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眠れぬ夜に-12-

第12夜

 今朝、目が覚めるときの私は気分が良く、いつもは薄暗い天井に暖かい光が浮いていた。しかしすっかり目覚めて見ると、関節の痛みは増すばかりで、身動きがとれないことは変わらない。当然昨日までの重々しい空気はいつものままである。疫病は空気の質量まで変えるのだ、と感心したのは何日前のことだったか。

 音声アシスタントにニュースを聞くのが常だったがやめた。事態はまだ好転していない。死人の数を数えるのに飽きたのもあるが、新薬に期待して裏切られる自分を想像したからだ。ただ苦痛に耐えるだけの一日がはじまる。諦観に身を包むと少しだけ楽になるような気がした。

 私の枕元のぬいぐるみたちが私を見ている、あ、それを見ている私は誰だろう、と思った瞬間、地底から世界を見渡すような映像に包まれた。私は溺れてはいけない。生き残った後の世界は素晴らしい。猛烈な後悔と生への執念が視界をゆがめた。

第12夜

 ノンアルで晩酌のまね事をするようになって久しい。その日の事を手のひらの上に出して見たりクズカゴに入れて見たりもするし、考えても仕方のない事を取り出してきて結局は「仕方ないか」としまい込んだりもする。何も解決しないけれどそれがまたよい。相手がいればたわいもない話で時間を潰し、頃合いで引き上げる。飲んでる時にこれが出来たなら、なんて後悔も案外悪くない。
 それでももうちちょっとだけ、と感じた時は小さな物語を読む。小説でもエッセイでも漫画でも。最近は昔書いた自分のテキストを眺めるのも好きだ。私自身、驚くほど忘れていて新鮮である。アル中の利得と言う事にしよう。
 暫く、その雑文をここに披露させて頂く事にします。眠れぬ夜の暇つぶしにでもして頂けたら幸甚です。

アル中になるようなポンコツですがサポートして頂けると本当に心から嬉しいです。飲んだくれてしくじった事も酒をやめて勘違いした事も多々ございますが、それでも人生は捨てたもんじゃないと思いたい、、。どうぞよろしくお願い申し上げます。