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ロールプレイ職業辞典:タンス危機管理士《ザ・コンサルタンス》 #UO_JPN

Ultima Onlaineに実在した職業の紹介です。

「タンス危機管理士」とは、ブリタニアで発生したタンス絶滅危機《タンスクライシス》を未然に防いだ伝説のリスクコンサルタントである。オフィス北極星みたいなものだと思ってください。

エピソード

これから語られるのは多少の誇張はあれど実際のエピソードである。

Ultima Online(以下UO)の魅力の一つとして「アイテムを自由に地面やテーブルにおける」というものがある。 近代ゲームでは置き引きや詐欺を未然に防止するためにアイテムやCreditに関しては数字のやり取りに留まることが多いがプリミティブな操作感が持ち味のUOでは、酒場のテーブルに分け前を置いてブラックジャックで取り分を決めたり、酒場のカウンターの席の一つ一つに好きな飲み物を並べたり、敵意がないことを示すために武器を放り投げるなど、ロールプレイの雰囲気づくりのためのシステムが構築されていた。

いきおい生産職業の需要も高く、大規模なバザーイベントが起これば、模擬店の飾りつけのための家具(タンスやドローワーやウォーキングクローゼット)が街路に並ぶなど壮観なものだ。そんな収納家具業界の花形に異変が起きた。後の世にいう「タンス絶滅危機(タンスクライシス)」である。

※UO最初期にはプレイヤーキラー蛮族が城塞都市をタンスで包囲しデジ攻城戦を行ったことがあると記録されている。タンスは死と虚無を内包した家具なのか。

タンス絶滅危機のきっかけは「タンスが容易に破損する」というクレームだった。模様替え最中や模擬店の設置中に扉が開かなくなる(アニメーションの問題で機能的には問題なく使用できた)当時のタンス業者はこのクレームを無視。「使い方が悪い」「言いがかりをつけるな」等というスタンスが事態を炎上させた。社会的にタンスへの風当たりが強まり「タンスはすぐ壊れる」「買い替え需要のためにタンス業界がタイマーをしかけた」「タンス屋は本棚に服をしまっているらしい」タンス業界は死に瀕した。

そこに出現した救世主が、タンス愛好家であり演出上にタンスを用いることでも知られるブリタニア世界で唯一の演歌歌手であるM氏であった。彼女はタンスを用いた新パフォーマンスのためにタンスを使いつぶすことを危惧しステージ上での事故を防ぐためにタンス職人との協議を重ねていた。

※M氏のライブパフォーマンスでは Evと刻印された漆黒タンスから魔導的に増幅された音声が聞こえることでも有名。愛好家なのだ。

彼女とそのチームはとにかく試行錯誤をして、ついにタンス破損の謎を解明した。それは「タンスの扉を開けたまま移動させると壊れる」という当たり前のことであった。彼女はブリタニア世界を恐れた。これは創造主の罠、仕込まれたイースターエッグであると気が付いてしまったのだ。『マナーが紳士を作る』創造主は滅び、すでに天の声は失われていたが彼女は天啓を得た。

※UOのマナー意識は徹底しており、ハサミを構えたまま走り回ると天の声から「お前はハサミを持ったまま走り回るなとママに習わなかったのか」というお叱りを受けるイースターエッグが実装されている。さすが英国紳士のためのゲーム。

なお、タンス危機解明の詳細な記録はここに記されている。

こうして、タンス絶滅危機は去った。彼女はタンスパフォーマンスをステージ上で披露しながら知見を広め「タンスを運ぶときは扉を閉めてからにするのが常識だよね~?」というアピールを行っていった。タンスが紳士を作るのだ。

彼女のタンスパフォーマンスで最高峰のものが時空間タンス移動演出であろう。

静まり返る客席。彼女の姿は見えない。
ステージの奥から徐々に篝火?が点灯し客席に迫ってくる。
よく見るとそれはたき火である。たき火が一直線にステージ最前線へ到達した時、轟音と共にデロリアンめいてタンスが出現。「待たせたな!」それは複数のシャード(サーバーが異なり通常交わらないはずの世界)を接続する夢の扉であった。

彼女はタンスを救い、タンスに救われてキャリアを重ねていった。
彼女は、タンス危機管理士《ザ・コンサルタンス》と呼ばれるロールプレイを全うしそれは職業となった。

伝説が語り継がれ誇張されるが実際に結果だけが残る。ほとんど妖怪のような話だ。

(おわり)

参考:オフィス北極星(めちゃくちゃおもしろいよ)

参考:#DHTLS チームのUO体験談(死ぬほど笑った)



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