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五十音五行連作「あ」~「お」

概要
・連作のタイトルの頭文字が五十音というだけ
・短歌の内容は五十音と無関係
・Twitter(u_who_u)にて平日夜更新

あいのはなしはもうやめた


あいのはなしはもうやめた

感情を偽装していて恋バナを雑につくってごまかす手癖

人類のひとりひとりのことすべて愛せないってうすうす気づく

記念写真ふるいカメラで自撮りしよフィルムが尽きましたごめんね

いいねって言うたび価値が摩耗するなら言うなっていうこと?(知らない)

冬の日に思いを馳せる空想の春が春より好きな春です。

いきものといきもの

いきものといきもの

牛肉が美味しいこととその牛の名前を知らないことの天秤

有機物たる肌を持つ木をさわるダイヤモンドは無機物である

うさ色のうさぎましろき雪のなか子供とふたり戯れて生

モルカーに名前をつけるときぼくら大切にすると誓った(つもり)

どうぶうに過ぎないわたししょくぶつに過ぎない桜 ただ春を待つ

うみのゆくえうみのはて

うみのゆくえ うみのはて

青空は結界であり星空を覆い隠して世界を守る

まよなかにバンドウイルカがジャンプする宇宙に向かって逃げ出すために

真実に至ろうとして海に出たフラットアースの信奉者たち

家系図が川だとしたらぼくたちは水平線になるのだろうか

青空は空気の色も青いから海に行こうと祖父がわらった

えっぐたるとあーかいぶ

えっぐたるとあーかいぶ

リクルートスーツでつくるエッグタルト正座で味見する甘すぎる

死んだ目で電車で詩集 気に入った詩人が死刑囚で驚く

剣豪が刀を選ぶ顔つきで木べらを探す午後が楽しい

アーカイブしようかぜんぶ春風もお菓子の味も寝坊の数も

お祈りをエッグタルトで中和するカメラロールがやや黄色いな

おりがみのえいえん

おりがみのえいえん

折り鶴に命を与えるたった今これは永遠ではなくなった

冬だからさくらが咲いた幻想の花はわたしの心のなかの

ていでんの夜に子供があやとりで編んだ電球あたたかかった

折り紙の薔薇を飾ったおわかれ会 記憶の中でまだ咲いている

寒空をプラットホームで見上げれば電車が過ぎるまでの永遠

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