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『恋は雨上がりのように』(2018年の映画)

映画『恋は雨上がりのように』を見た。それが二週間くらい前の大寒波がやってきた時期で、それから感想文を上手いこと書けずに困っている。この日記は、たぶん「面白いから見てきて」という内容にしかならないので、これから書くのはその話なんだけど何と書けばよいのか戸惑っているんだ。

「45歳バツイチファミレス店長と女子高生アルバイトの禁断のラブロマンス」という援交パッケージのため敬遠していた作品ではあるが、タイムライン内の圧もあり「邦画リハビリ」の一環として体当たりし……これが本当に良い作品だった。

ちょっと雨宿りの物語

この物語は恋愛映画ではなくて青春映画なんだと思う。束の間、羽を休める白鳥と空の飛び方を忘れたアヒルの話かもしれない。何かを中断(サスペンド)してしまった男女がそれぞれの大切なものに正面から取り組む再起のワンスアゲイン、雨が上がるまで物語に仕上がっている。

小気味よく生き生きとアルバイトを続けるあきら(小松奈々)の描写が続く前半は質が高く好印象でお仕事ムービーとしてもちょっとしたものに仕上がっている。

フード描写にも着目したい。まかないは受け取るがデザートは拒否。精神的ショックを受けると当てつけのようにどうでもいい男のサンドイッチを泣きながら食う等だ。見逃すな。

あきらめたおっさんの再起へ

中盤以降はあきらの思いを受けた近藤店長(大泉洋)の描写がクローズアップされるようになる。仕事場に色恋沙汰(ToLOVEる)を持ち込まれる困惑や年齢差による逮捕への恐怖、職場の悪影響、世間の目、バツイチに恋愛感情は呪い、大人になりきれないことへの自己嫌悪、おっさんはいつだって加害者だ。

ちょっと情けないバツイチおっさんながら文学に真剣であり、開いたままの原稿用紙が出迎える自宅はサスペンド感が満載だ。近藤店長が手放せないたばこ「ハイライト(日の当たる場所)」からは昭和の匂いがする。彼の創作文学への情熱、感受性、デートで図書館へ訪れた際にあきらへ語る「本との出会い」そして「友情の回復」についての語りは本作の白眉になっていると思う。

このように丁寧にあきらが恋心を描くまでの道筋を追体験できる作りなのでおっさん諸氏も安心して感情ドライブに身をゆだねてほしい。

価値観衝突の波紋

暴力パルプスリンガーとは異世界の作品に思われるかもしれないが、本作のテーマは価値観の衝突だ。意見の相違で叫ぶような作品ではなく、出会いが引き起こす「波紋」を丁寧に描いている。

恋心を知った時の周囲の反応、逃避ではないかという邪推、社会的NGというお叱り、そんなものより勝負しろというライバル、 恋を知る愉しみ、悲しみ、ゆがみ……いろいろだ。

良い料理漫画は料理を描かず人物を描き、良い恋愛映画は恋愛を描かず表情を描く。異文化衝突の波紋を丁寧に描く優れた作品はパルプスリンガーにとって貴重な知育財産になるはずという思いを新たにした。

そして、徹底的に近藤店長とあきらの間の障壁は取り除かれていく。父親の替わりではなく一個人としての恋であるとも語られる。二人の関係がどのようになるのか。やがて飛び立つ白鳥はどこへ向かうのか、ぜひ見届けてほしい。

青春映画らしく「走ることに大きな意味がある」とても爽やかで風を切るような物語でした。オススメです。

※取り止めのない感想を1000文字くらい削ってコレです。

原作未読。Amazon Prime特典でも鑑賞できます。

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