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俺は『胎界主』を読み終え人類の平成が終わった。

『胎界主』を第二部まで読み終わった。これで我々は平成という時代に一区切りをつけたわけだ。人類、世界全体が新たな令和へ向けて歩みを進める準備ができたのだ。

<読み終えた男の表情>

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「胎界主は生体金庫まで読めというのが定石」という格言は古代ギリシア文明から受け継がれているらしい。まさにその通りで俺は《彼ら》と共に歩みを進めながら噛みつくようにページをめくった。

《彼ら》とは? それは本来敵陣チームであるはずの「レイスとヴァンパイアが率いる闇の骸者軍団」のことである。

強大な《生体金庫》を目の前にして軽々しく全滅する骸者軍団。それまでの前振り(十数話分の暗躍と数万人の強大な軍団)が非常によく効いている。さんざん強大さと無慈悲さをアピールした上でページをめくったら全滅している。ここは生体金庫。真の男でも必然的に死んでいく戦場だ。

正直、第二部はスローペースだった。

三人組のワチャワチャで物語の推力は担保されているものの、稀男らはモンスターハンターとダンジョンアタックを繰り返すMMO状態でありスナック感覚で全滅を繰り返す、このレベルで出会ってはいけないボスと遭遇する、空の宝箱で一喜一憂する、恋が芽生えるといった展開の背景で敵陣ピュア・レイス・ハッグらの色々が繰り広げられるゆる~~い殺伐展開が続いていた。(基本的に第二部は胃が痛い)

それがどうだ。≪生体金庫≫が出現し、一気にこれらの伏線や前振り(と思われたものが)が蹂躙される。作者は真の男に試練を与えることがよほどお好きらしい。真の男に対する前振りが非常によく効いている。俺は思わず唸った。90度のスピリタスコロナをショットで空け不眠不休で『胎界主』と向き合うことを決意した。

デカトンがデュラハンがヴァンパイアの人が骸者の首魁が自ら先頭で体を張る凄味はどうだ。いつも余裕しゃくしゃくで「自らの死を認めなければ死なない」超高位存在レイスが体液という体液と迸らせ泣きじゃくりながら戦う姿に胸を撃たれないものはいるのか。次々と上官が倒れた下級士官が奮い立つ瞬間には戦争ドラマの風格が漂う。

懐かしのあいつらが予想外の展開で終結する。アベンジャーズアッセンブルでありロードオブザイバツvsデスドレインvsダークニンジャな展開に心奮えないものはいるのか。

ロジオン・"リュージ"・ブロコヴィチ先生の檄文はこちら。

もう一つの山場は『胎界主ピュア』と呼ばれる第二部の最終シークエンスだ。様々な丁々発止、10年分引っ張ってきた伏線に読者や作者すらも騙しかねない裏の裏を取る舌戦が繰り広げられる。興奮した。《生体金庫》編でハブられていた「稀男とピュア」という二人の主役が激突し協調し結び付けられていく。これはもしかして交配なのではないか。それくらい接近して二重らせんを描き交差していく。

最終的にある決着がつき「象る力」が世界にもたらされる。

「かたどる」つまり創作そのものであり想像力の世界だ。世界を認知して象り出力する。創作論でありメタ認知論でもある。胎界主という作品は、特殊フォーマットで連載を続けた至極の胎界であることを意識せざるを得ない。

物語はさらに禁忌へ踏み込んでいく。

「神が意識をしないキャラクターに生命は宿るのか」「シミュレーテッドリアリティ」「世界五分前仮説」「幼い主観主義」「フィクションは嘘だからそんなものを読むのは幼稚」「現実と認識の主従逆転」「愚かで純粋な願いは美しい」「より大きな運ぶ力」「ウサギと亀」「アリとキリギリス」「運命の奴隷」「金のガチョウ」

一言では言い尽くせない。長い戦いとなろう。この展開は何度も繰り返して咀嚼する必要がある。

やがて物語は終結し、いくつもの哀しみと喜びに満ちた行進(パレード)が行われる。

「彼ら」の物語はまだ続くのだろう。

その物語は絶対に面白い。次に「彼ら」出会う日を楽しみにしている。小田原にて。

#胎界主 #WEB漫画 #真の男 #インターネット

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