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Ubie PRチームイベント「スタートアップを推進するPRドリブンな経営とは」

本記事は、2022/2/24開催のイベントのレポートです。

講演者

モデレーター
PR Holon 片山 悠(以下「 ktpr」) @ktpr_PR
スピーカー
PR Holon 重藤 祐貴(以下「shige」) @yukishigedo
共同代表取締役 医師 阿部 吉倫(以下「あべし / ave」) @Ive0209

UbieはなぜPRドリブンなのか?

ktpr:PRとはステークホルダーとの双方向コミュニケーションによる関係構築の営みだと思います。

Ubieのステークホルダーは多岐に渡ります。一般的にPRが対峙するのはメディアですが、図1にあるようにメディアはステークホルダーの一つにすぎず、医師会、自治体、医療機関、生活者(地域住民)、株主、製薬会社など様々なステークホルダーと関わっているのが特徴です。これがPRドリブンになっている要因の一つだと思います。

ktpr:医師である時と、起業してからでは見えるステークホルダーの解像度は違うのでは?あべしどうでしょう?

ave:そうだね。病院で働いた時に対峙するのは、主に患者さんや看護師さん、事務員さんなどの病院関係者がほとんど。医師としてあまりステークホルダーを強く意識することはなく、患者さんに医療を提供することに力を注いでいました。

いっぽう起業後は、処方している薬を作る製薬企業や、地域の連携してる医療機関、支援してくれている介護施設や病院の皆さんがいて医療は成り立っていると強く意識するようになりました。

ktpr:私もUbieのPRに携わるようになって一番の驚きは、特に国や医師会といったステークホルダーと密接にコミュニケーションを取っていくことでした。これは同時に、難しさでもあると思っています。

shigeはPA(パブリック・アフェアーズ)の担当として対峙するステークホルダーとのコミュニケーションにはどのような難しさがあると思う?

shige:PA・公共政策渉外としては国、厚生労働省、医師会や自治体など(主に図1の赤/ピンクの付箋)が主に対峙するステークホルダーで、プロダクトや実績を政策と一緒に取り上げてもらいながらコミュニケーションを取っています。
もちろん目の前の患者さんや医療機関のためという目線を持ちながらも、少し引いた目で業界や国との目線も両方見る必要性があることに面白さと難しさを感じています

ktpr:Ubieは創業当時からPRドリブンだったんだっけ?

ave:創業期においては正直、PRのピの字も知らなかったですね

サービスを提供していく中で、例えば病院であれば所属先として病院協会も関係者にいて、同じように開業医の先生であれば医師会もいて。さらには医療行為全体として何がいいかを評価する厚生労働省がある、というような構造を知り、どうサービスを提供すると喜んでいただけるのかを考えるようになりました。

逆に言うと、サービスを顧客に届けるだけでは簡単に普及する世界ではないことが明確なため、PRに重きを置くようになりました

ktpr:shigeは入社してからUbieのPRマインドの変化を感じた?

shige:会社の成長と共に変化していったかな。

入社当時の社員は6名。営業出身は私1人で、Biz系が2名とその他は医者とエンジニアという状態だったので、医療機関向けの営業活動からスタート。会社が成長するにつれ、よりトップアプローチすべきと感じるようになって。1つひとつ階段を登っていたらいつの間にかPRマインドを持っていた、というのが実情に近いかもしれません

ktpr:僕が業務委託で関わるようになった頃から、いわゆる広報出身のメンバーはいないにも関わらず、Slackには「Public Relations」というチャンネルがあり、その中で、メディア露出だけではなく多岐にわたるステークホルダーとの会話がなされていたということは印象的でしたね。色々な難しさを経験した上で、そこに行き着いたのかなと思っています。

UbieのPR活動とその特徴

ktpr:UbieのPR活動の特徴は何と言ってもPAとの連携です。

PR✕PAの事例① 未来のプレスリリースで自治体・行政案件を実現

ktpr:例えば、海老名市とのAI受診相談モデルの取り組みは、まさにPRとPAで切り開いた事例だと思いますが、shigeはどう見ている?

shige:これは初めて自社のプロダクトサービスを自治体や行政向けに提供した事例で、2020年12月に行ったものです。

プロダクトを社会の文脈に合わせて提供することでCOVID‑19の対策になり、良い結果を生むことは分かっていた一方、行政や医師会、病院を巻き込むことは大きなハードルでした。

複数のステークホルダーとUbieを含めた4社がどのような状態を目指していればスタートが可能かをイメージした際、作成すべきは既存のザ・提案書ではなく、“つまりこういうことがやりたい”を見据えたプレスリリースだと考え、各ステークホルダーへ提案書として「未来のプレスリリース」を提出し、初めて自治体・医師会案件を実現できました。

ktpr:これは結構印象に残っているプロジェクトで、提案書の代わりとなる「未来のプレスリリース」なので想像力を膨らませながら書きました。でも、このことで一気に各ステークホルダーの目線が揃いプロジェクトが推進されていくのを目の当たりにし、改めてPRとPAの力が相互に作用すると学びました。

実際メディアにも多数取り上げられ、反響も大きく、プロジェクトの社会性や公共性を実感しました。

PR✕PAの事例② 業界団体を巻き込み東京都医師会と協業

ktpr:医師の業界団体である東京都医師会とコロナ第6波対策として、発熱外来の検索機能を共同で開発したプロジェクトは経営にもインパクトがあったのでは?

ave:東京都医師会へ価値貢献したいという思いがやっと実現した事例です。創業初期よりIT担当部署の先生のご指導いただきながらプロジェクトを進めていましたが、大きな問題がゆえに進行に時間が掛かっていました。そこに第6波対策という課題が加わり、目線が一つになり実現しました。

shige:東京都医師会は公益社団法人です。いち民間企業との取引しづらいという特徴もあり、日本医療受診支援研究機構という第三者的業界団体に間に入ってもらう新たな座組の組み方も勉強になった事例です

ktpr:これもPRチームとして悲願のプロジェクトでしたが、事例①、②に共通して言えることはUbie1社で閉じないこと。1社ごとにとどめずに社会性や公共性を付加することで情報開発がなされていきます

例えばPAをやっていなくても他社と手を組む、複数の会社でプロジェクトを立ち上げるなど方法はさまざまあり、その場合は恐らくBizDevと協力しながら進めることでしょう。この辺りにこれからのPRに対するヒントがあるかもしれません。

shige:過去のスタートアップは、既存のステークホルダーを破壊してイノベーションする!というスタンスでしたが、これからのスタートアップは各ステークホルダーと適切な関係性を築く経営や、事業開発をやっていくべき
それにおいて、やはりPublicRelations本来の考え方であるステークホルダーとの関係性構築には、1社の利益のみにせず、時には同業他社も巻き込むことが、規制産業の医療のみならず、他の産業についても必要だと思います。

PR✕PAの事例 PRからプロダクト・事業開発を提案

shige:コロナ禍で国、自治体、私たち住民までも「ワクチン接種」という大イベントに翻弄されているのを目の当たりにしました。Ubieとしても指を咥えて待っているだけでなく、今やれることをやろうと奮起し、PRチームからプロダクトや事業側に提案し実現した事例です。

ktpr:社会の動きを見ていると、自社のケイパビリティでなんとかできるケースは実はさまざまあり、その接点をどうやって生み出していくのか、常に風を読みながらPRチームが見ていく必要があります

Ubieの場合、PRのパブリシティはインバウンド経由が多く、先方から問い合わせがあって取材に至ります。社会の動きや今必要なことに対して自社が役に立とうとすることで自然とパブリシティもついてきます。このことが今後のPRの在り方の一つのヒントになりそうです。

PRの実績

ktpr:創業から3年、色々と種まきをしてきたことがPRでも少しずつ実を結び始め、PRアワードグランプリ2020にて、仲間づくりで挑み続ける医療課題解決としてブロンズ賞を頂きました。

同年、日本サービス大賞で厚生労働大臣賞と審査員特別賞も同時受賞しました。

今までのスタートアップはどちらかというと破壊的なイノベーションで市場に参入してきた中で、Ubieの場合は既存のステークホルダーと手を取り合いながら新しい市場をどうやって作っていくのかを模索しながらやっていることが、ありがたいことに国からも評価され始めています

PRチームの目標設定

ktpr:Ubieでは全社でOKRを採用していますが、そのOKRのメリットはどこにあるのでしょう?

ave:目標設定と言うとKPIやKGIなどが挙げられますが、我々の事業環境に鑑みると、月次単位で状況が変わることは当然あり、定量的に評価しにくいものが山ほどあります。

OKR(Objectives and Key Results)は目指すべき状態をゴールとし、それを達成できていると言える数値として継続可能なものをKey Resultとおき、Key ResultA、B、Cが実現していればObjectiveたる目標を達成している、という設計。KPIを200%にした場合、何か良いことが起こると分かっていない時でも会社として必要な方向性に向かうことができる性質があります。

メリットとしては、KPIが陳腐化してしまったということが起こらない点が挙げられます。要はこの状態が常に嬉しいですよねというものが目標として置いてあるため、目標が陳腐化しにくいのです

ktpr:具体的には図6のようなイメージ。前提として、Ubieではソフトウェア開発におけるフレームワークのひとつ「スクラム開発」と同様の手法で目標を策定し、実行しています。左が全社のOKRです。O1、O2があり、O1に紐づく形でKR1、KR2のなかに「Return」と「AC(※1)」があり、これが達成されたらクリアという基準と、やらないことが記載されています。

※1
AC(Acceptance Criteria)とは、スクラム用語における「受け入れ条件」のこと。プロダクトオーナーの視点から何を持ってプロダクトバックログアイテム(優先順位ごとに整理されたやるべきこと)が完成したかを確認するための基準となる

また、全社OKRに加え、Ubieの場合はホラクラシーというシステム組織構造をとっており、その中のサークル(普通の会社での部署)単位でのOKRもあります。これは図でいうと右側のマーケット基盤最大化サークル(PRが所属する主サークル)目標のことを指します。

PRチームではこのホラクラシー以外でもさらに独自の目標を設定しています。全社のOKRに対して、PRチームが貢献できるとしたら…を図7のようにO1、O2、O3という形に分解し、さらにそこに紐づいたタスクをAsanaに落とし、それを週次で確認しています。

shige:つまり、Ubieでは、会社全体が何を目指しているか、PRが何を目指しているかがすべて透明化されており、どう紐づいているか、どこがどれだけ伸びたら何が良いのかが全部可視化されています

ktpr:PRチームのOKRに関しては半年や一年と長期的に見ながら作っているものが多いです。そのOKRに紐づく形で向こう半年でどうやっていくかを図8のようにロードマップに落としこんでいます。

世の中や政治的な動きといったトレンドを一番上に書き、Ubieの主要な動きをその下に、その下にはPA、さらにはプロダクトごとの動きをtoB、toCそれぞれ書き、最後に弊社の製薬事業やグローバル事業との絡みを書いています。これをどのような順番で動かしていくのか、それぞれをどのように紐付けて情報にしていくのかをPRチームのオフサイトで一緒に議論しながら作っています。

shige:OKRを取り入れている特徴として、PRでよくあるメディア露出数などの結果の各論は追わず、何がどの状態までいったのか、それはどういう状態なのかを定義し、ゴールまで持っていく状態を目標設定としていることが挙げられます。

ktpr:確かに露出やプレスリリースの件数は追ったことがありません。それよりも大きい球をどうやって実現するのか、ここでこの人たちとしっかりと手を結べることが大事、というような目標としているので、独特な目標設定の仕方をしているかもしれませんね。

PRチームと経営陣のコミュニケーション

ktpr:PRチームと経営陣は常にフラットに分け隔てなくコミュニケーションを取っていると思います。あべしは経営陣として、PRチームとコミュニケーションを取る時に心掛けていることはある?

ave:心掛けていることが逆にないかな(笑)。PRメンバーだからこうとかではなく、ビジネスパーソンとして会話をしている感じ

ktpr:あべしとのコミュニケーションでは、いわゆる広報担当者として扱われることがなく、どうやって事業を推進するのかを一緒に考えるパートナーとして見てもらっていると感じるな。有事の際は、PRチームがリードして経営や開発も巻き込みながらプロジェクト化することも多く、どちらからも働きかけられるような関係性ですね。

PRの今後の目標や課題

ktpr:背景を説明しないことには片手落ちになるところもあると思いますが、Ubieとしては持続可能な地域医療を構築するためのサポーターであるという位置づけでありたいと思っています。そのためにどのようにコミュニケーションを取っていくのか、どのようにストーリーを構築して行くのかは、PRチームで特に議論をしています。

shige:まず課題としては、Ubieの事業は医師の仕事を奪うわけではなく、また、AIという何かよく分からないものが生活者の命を脅かすものではないという誤解リスクがあります。
加えて、toB事業から始まったこともあり、病院の業務効率化や働き方改革にアプローチした「働き方改革のUbie」とイメージされやすい過去の遺産も。こうした中で、改めて自社の存在意義をステークホルダーに分かっていただく必要があります。

ktpr:自分たちがこれまで築き上げてきたパーセプションが、ある種の負債になってくることがある。そのイメージをどのように刷新していくのかはとても難しいことだし、一朝一夕で変わらないがゆえに、積み重ねを要するもの。それを点ではなく線で見せていくには、先ほどのロードマップで作ったような形で続けていく必要があると思いますね。

スタートアップ経営者としてPRに期待すること

ktpr:あべしはスタートアップの経営者としてPRにどのようなことを期待している?

ave:社会にまだ実装されてないものを提供するのがスタートアップです。世の中で評判や評価が定まっておらず、「新しい物が出てきたけど、これは何?」というところからスタートします。社会実装していく中でユーザーや、そのサービス提供体制を元々作っていた既存のプレイヤーの方々、いわゆるステークホルダーの関心を捉え文脈を作っていくことが大切です。

あるべき未来に対しての一歩をいかに作っていけるかは非常にレバレッジが効く上に、それなくして社会に浸透することは基本的に想定できない。その意味でも、経営の目指す世界を実現する道を引いてもらうことをPRに期待しています

Q&A

ー PRとマーケの役割分担、OKRはどう設計している?

shige:PRとマーケティングの役割は独立している部分とアラインしている部分があります。大きくは一緒のチームに所属していますが、敢えて同じ目標にしていません。とはいえ、方向性やブランディングなどは合致していないといけないため、スケジュールや度合いなどアラインすべきところは細かく調整しています。

ktpr:その時に寄る辺になるのがOKR。同じObjectiveを追っていればアプローチがPRであろうが、マーケティングであろうが達成できればOKとなっていくのだと思います。

ー PR Holon・PR Opsというポジション名がユニークだが、チームはどうなっている?

shige:PRメンバーが所属するUbie DiscoveryはUbieにおける事業/プロダクト開発組織であり、その中でもさらに人材要件がHolon、Ops、Focusと3つあります。Holonは情報開発や戦略的関係構築、医学的に証明された事項を作るなど、新しいものを開発する0→1を担っています。
一方、どんどん開発しても収拾がつかなくならないよう、ロジ周りや仕組みを整え推進する存在がホスピタリティを持ったOps。Focusは新しくできた人材要件で、より専門性を持ったHolonのイメージです。このように役割を明文化しながらタッグを組んでいることがUbieの特徴だと思います。

ktpr:PR Opsと日々協業することで、自分はPR Holonとして得意なことに集中できる環境にあります。その背景の中で、どんな情報を世の中に出すべきかの文脈づくりや情報開発、全体の戦略構築するのをリードすることを役割としています。

ー 採用広報に対する考え方ややっていることは?

shige:PRチームと採用ブランディングチームは別にいるため明確には独立していますが、僕やktprは兼務しているため、プロジェクトは一緒に行うこともあります。

採用広報に対する考え方は2つあり、1つはPRとして打ち出したいコーポレートブランドのイメージと真逆の採用ブランディングをしていること。コーポレートブランドでは「愛あるテクノロジー」を掲げ、ロゴもハート、ピンク色であたたかさを打ち出すことが多いです。一方採用は、「愛だけでは世界を救えない」ギャップを持たせ、より尖った人材が集まるようなブランディングをしており、それぞれを毀損しないよう調整しています。

もう1つは、Ubieでは全員採用広報という考え方があり、専任人事がおらず誰しもが人事であり、採用広報を担っていること。こうした考えから、全員で会社のプレゼンスを向上させるべく、年中アドベントカレンダーなどを施策としてやっており、その仕組みづくりやテンプレート作成、書き方レクチャーなどをPRチームでリード、サポートしています。

ー OKRをPRで作る際、特にOからKRへの計測はどうしている?

ave:例えば、地域医療を持続可能にしている会社ということを認知されることをOとした場合、自治体向けに地域医療を持続可能にするプロジェクト事例を作ることをKR1と設定します。次に、それを広報するために、地域医療のユーザーである一般住民や、地域医療をガバナンスしている国など、重要なステークホルダーらに向けて認知を取る必要があります。
例えば、アポイントを取ってプロダクトを紹介した際の相手の反応を基準化し、その基準を満たした人の割合を出すことをKR2、そのプロダクトがメディアなどに取り上げられ、一定の人数にリーチされた場合をKR3とします。こんな感じですね。

これを3ヶ月のスコープとすると、12ヶ月、24ヶ月のスコープであるならば、地域医療に対して実際どのくらい貢献したかの度合いを軽量評価し、政策を反映させる粒度になることもあります。

最後に

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