「壁画祖母の帰郷」
「ジュンちゃん、わたしはもうこういうのは受け付けなくてねえ。食べてくれないかい?」
そう申し訳なさそうにもやし炒めの貴重なお肉を分けてくれた祖母。我が家は貧しく皆ひもじい思いをしていたというのに……。
そんな祖母は目に見えて痩せていった。寝たきりの布団の膨らみがどんどん薄くなり表情もフラットに近づいていく。
祖母の最期を察した私は一人で泣く時間が増えた。かわいそうな祖母、誰よりも優しかった祖母。思い出が走馬灯となって駆け巡る。
そして祖母は完全に平面化した。
初めはシーツと一体化しているところを発見されたのだが母はそれほど驚いていないようだ。祖母も慣れたもので壁にゆっくりと移り壁画として私の部屋で共に暮らすようになった。やっぱり主婦の順応性はすごい。
壁画祖母は目を離した隙に少しずつ動く。私が寝ているときは大胆に移動できるようで深夜に天井から見下ろされていた事もある。心臓に悪いよ。
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