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日曜日のクルーメイト #0057 April Fool!!

つい先日、ようやく世界中に安全と平和が訪れましたね。
まさに「聖フランシスコの平和への祈り」のように、憎しみのある所に愛が置かれ、侮辱のある所に許しが置かれ、分断のある所に和合が置かれ、誤りのある所に真実が置かれ、疑いのある所に信頼が置かれ、絶望のある所に希望が置かれ、そして闇のある所に光が置かれたことで、人々の悲しみのある所に喜びが置かれることとなりました。
世界の平和が末永く続き、慰められるよりも慰めること、理解されるよりも理解すること、愛されるよりも愛すること、そして与えることで受け取ることが、人々のごく自然な振る舞いとなったことが嬉しくてなりません。

これらは、「嘘」です。
今はまだ。
いつか少しずつ、これらが「本当」になる日が来る。
ただそう願っているというのとは、ちょっと違います。おのれの努めの向こう側に、これらが必ず訪れることを、今はまだ嘘である多くのことを、積極的に信じたいと思うのです。
ちょっとしたことで、どうせ現実はどんどんひどくなると信じ、他者に期待することをやめ、自分のことだけで心がいっぱいになってしまわないように。

人はフィクションに依って生きるもの。
「今日何をするか」という思案ですら、実は架空の物語をひねり出しているに過ぎず、現実にどうなるかは誰にもわかりません。
現実では、予想もつかない不幸に見舞われることもあれば、驚くほど何もかも上手くいくこともあるでしょう。
人々が、そうした出来事について、良いことか悪いことかを判断できるのも、あらかじめ様々なフィクションを心に備えているからです。
フィクションがなければ、予想や期待、指針や展望、さらには様々な価値観を持つことができず、その場その場の状況に反応するだけで、何の意義があるのかもわからないまま生活するしかなくなります。

人は常に無数のフィクションの力を、帆に受ける風のように受け止めながら、長く続く複雑な航路を進んでゆくもの。
荒れ野たる現実を切り拓くべく、最善のフィクションをもって生きようと思う…今年は、そんなエイプリル・フールでした。

というわけで。
今日も、未来にこそ素晴らしいものがあると信じて、皆様とともに元気に参りたいと思います!

今週の宣伝 各誌連載


『剣樹抄』第16回 オール讀物

こちら、本来ですと五月号での掲載。ですが、その次の六月号で、時代物を特集するということもあり、一ヶ月後ろにずれて掲載したい、というご連絡を編集部から受けました。
特に断る理由もありませんし、そうそうたる作家陣の中に加えて頂けるのは大変光栄ですので、喜んで掲載号の変更を承知しました。

現状、あと半年ほどで、17回・18回にて物語の終盤を迎えつつ、第三巻の原稿がまとまる見込みです。
うっかり1回くらい増やしてもらえないものかと思っているのですが、オール讀物さんは書誌の中で、掲載枚数や回数がめちゃ厳密。

まあ本来、文芸誌はどこもそうだったのですがね。
けれども文芸誌の電子化が流行したことで、過不足なく規定枚数ぴったりに書き上げなくてよくなり、正直すっごい楽。
クォリティという面でも、枚数の自由度が高ければ、当然、様々な選択肢を考慮できるもの。

他方、決まった枚数に物語を収めることで、「そろそろ終わるな」「ここから展開が変わるはず」など、読者がより先読みしやすい、ユーザーフレンドリーな作品になるのも事実。

どちらの良さも発揮できるよう、いっそう筆力を高め、連載を進めて参りますので、ぜひよろしくお願いします!

その他の連載はこちら!
『骨灰』野性時代 KADOKAWA
『マイ・リトル・ジェダイ』別冊文藝春秋
『マルドゥック・アノニマス』SFマガジン

各誌、掲載され次第、扉絵など、ご紹介したいと思います。
『骨灰』と『マイ・リトル・ジェダイ』の試し読みはこちら。


みなさまと作る、お蔵ストック企画!

さて!
クルーメイトの様々なアイディア、ありがとうございました!
下記に、まとめのためのページを用意し、クルーメイトの反応に従い、つどつど加筆修正することで、企画を豊かに構築して参りたいと思います。

先週のお題は、「主人公を通して、どんな未来を見たいか?」でした。
さっそくクルーメイトのコメントを拝見して参りましょう。

森人さんからのコメントです!
そう。SFで重要なのは、現代と何が変わり、そして何が変わらなかったか、なのです。
人間の社会では、時代の変化についていけず変わらないものは、どんどん消えてなくなってしまいます。風景ですら変わりますから。

一方で、人間は大昔の物品を保存し、古代の儀式や習慣を継承することもありますね。
主人公の眠りを見守ることで報酬を得続けている「一族」や「会社」あるいは「公的機関」があってもおかしくないはず。
もし主人公の「旅」が宇宙開発のように半ば公的なものであれば、一企業ではなく国家的な事業の一つになるかも。

一族にせよ企業や国家にせよ、彼らの都合で、主人公を守る務めが放棄されてしまうこともあるでしょう。

これは物語の縦軸を作る上で重要な設定。
ぜひ活かしたいと思います!

薔薇肉船舶さんからのコメントです!

うおお、これは素晴らしい大展開ですよ! こういうのは必須ですね!
五万年分の浦島太郞を経験しなくてはならず、いつ目覚めても社会的な孤立を味合わねばならない主人公への、時を超えた支援。
この万年単位での大伏線回収、ぜひやりたいですね。

あと、クローン帝国は、スター・ウォーズ大好き冲方に刺さります。素晴らしい。クローンなのに全員性格が違うし、疑似家族的な関係が築かれていくというのもつぼ。
冲方もテンション上がりまくりです。ありがとうございます!

再び森人さんからのコメントです!

ネフリで見られる!やったー。
さておき、世の中、アンドロイドともロボットともレプリカントとも言わず、AI一択ですね。ロボットを動かすのがAIなら、主体はAIだろうということなのでしょう。
そういえばカズオ・イシグロの『おひさまとクララ』を読まねばと思いながら忙しさにかまけて積んだままに……教えて頂いたこのアニメを見ながら読むとしましょう。

黒井真さんからのコメントです!

大満開!良いですねえ。これは癒されてしまうついでに一杯やりたくなって西行法師のごとく入滅もとい酔いつぶれそう!ありがとうございます!

五万年の物差しからすると、シンギュラリティはかなり直近で起こりそう。
AIと人間の関係については百花斉放といった趣で緒論多数のため、地域によっても微妙に異なりそう。
また、「うちは、ぶっちゃけこうだったよ」と決着したかに見えて、長く余波が続く問題になるでしょう。
何しろ知性の進化は果てしないため、現代のAIが、未来のネオAIのシンギュラリティを迎えるなんてこともあるかもしれません。

再び薔薇肉船舶さんからのコメントです!

お互いテンションアップして参りましょう!
そう、進化するのは人間とは限りません。
オスを栄養源とするメスは、生物界では珍しくなく、知性を持ったアンコウのオスが「オスの生存権」を訴えるアンコウ・ジェンダー論が勃発しているかも。
他方で、オス同士の争いで、敵対したオスの子ども食べてしまう動物もいますし、ものすごい社会が生まれていそう。

そういえば『火の鳥』ではナメクジが進化して、最後はハルマゲドン戦争を起こして滅んでましたね。
両性具有のナメクジはどんなジェンダー感を持つのでしょうか。

新条拓那さんからのコメントです!

公平と平等は決して相容れないという、人類最先端のテーマ。これは本当に難しいですが、世界観構築にはとても有用。

不公平だけど平等な社会は、まさにマッドマックスです。みんな同じ状況であり、水も健康も、確保した者の一人勝ちです。競争のためなら何でも許されます。倫理観も不要です。他者に言うことを聞かせられるくらい強くなればいいんです。
こういう世界はとてもシンプルな分、容赦なく主人公を追い立てるでしょう。目覚めたら「血袋」扱いされているかも。ぜひ描いてみたい!

逆に、不平等だけど公平な社会は、階級管理社会のデストピアと化すでしょう。
生まれたときから一生が決定してしまう社会では、遠い過去から来た主人公は「どの階級にも当てはまらない」ため、さぞ社会的混乱を巻き起こすことでしょう。
どちらも良いアプローチになりそう!

再び新条拓那さんからのコメントです!

そうなのです。ちょうど人類が世界に出かけていった頃です。
その後、気候変動などで、どうやら何度か滅亡しかけたようですが、よく生き残ってくれたものです。

『最初にして最後の人類』という映画で、何段階かの進化を経て、もはや初期の人類とは異なる容貌になった人類について語られます。
果たして五万年でどこまで変わるかは、自然な進化に従う限り、あんまり変わらないかもしれません。
少なくとも過去五万年間で、人間の手足が増えたり、新たな感覚器官が発達して頭蓋骨の形が変わったりといったことは、なかったようですから。
テクノロジーによる進化が加わると、だいぶ形状も意識も、認識のしかたも違う人類が生まれそう。


様々なアイディアありがとうございます!
世界設定に関しては、複雑多岐なものを描く余地が大いにあるため、また改めて問い方を変えて、募集するかもしれません。

さてさて、こうして世界のビジョンがぼんやり浮かび上がってきたのなら、定めねばならないのが、主人公。
今週は、最も重要な設定、すなわち「主人公の名前」を決めるべく、投票して頂こうと思います。

実はこの作品のタイトル、『さよなら、〇〇』にしたいと思っておりまして、『〇〇』に主人公の名前を入れたいのです。
五万年分のさよならを経て、どこに辿り着き、誰と再会するのか……といったテーマを端的にあらわすタイトルにしたいのです。

そしてさらに実は、『さよなら、ブラック』というタイトルを考えておりました。
「ブラック」は、本名ではなく、主人公が眠るカプセルの型番の「BLK~」が名前であると勘違いされたことからついた呼び名。
主人公を本名で呼んでくれる相手がどんどんいなくなるという孤独感の仕掛けにもしたいと思っていたのです。

なぜブラックがいいと思ったか? 完全に直感です。あとから意味づけがわいて出てくるやつです。

そしてこの、自発的な直感でのネーミングの他に、より良い名前はないだろうかと、あえてクルーメイトに尋ねたいのです。
主人公の名前は、自発の最たるものですから、それに他発をぶつけて頂いてしまうのが、この企画の醍醐味だと思っております。

とはいえ「名前募集」ということにすると、あまりにバラバラになってしまって、結局は冲方が決めることになりますので、いくつかの名前の候補を提示し、そこから選んで頂きたいと思います。

また、投票には「その他」の項目も入れますので、「この名前がふさわしい!」というアイディアがありましたら、ぜひ投票ツイートに返信して下さい。

さて、下記が名前(主人公の作中での主な呼ばれ名)の候補です。

(1)ブラック
主人公の通称となる名前。あらゆる色が混ざると究極的には黒になる、どんな社会においても盲点となる存在、と、さっそく意味づけがわいて出てきております。

(2)バード
探検家のリチャード・バードにちなんで。空を渡る小さな鳥バードや、吟遊詩人バードのイメージもありますね。

(3)クリストファー
旅人を守護する聖人クリストファーです。大航海時代の先駆けとなったクリストファー・コロンブスにもちなんでおります。

(4)マルコ
みなさんご存じ、マルコ・ポール。東西を渡る旅人の代表格にちなみつつ、『母をたずねて三千里』のマルコにもちなんでおります。

(5)ダンテ
みなさんご存じ、『神曲』で恋人と再開するため、地獄・煉獄・天国を巡る者の名であり、その書き手本人の名です。

(6)その他
ぜひ、この男はこのような呼ばれ方がいい! というアイディアがありましたら、ご教示下さい。

投票ツイートは、連載の〆切の都合上、本日中には投稿したいと思います!
ぜひご参加下さい!


また、当記事や作品の感想、要望、リクエスト、飯テロなど、ぜひ、

#日曜日のクルーメイト

こちらのハッシュタグにてツイートして頂くか、当記事のコメント欄に書き込んで頂けましたら幸いです!

あとがき

長らく、不調の晩冬・初春を過ごしておりましたが、おかげさまで、ようやく体調も回復し、ついで気力も戻って参りました。

作家としては、こうした不調期に、思うこと、感じること、考えてしまうことも、後日の執筆の糧となるもの。
喉元過ぎれば熱さを忘れるのではなく、人が普遍的に思い、感じ、考えることがらを、常に熱く追い求め、そして冷静に書きつづってゆきたい次第。

どうか、良い日曜日をお送り下さい!
冲方丁でした。

おまけ 今週の飯テロ

ふるさと納税の佐賀牛ステーキ肉が届き、快気祝いに焼き上げました。

まず低温調理です。野菜はがんがん焼きますが、ステーキ肉は最低熱で炙り、じっわじっわ時間をかけて炙ります。

ひととおり熱が通ったところで、だしぬけに最大火力で表面を焼き、糖とアミノ酸を結合させるメイラード反応を誘発。

ごく短時間、高温で焼いたあとは、アルミホイルに包んで「余熱焼き」に。
これまた、じっわじっわ待ちます。
肉の香りを楽しみつつ、一杯二杯と酒が進みます。

美味しく焼けましたー!
ニンニクの薄切りも添え、塩胡椒、あるいは醤油とワサビなどで、一切れずつありがたく頂きます。

美味!

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