ソフトバンクは税金を払っている

ソフトバンクG、繰り返す法人税ゼロ 税制見直し議論も: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ソフトバンクが税金を払っていないというトンチキな議論はしばしば見かけるものであるが、ついに日経新聞までもトンチキなことを言い始めたので簡単にコメントしておこう。

 まずソフトバンクグループ(株)自体は特に事業をおこなっていない持株会社であること理解する必要がある。例えば皆さんご存知の携帯電話事業は、ソフトバンクグループ(株)の子会社であるソフトバンク(株)でおこなわれている。

子会社で納税された後の利益が親会社に配当される。

 ソフトバンクの携帯電話事業からは利益が出ているが、その利益はもともと子会社のソフトバンク(株)で生じたものであり、したがってその税金もソフトバンク(株)が支払っているのである。そして税金を払った後に残った利益を親会社に配当したものがソフトバンクグループ(株)の収益となる。この配当には課税されないのでソフトバンクグループ(株)単体の税率は低く見えるが、税金を払っていないのではなく、その分の税金は子会社で支払済みなのである。

 なお海外子会社についても基本的な仕組みは同様であるので、海外子会社は外国で納税し、日本の親会社が受け取る配当にはほとんど課税できないことになるが、これは国際ルールである。逆に海外企業が日本に拠点を作って活動する場合には日本で課税される、という意味で公平である。

 日経の記事で槍玉に挙げられている2021年3月期を見ると、ソフトバンクグループ(株)単体決算では税引前当期純利益14,538億円に対し法人税住民税及び事業税はわずか5百万円しか払っていないが、そもそも営業収益16,222億円のほぼすべてが子会社等からの受取配当金なので課税されるべきものがないのである。

 一方、子会社の2021年3月期のソフトバンク(株)単体決算では税引前当期純利益6,121億円に対して法人税住民税及び事業税を2,006億円払っている。さらにソフトバンク(株)にもその子会社があり、そこからの受取配当が473億円あるから、

2006/(6121-473)=35%

で結局、税引前当期純利益に対して大体35%の税金を支払っていることになる。日本の法人実効税率からして特におかしな数字ではない。もちろんソフトバンクグループ(株)の子会社はソフトバンク(株)だけではなく、他の子会社でも同様にそれぞれ税金を支払っているはずである。

 日経の記事が異常なのは、上記の論点に触れていないからではなく、むしろ受取配当に課税されないことについてはきちんと理解して書かれているからである。上記の論点は会計や税務を少し知っている人間には当たり前の話であり、日経もそれは当然理解しているにもかかわらず、「違和感」「不公平感」があるとしてソフトバンクに批判的な論調であり、しかも、「違和感」「不公平」の中身についてはほとんど何も述べられていないのである。

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