで飛行するシーンに没入するひとときを今から楽しみにしたいところ。ご紹介ありがとうございます!

今日こそ明日から(とんかつ)さんからのコメントです!

それな! と思わず言ってしまうやつ! 何が必殺なのかも分からないけれども、確かに必殺の映画に違いありません。

冲方も初めてPVを観たときは、抱腹絶倒とはこれかとのたうち回りました。「大好きなものをぎゅうぎゅうに詰め込むこと」の大事さを改めて教えてくれた意義深い作品の一つです。
久々に思い出しました。ありがとうございます!

リンクありがとうございます。
そう、それなのです。
それこそが必殺なのです。

みたび、てらにしさんのコメントです!

冲方はサイレント映画をほとんど体験したことがないので、大変羨ましい。
頂いたコメントを拝見して、演劇とも異なる映像と即興のコラボって、実はまだまだ追求できるものなのでは、と思わされました。
舞台でプロジェクション・マッピングが用いられる昨今、サイレントやトーキーが新たなヒントになるのかも?
良い視点をありがとうございます!

あとがき

今回は、土曜日に『マルドゥック・アノニマス』の連載原稿を体力が尽きるまでやってしまっため、回復に時間を取られての投稿となりました。
記事を終わらせ次第、速やかに原稿執筆に戻ります。

それにしても、気づけば2022年も初夏。
世の様々な問題も、解決の道は遠くとも、少しずつ落ち着くべきところは落ち着いてきたのを感じます。
人々の常識の土台を司る、「安心」や「平和」といった言葉の意味に、今後どのような変化が現れるか、静観して参りたいところ。

皆様におかれましては、ぜひ穏やかで平らかな日曜日をお送り下さい!
冲方丁でした。

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