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【イベントレポ】マネジメント&評価なし。Ubieがフラットなコーポレート組織を選択し続ける理由と実態

本記事は、2022/8/24開催のイベントレポートです。

出演者

<スピーカー>
共同代表取締役 医師 阿部 吉倫(以下「 ave」) @Ive0209
Ubie Corporate エンジニア 盛田 嵩弘(以下「tamosan」)@tamosan_01

<モデレーター>
Ubie Corporate HR 手塚 園子(以下「sonopy」) @sonopy_u

Ubie Corporateの概要と特徴

Ubieは現在、正社員数が200人を超え、事業もtoBのAI問診事業のみならず、toCの症状検索エンジンサービスや、それらを活用した製薬企業向け事業を本格始動するなど複雑化しています。コーポレートとしてもレベルアップが必要なフェーズに差し掛かりました。

特徴① 組織分割

Ubieは会社としては1つの法人ですが、機能やカルチャー単位で組織を4つに分割しています。イメージとしては、事業部以上子会社未満といったところでしょうか。全社横断の管理部組織としてのUbie Corporate(以下「UC」)と、事業系の執行組織が3つあります。UCは全社アクセラレーターの役割を担っており、今年7月に組織として独立したばかりです。

なぜ組織を分割しているかというと、組織の出力を最大化させていくことをベースに考えているからです。機能毎に異なる文化を作り、異なる人事制度を設け、異なる人材要件で人材を採用しています。分割した組織では、人事制度や採用要件が異なりますし、SlackやGoogleDrive、Notionなどのワークスペースやオフィスのフロアなども分け、それぞれの組織運営を行っています。

特徴② フラットな組織

UCには専門性を持ったメンバーが集まっているため、自律的・柔軟に動ける人がフラットで効率的に業務を推進できる組織を目指しています。ポイントは3つあります。

1つ目は、情報流通と業務連携の仕組みです。組織を分けたことで情報が得られなくなり、結果的に動きにくくなることがないように情報公開のルールを決めるなど情報整理の考え方を決め、業務の分類ごとに他組織との関わり方を整理しています。

2つ目に自律分散とガバナンスを両立させる、ホラクラシーを独自にアレンジのうえ導入しています。ホラクラシーとは、簡単に言うと自律的に組織運営するための権限移譲の仕組みのことで、役割をメンバーに渡していけるフレームワークです。規律・計画性が求められるコーポレートにおいても、専門性を持つマチュアなメンバーが自律的に動きやすいよう、ホラクラシーにアレンジを加えて組織を運営しています。

最後に、会社の事業推進に集中するため、評価なし・業績連動報酬という仕組みを取り入れています。


これらの仕組みを成立させるためには、その仕組にフィットした人材を採用することが前提となっているため、人材要件やカルチャーに支えられて成り立っているといえるでしょう。

特徴③ 立ち上げフェーズ

これまでは事業をしっかり立ち上げていくことの重要度が高かったため、コーポレート部門は事業化までを担うUbie Discoveryと一体化していました。

ここからは各事業のスケールに向けてアクセルを踏んでいくタイミングです。コーポレートは全社をアクセラレートする必要があり、組織として独立させました。

まだまだ立ち上げのフェーズで、どんな組織にしていきたいかは日々メンバーで議論を交わしています。例えば、目標制度や行動指針なども、組織全体で一から構築しています。

Ubie Corporateの活動実態

ここからは、Ubie CorporateのHRをリードする手塚が進行役となり、代表の阿部、実際にUbie Corporateで働くコーポレートエンジニアの盛田とのパネルトークのレポートをお届けします。

sonopy:まずは、現在の活動実態とその特徴について紹介いただけますか?

tamosan:UCのメンバーは、私が入社した1年前には5,6人でしたが、現在は20人と加速度的に増えています。これまでは人依存で組織を支えていたところがありましたが、組織化して情報整備・流通をしていかないとスケールしていくときに厳しいよね、となり、今まさに組織化を進めているところです。

現在UCでは、”評価なし・役職なし”の運営体制を敷いていこうとしています。これは結構シビアな面もあって。「さぼっててもわかんないよね」とか「他の人がやってくれるよね」という思想の人が少しでもいると、事業を高速で支えていくことの足かせになったり悪い影響を発生させたりするかもしれません。

ですが、自律してUbieの事業をコーポレートとして支えていくんだ、という部分でマッチする人材採用を徹底したことで、これまではなんとかやってこれました。これからは独自の制度も更に整備してスケールしていこう、というところです。

sonopy:代表の目線からは、Ubie Corporateの現在はどう見えていますか?

ave:Ubieの事業が無限にスケールしていくことから逆算して、どういった組織にしていかないといけないかを、戦略性をもって構築していける段階になったかなと思っています。今まさにその発射台に載った、という感じでここからコーポレートを作っていく、というところです。

sonopy:無限にスケールしていくというのは、だいたいどれくらいの規模感の見込みですか?

ave:例えば事業の対象となるユーザー数、というスコープでいうと10億人規模です。

医療というのは世界共通の課題です。財務的な規模でいうと5年、10年後にはNetflix社くらいの規模を目指したい。医療はグローバルでいうと8兆円程使われているので、最終的にはGoogle社くらいの規模を目指していきたいです。

sonopy:そこに向けて、戦略的にコーポレートも組織を作っていくフェーズに入ってきた、というわけですね。

フェーズが変わってくると気になるところとして、「組織を分ける」という前提がある中で、カルチャーや大切なことが異なる組織に対してどのようにガバナンス面で機能させていますか?

tamosan:現場目線から話しますと、地道に説明していくということをやっていますね。

組織ごとにカルチャーが異なるため、それぞれ伝える言葉や響く内容は変わってくるのですが、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッションが根底に全社としてあるので、この共通項を捉えた上で、事業を高速に推進していく、ところから逆算してガバナンスを効かせています。

ave:まさに、WHYが大事だと思っています。

創業時でいうと、お恥ずかしい話ですがガバナンスの「ガ」の字もありませんでしたね……。今まさに我々の事業が安定的に継続的にネガティブイベントがない形で運営できるということ、そのために事業環境を鑑みると、このくらいのリスク回避のプロセスを作らないといけないですよね、ということをきっちり啓蒙していくことが大事なのかなと思っています。

sonopy:それぞれの組織でカルチャーは異なりますが、コーポレートは割とニュートラルな文化を形成していきたいと思っています。どの組織とも横断的に付き合っていきやすい文化を作っていくことで、各組織に対するガバナンスを効かせやすい土台ができると考えています。

なぜUbieはマネジメントのないコーポレート組織なのか

sonopy:「役職なし・評価なし」という組織にしているのは特徴的ですよね。どうしてそのようにしているのか、それぞれ教えて下さい。

tamosan:これはUbieに入社して最も衝撃かつすごくいいなと思ったところなんですけど、人の評価に使うリソースを ”コト” へ集中させることが可能なんですね。

というのも、前職では、上長であればあるほど、人事評価に多くの時間をかけなければならないのがもったいと思っていました。Ubieに入って、純粋に自分の日々のタスクや、将来中長期的にどういう施策を展開していくかの試行錯誤などに全集中できています。世界に高速に事業を展開していくためにも人事評価にリソースを割いている時間はない、というのはあるかなと。

sonopy:阿部さんはどうでしょうか?

ave:一番重要なのは ”コト” に向かうことです。それ以外の時間を極限まで減らしたいと考えた時に、Corporateでは評価なしを選択したということです。

ではどう運営しているかというと、基本的な思想として、全正社員がストックオプションでリターンを得られる設計にしています。コーポレートでは、AさんとBさん別の仕事をしているけど、どっちが評価高いかを決めるのは営業職に比べると難しい。tamosanも言っていたけれど、それを考えたり、そこに時間を使うのは不毛だよね、みんなもらえるほうがいい、と。

もう1つは、成長や進化のためのフィードバックは必ずしも上長からでなくてもよい、という点です。一緒に働いて一緒に ”コト” にむかっている、そのウェイトが多い人からたくさんフィードバックをもらったほうがいい。それは必ずしも「評価」や「役職」という枠組みでなくても、別の仕組みで提供しうると考えています。

sonopy:Ubieの中にも評価なしの組織でやっているところもあれば、評価ありの組織もありますね。

ave:はい、評価なしの組織はUbie Discovery・Ubie Corporateです。Ubie Customer ScienceとUbie Pharma Consultingには評価があります。セールス部門などは評価や役職も取り入れたほうが良いと考えており、そこは柔軟に選択しています。

sonopy:UCの選考に来てくださる方や実際に入社しているメンバーからは「評価なし」や「フラットさ」に魅力を感じるという声をよく聞きますし、他の職種に比べて特にその傾向が強いと感じます。それが何故かを考えた時に、専門的なスキルを有しているため、専門領域についてよく分かっていない上司が意思決定するより自分自身で意思決定したいという気持ちが強いのかなという点と、管理部門系の業務は評価が難しいという点もあるのかなと思います。

では、評価をしない代わりに具体的にはどのようにして個人の給与を決定していますか?

ave:入社時に、市場価格や前職給与に鑑みて合理的と判断した給与額を提示しています。

sonopy:入社後に関しては、業績連動報酬の仕組みがありますね。

ave:会社が事業上のマイルストーンを達成したときに、入社期間などを加味して報酬が受け取れるような設計にしています。

sonopy:事業を高速で成長させていくことにみんなの目線を向けるという意味でも、事業が伸びると給料が伸びる、というわかりやすい仕組みになっていますね。業績に連動しない給与改定も、UCでは行っていないですよね。

ave:はい、行いません。この人のほうが頑張っているから評価制度はないけど給与を上げる、ということはないですね。基本的に、相対的に自分の価値を認めてもらえることがモチベーションの源泉になっている方だと、UCは少し居心地が悪いかもしれないですね。

”コト” に向かうための仕組み

sonopy:tamosanと阿部さんの2人の回答で共通していたのが、「社内での評価より”コト” に向かう」という話でした。その考えに至ったきっかけを聞いていきましょう。いつからこのスタイルで展開しているのか、何かの問題意識があって動いたのか、社長の何らかの思想があっての結論なのか……。

ave:創業初期の初期、10人もいない時に評価をしようとなったものの納得感が全く得られなかったのがきっかけですかね。OKRで運用しましょう、OKRこれくらい達成したら給与がこうなる、SOがこうなるという話になったときに揉めに揉めて……(苦笑)。これって顧客の価値に何か関係があるのか、と。ユーザー価値を提供できる、企業価値が高まる、安定させることに時間を使いたいな、という考えに至りました。

sonopy:我々の組織はゼロベースで理想論を追っていくのが特徴の一つですよね。本質的にこうするのがいいんだったら、それができるやり方を考えようという思考で組織を作ってきていますね。

さて次の話題です。

UCの中にも自立性・柔軟性が活きる領域と、どちらかというとより統率された組織の中で決まった業務を抜け漏れなく行うことが重要な領域がある気がします。統率された組織が重要な業務においては、ホラクラシーの導入によって弱点が生じたりしているのでしょうか?もし弱点がある場合はどのように対応していますか?

tamosan:以前より、通常のホラクラシーを導入すると弱点になりうるものはUC内でも認識していました。具体的には、①コーポレートガバナンスを効かせる人間が固定されず、統制を効かせられなくなるためその指摘効力が弱まること、②専門的な知識・技術が必要なロールは、その専門性を期待して採用しており、そこを流動的にする(総務がPRをやる等)と非生産的になることの2点です。

そこで生まれたのが「変形ホラクラシー」という考え方です。

通常のホラクラシーですと、サークルやロールといった役割のようなものが生まれては消え、そのロールに当てはまる人が流動的に変わっていくスタイルが特徴です。いっぽう変形ホラクラシーでは、そのロールに応じて統率を取られるようなヒエラルキー構造を専門領域においては固定します。ロールという形なので、その人に決定権があるという形にはなるんですが、ホラクラシーのルールに従って運用していくことで、弱点を克服していこうとしています。上場を目指す中では、この組織体制がうまくいくかはまさに検証中ですね。

Ubie Corporateの今後の課題

tamosan:組織構造によって、それぞれコミュニケーション内容は少しずつ異なります。そのため、同じ機能をそのまま届けても価値につながらない場合も多々あり……。

例えば、Ubie Discoveryは事業・プロダクト開発組織であることからクラウドサービスをバンバン検証したいという考えがあるため、そこに寄り添っていきたいですし、一方、Ubie Customer Scienceのように目の前のお客様に価値を提供していく組織は、安心安全にクラウドサービスを利用していくのが大事です。ある種、自分のスキルセットだったり人格を使い分けながら価値を提供していく難しさはありますね。

ave:会社が無限にスケールできるようなコーポレートのオペレーションを作っていかなければいけないと思っていますが、まだまだ未整理な部分も多く、会社として属人性を排除した基盤になっていない部分も多々あるのが現状です。

また、どういった機能をどれくらいのクオリティでどの組織に提供するかも試行錯誤しながら作っていかなければいけないですよね。それは各領域で多々あるだろうし、本来はもっと生産的にできる部分もあるはずで、今はその過渡期かなと。

sonopy:その過渡期を乗り越えるために今どんな工夫をしていますか?

tamosan:従来のUbie Discoveryの中にコーポレートが包含されているところから脱却して、五角形のそれぞれの組織にそれぞれコミュニケーションしていくように心がけています。

ave:変形ホラクラシーの導入もそうですけど、自分のロールの範囲は自分で決めていいですよね、と。自分のロールと他が絡むようなことは、どういう会議体でやるかを明文化しする。”コト” に対して誰が責任をもっているか、というフレームワークがホラクラシーには実装されているのでその部分は解消できましたね。

tamosan:変形ホラクラシーを導入する前は合議が繰り返されるシーンも多かったですよね。導入後は、このプロジェクトのオーナーシップみたいなものを誰がもつかというのが明確になり、解消しつつあります。

Q&A

ー 上場後もコーポレート組織はホラクラシーで運用していく予定か。

ave:現時点で絶対に上場後もホラクラシーを採用するとは決めていません。その時の組織規模に応じて、大事にしている価値観を実現でき、投資家に説明責任を果たせ、かつ運用上ベストなものを選択します。

ー どういう考え方、スタンスの人がUbieのコーポレート組織で活躍できそうか。

tamosan:評価のない組織なので、自律的に仕事を進めていき、Ubieの事業拡大に向けてコーポレートとしてそれを最大限支援していくことを楽しめる方がいいと思います。

ave:世界の医療インフラを作るためには、コーポレートが強力かどうかがすごく重要です。世界の医療インフラの基盤を作りたいと思っていただける方と一緒に働きたいです!

ー 組織を開発する上で、これまでで一番のチャレンジは何か。

ave:事業戦略から逆算してどういう組織にしていくか考えていて。日本のGoogleやNetflixを作りたいとしても、日本の法律上難しいこともあるし、日本の会社は普通こうだ!みたいな話もある。その中で、どういう思想のもとで運用するか、そしてそのための設計をどうしていくのか、はいつもチャレンジングですね。

tamosan:劇的に動いていく中で、楽しみながらリーズナブルにコーポレートとして機能を提供していく、というところはチャレンジですね。さらに、スケールしていくとそれに応じて組織が増えたり文化の設計方法も変わってくるので、常にドキドキワクワクしています。

sonopy:UCだと組織作りを主体的に行っているという特徴もありますよね。そんな組織だからこそできる理想のコーポレートを作っていきたいですね!

最後に

Ubieのコーポレートに興味をお持ちの方は、job descriptionをご覧いただき、是非ご応募ください。いま特に募集しているのは法務・経理・販売管理・内部監査です。

いきなり面接は……という方にはカジュアル面談も設けております。DM等で気軽にお声がけください。


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