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Sa・Gaシリーズの最終進化形「サガ・スカーレットグレイス」(後)

後編です。

いよいよ最新作「サガ・スカーレットグレイス(緋色の野望)」のインプレッションです。そんなわけで半生をかけて愛憎を注ぎ込んできたシリーズの最新作なので楽しみにしていたんですよ私は。

サガシリーズ総評の前編はこちら。


このレビューはタリア編の第一章を完了して自由行動を取れるようになった時点で書いています。ストーリー展開やクリア後や周回を重ねることで評価が変わる可能性があります。

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「サガ・スカーレットグレイス 緋色の野望」

評価: (6/10点)OKAY [オススメだけど無理強いはしない]

サガシリーズの特徴をピーキーなまでに尖らせた意欲作でシリーズ恒例の個性的なセリフの応酬やイベント選択肢等で味わいのあるシナリオが楽しめる。

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特徴的な戦闘システムは慣れるまでマインドシーカーよりマシな程度だけど戦術的な面白さを理解すると評価が裏返るので奥が深い。圧倒的なRPG必須要素の省略ぶりに驚いたり「サガらしさ」を手軽に味わってほしい。

戦闘への比重が大きいのでドラマチックなシナリオやキャラクター同士の掛け合いを軽く味わいたい(おもてなし希望)のプレイヤーにはオススメしにくいかも。自分から楽しみを見出すストイックさが肝要だ。

GOODポイント
極端に要素を省略した快適なゲームシステム
歯ごたえのある戦闘を楽しめる
シリーズの重みを感じる味のあるイベント
ヒト癖あるキャラクターが大集合

BADポイント
戦闘偏重のゲームプレイ
理不尽な戦闘難易度
理不尽なイベント
理不尽なキャラクター

それでは一つずつ解説していきます。

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GOODポイント

極端に要素を省略した快適なゲームシステム

冒険の醍醐味である街歩きやダンジョンを省略をしてフィールドマップ上で全てのイベントを完結させようという極端なまでの省略を行っている。過去シリーズだと一番近いのはアンリミテッドサガかな。移動は比較的自由で地図をキャラクターが歩いて移動する画面からはシュールさが漂う。インベントリについても金銭のやりとりを排除。武器や防具は仲間が加入した時に入手という感じで徹底している。

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「ダンジョンの入口から出口は一本道だけど寄り道をすれば宝箱を手に入れられる」みたいなジレンマとは無縁でストレスフリーだ。

歯ごたえのある戦闘を楽しめる

戦闘難易度はかなり高いです。敵は強く固有の技を持ちカウンターを構えている。公式サイドの発言として「各戦闘ごとに1人だけ生き残るくらい」というバランスが設定されており消耗が激しいです。

チームの行動力(BP)はパーティで共有されており、1ターンに行動できるのはBPの範囲内にとどまります。最大BPはターンによって増えていくのでこのため序盤から全力で殺しに行く展開にはなりにくく、後半になるほど大人数が大技を繰り出す派手な画面が増えてきます。序盤は差し合い中盤以降に勝負所を探っていくわけです。

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サガスカのタイムラインバトルで特徴的なのは「あらかじめ敵の行動がすべてわかっている」ということです。つまり1ターンごとに詰め将棋が開始されます。対戦相手の行動がすべて読めているのであれば簡単でしょ?とはいかないのがこのゲームで行動内容が伏せられてカウンターを構える「リザーブ技」も存在します。確定要素と未確定要素の読みあいが戦闘の醍醐味です。

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タイムラインの読み方と戦術の一例

殺される前に殺すんだ!
敵モンスターが大技を繰り出そうとしているので、必殺技を繰り出す前に殺す!
めちゃくちゃ怒ってるのでカウンターだ!
敵ボスの怒りが俺に向いているので冷静にかすみ青眼の構えでカウンターだ!
行動される前に状態異常だ!
敵盗賊が呪文を唱えようとしている。先行して眠らせてしまおう。
カウンターには無視だ!
敵の軍団が全員でカウンターストライクを構えて攻めてこないので、悠々と回復呪文を詠唱だ。
リザーブ技でインタラプトだ!
敵モンスターが突き技を構えているのでそれにインタラプト(割り込み)打撃を加える。ひるんだところへ斧使いが一撃を加えてカイシャクし敵隊列が乱れたところを味方パーティーによる連携攻撃を加える。
死んだ味方を踏み台に連携攻撃だ!
敵魔術師が全体攻撃を使おうとしている。壁役が死にそうになっているので全体攻撃の矢面に立ってもらって散ってもらおう。「グワーッ!中身が出るぅ!」トマトは死んだがトマトを深追いした魔術師を囲んで棒で殴れ!「許さんぞ!これはトマトの分!」
カウンターのカウンターでスタック処理だ!
敵ウェアウルフが斬撃に対するカウンターパンチを構えているが構わずに剣で攻撃。ウェアウルフの爪撃カウンターが発動するが、それに対して味方が爪撃をインタラプトして背後からの斧の一撃でウェアウルフを葬り一気呵成に連携攻撃だ。

シリーズの重みを感じる味のあるイベント

作品全体を貫くストーリーはよくわかんないんですけど、全国各地で巻き起こるイベントのシナリオは過去作のプレイヤーがニヤリとするようなユニークな展開があります。北国でひたすらマラソンすることで手に入る剣、塔を騎士団を包囲していると思ったら案の定でてくるイフリート、まったく余韻を残さないサブエピ、親切心から降りかかる災厄、さよならなのだ、私が町長です。これはサガが好きな人が作ったサガだな。間違いない。

ヒト癖あるキャラクターが大集合

揚げパン屋をはじめとした個性豊かな地味なキャラクターが大集合。ゆるキャラオリンピックに見たことのないご当地キャラがたくさん出てくるのを想像してもらえばわかりやすいんですが、基本的に仲間キャラクターは各地方のモブキャラに毛が生えたような存在なので個性が薄い。

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それを補って余りあるのが緋色の野望から追加されたキャラクターボイスだ。自分をトマトの妖精だと勘違いしている大男、ロボ娘、おねえ、棒読み、メタ発現、ナイトハルト閣下亜種、揚げパン屋、威勢の良いチビ娘、揚げパン屋、海賊風 etcetc。なんか雑なキャラ付けをされたボイスが大量収録されており、様々なタイミングで発せられるそれは仲間同士の関係性や意外な趣味の発見につながる。仲間に愛着がわくこと間違いなしだ。

イチ推しは村娘っぽいクミさん。

あと謎の存在感を発揮する揚げパン屋。なんなんだこいつは。

BADポイント

戦闘偏重のゲームプレイ

大半のイベントをフィールド画面上で済ませてしまう仕様上、世界各地の建物の作りこみや文化史や下水道を期待するプレイヤーにとっては物足りないかもしれない。とにかく戦闘戦闘、移動して戦闘、戦闘して移動して戦闘、ちょっと偏り過ぎじゃないかという評価も仕方がない感じだ。

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ステージ制のソーシャルスマホRPGのように一本道に順番に次から次へステージをクリアしていくわけではなくフリーシナリオRPGの最後の矜持を感じる。でも、武器の手に入りにくさや仲間の量産ぶりを考えると、元々はソーシャルスマホRPGとして開発されたのではないかとすら思える。(課金ガチャしないと揚げパン屋とかで戦わないといけなくなるやつ)実際スマホ/タブレット版も発売された。

理不尽な戦闘難易度

ただでさえ多い戦闘がそれぞれ死闘なのでゲームプレイがつらいプレイヤーも多いと思う。私も序盤はそうでした。全滅するたびに強くなったり、システム側での難易度調整が可能だったり、戦闘イベントがある場合は事前に表示される等、製作側の配慮も感じるけど、やはり理不尽さを感じる難易度だと思います。

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戦闘を楽にするコツは、とにかく一か所で戦闘を繰り返して必勝パターンを生み出すこと。今作は戦闘回数を重ねても敵が強くなりすぎたり時限イベントが失われるケースは少ないので、とにかくレベル上げをしてみよう。

理不尽なイベント

イベント進行は基本的にフィールドマップ上の紙芝居で進行(ニンジャスレイヤー:フロムアニメイシヨン準拠)さらに例によってイベントをこなしてもキャラクターのリアクションが薄い。(あれ、これでおわり?)という例のヤツが多数なのでシナリオのエモさやホラー度はプレイヤー側から汲み取ってあげる必要がある。

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愛する二人を接近させても特にリアクションがあるわけではなく、頼まれた水を運び込んでもリアクションがない。赤ん坊はどうするのが正解だったんだろう。イベントに意味を求めてはいけないんだろうか。(それでも「願いの木」みたいな笑えるやつもあるよ)

また、イベントフラグの謎やメインシナリオとサブシナリオが重複した場合の処理なども相変わらず謎が多い。もう次のエリア進んでいいの? やめたほうがいいの? 的な迷いが生じる。

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理不尽なキャラクター

タリアさん(陶芸家)がこわい。
ちょっと焼き物に歪みがでると「お前のせいか、殺す!」
歪みの原因がわかると「なるほど、落とし前で殺す!」
人質交換で「人質さえ取り返せばこっちのもんよ、殺す!」
おばさんと呼ばれたら「私は怒ってないわよ、殺す!」

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揚げパン屋もこわい。何の説明もなく揚げパン屋として冒険者チームに加わり割烹着ハンマーで殴り殺す。なんなんだこいつは。

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まとめ

昨今のNintendo Switchのインディーズ作品の充実ぶりは驚くべき勢いでサガスカ本編を購入する金額があれば、最新作が3本くらい買えてしまいます。(「返校」とか)そのうえでプレイする意義があるかどうかをよく考えてみて下さい。

ありますね。サガの最新作だもんね。

おわります。

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おまけ:オススメインディーズゲームコーナー。

超怖くて超大好き。

豊富な労災が撮影できるパーティゲーム。

おわります。

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