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「嘘つきだらけの喫茶店」 〜メニューは一つ 不味い珈琲〜

店名に惹かれて入った喫茶店
名前は「嘘つきだらけの喫茶店」

その喫茶店のメニューは一つ 不味い珈琲
喫茶店の名前から 僕はすぐに趣旨を理解した

でも

予想に反して 珈琲は不味かった

珈琲の味いかがでした?
老主人が尋ねてきた
おいしいです
僕は嘘をついた

優しい貴方に美味しい珈琲持ってきますね
僕は趣旨を理解した
老主人の言葉に頷きながら

美味しい珈琲とやらは 店名通り不味かった


店名に惹かれて入った喫茶店
名前は「眠くなる喫茶店」

その喫茶店のメニューは一つ 不味い珈琲
不味いのだろう
本当に眠くなるのか 僕はそこに興味がある

席で暫く黙って待った
ちっとも眠くなりやしない

というか注文取りに来てなくない?
奥を覗いた
老主人がカウンターで 涎垂らして眠ってた

勝手に淹れた珈琲は やはり不味かった


店名に惹かれて入った喫茶店
名前は「笑ってはいけない喫茶店」

その喫茶店のメニューは一つ 不味い珈琲
どうせ不味いのはわかってる
何が起こるのか 僕はそこに興味がある

老主人がゆっくり近寄ってきた
微笑んだ
ゆっくりと笑い返した

アウトーーー!

黒ずくめの男達が現れて 僕の尻をぶっ叩いた

黒ずくめの男が淹れた珈琲は いたく不味かった


店名に惹かれて入った喫茶店
名前は「ラーメンの喫茶店」

その喫茶店のメニューは一つ 不味い珈琲
わかってるよ 不味いのはわかってる
ラーメンとの絡ませ方 興味あるだろう そりゃ

老主人が泣いていた
うちの奥さんは塩ラーメンみたいな いい女だったんだ
あのさっぱりした透明感半端ないって〜
昨日聞いたようなことを叫んでた

泣きつつ淹れた珈琲は 塩味がして不味かった


店名に惹かれて入った喫茶店
名前は「朝の喫茶店」

長くて 誰もここまで読んでないかもしれないが
これが最後の珈琲だ

誰かが僕の右肩を揺すった
前で新聞を読んでいる客が目に入る

右隣から 老主人が微笑みながら 僕の顔を覗く
「珈琲冷めちゃったね 新しいの入れましょう」

あぁ そうか そうだったんだ
僕は朝から夢を見てたんだね
漫画とか小説とかでよくあるやつだ

老主人が持ってきた少し熱めの珈琲は

夢と同じく不味かった


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