エッセー「〈午後の紅茶〉の氾濫」
あなたは無尽蔵に〈午後の紅茶〉を吐き出し続ける自動販売機に出会ったことはあるだろうか。
私はある。
これは実話です。
とあるオフィスビルの地下階である。
地底世界のどん詰まりにはタバコやジュースの自動販売機を並べることになっている。これは太古の昔から定められた法則だ。
私は150円をドリンクベンダーのスリットに投入する。
お目当てはもちろん<午後の紅茶 ストレートティー>だ。
ピボッ
ガゴッゴロゴロ
ガゴン
ガゴン!
ガゴン!!
立て続けに3本の<午後の紅茶>が吐き出された。
面妖な。
私が1本とり、2本とり、3本目に手をかけたときに異変が起こった。
その3本目の<午後の紅茶>は「栓」であったのだ。
3本目が支えていた出口が決壊した。残り全部の<午後の紅茶>が吐き出される。
ガゴゴ
ガゴゴゴ
ガゴゴゴゴゴ
ガゴゴゴゴゴゴ
ガゴゴゴゴゴゴゴン
あなたは無尽蔵に〈午後の紅茶〉を吐き出し続ける自動販売機に出会ったことはあるだろうか。
では、取り出し口にムリムリと押し込まれた〈午後の紅茶〉の群れは?
気を許せば一斉に襲い掛かってくる〈午後の紅茶〉の大群は?
湯水のごとくあふれ出す<午後の紅茶ストレートティー>は?
私はある。
少しずつ〈午後の紅茶〉を自動販売機から取り出していく。
み゛ーーーーーーみ゛ーーーーーー
自動販売機も嬉しそうだ。
取り出し口から1本を抜くと3本の〈午後の紅茶〉が湧く。
無限に続くかの単純労働だったが私はやりとげた。
自動販売機の期待に応えて丁寧に午後の紅茶を並べていった。
み゛ーーーーーー
紅茶をすべて吐き出すと自動販売機は平常稼働(?)に戻った。
最初に吐き出された〈午後の紅茶〉を1本だけ手に取り、携帯電話で箱の側面に書かれた緊急連絡先に通報する。
「あの……自動販売機から〈午後の紅茶〉が無限に湧いてきて……」
「?????」
「つまり無尽蔵にペットボトルを吐き出してるんですけど」
「……ぶふっwww」
電話先でオペレーターが吹きだす音が聞こえた。
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