見出し画像

社会人になってから、今更「アナ雪」の良さに気づいた話。

以前お伝えした通り、従来のプリンセス映画の最たる特徴は、お姫様が王子様と結婚することで結末を迎えるハッピーエンドである、ということです。(見てね→https://note.mu/u__moon/n/n7254ae18f356)

しかしながら、結婚が女性にとっての最大の幸福とされることに否定的な意見が多数あります。私自身もそうではないと思っています。

とはいうものの、原作自体がそういう話であるのだから、そこに反論しても元も子もない話なんですよね。
ちなみにジェンダー学で有名な若桑みどり氏は著書「お姫様とジェンダー –アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門」の中で、プリンセス・ストーリーが世界中で受容されている理由について、以下のように述べています。

その理由は、世界は今なお立派な家父長制社会で覆われているからなのだ。そしてこのプリンセス・ストーリーの本質である基本原則、「女の子は美しく従順であれば、地位と金のある男性に愛されて結婚し、幸福になれる」が、ジェンダーを再生産しつづける金の卵であるからなのである。

つまり、現在もなお家父長制度が根付いているからこそ、プリンセス映画を通じて幼い女の子たちに男性本位社会で生きる大人たちの理想を刷り込んでいるということなのです。(※家父長制:家族で父親が絶対的存在であること)

しかし近年のディズニーでは、その従来の考えを変えようという試行錯誤が続いているように見受けられます。

例えば、『美女と野獣』以降、高貴な人間同士の恋愛を描いたものではなくなり、『アラジン』や『ラプンツェル』ではお姫様と泥棒の逆玉の輿婚で物語が終わっています。
また、その後の『アナ雪』と『モアナ』では、従来の流れとは全く異なる展開で結末を迎えました。
前者は真実の愛とは姉妹愛であると意味づけられた上で、姉妹がそれぞれ結婚して終わるのではなく、エルサが魔法の力を受容し、それによって再び国が繁栄するという結末であり、後者はハワイのとある族長の娘であるモアナとマウイが共に旅をする物語で、恋愛描写は一切ありませんでした。

王子様からのキスだけが真実の愛ではない!

実は『アナ雪』の中で、従来のプリンセス映画の型をすでに否定していたのです。型がありますと言いつつすみません!笑
(参照:https://note.mu/u___moon/n/n7254ae18f356)

妹のアナは戴冠式の舞踏会で出会ったハンス王子を運命の人と信じ、従来の筋書き通り、彼と結婚するとの一点張りでした。
しかしながら、ネタバレになってしまいますが、実は彼に騙されていたのです。
ハンスはアナ自身を好きになったのではなく、兄弟の末子である自分が王になるために、王女である彼女を利用しようとしていただけだったんですよね...。

こう見ると、プリンセス史上初めて姉妹が主人公で、片や従来のプリンセス要素を持ち、片や全く新しい要素を持つという点は、プリンセス像が大きく変わりつつある時代においても、もはや革命と言えるものだったのです!

今年は次回のプリンセス映画として『アナと雪の女王2』が公開予定です。補足として、プリンセス作品のうち、劇場作品として続編が制作されるのは今回が初めてであり、その点でも『アナ雪』は異例中の異例とも言えます。
※それ以前もプリンセス映画では『シンデレラ』、『リトル・マーメイド』、『美女と野獣』、『アラジン』、『ポカホンタス』、『ムーラン』、『ラプンツェル』の続編が制作されていますが、先の6作品はOVA作品として、『ラプンツェル』はディズニー・チャンネルのオリジナル・アニメーションとして公開されたものです。

さて、この3Dプリンセスたちが例外となるのか、それともこの傾向が続くのかは非常に興味深い事例です。
前作の『アナ雪』のラストから推測すると、続編も同様に姉妹愛に焦点が当てられた物語となることは間違いないはず。とはいえ、従来のプリンセス映画と比較すると、やはり近年のプリンセス映画は大きく転換期を迎えていることは明らかです。

今更だけど、なんであんなにアナ雪流行ったんだろう?

日本における『アナ雪』の爆発的な人気は《Let it go》を中心とした音楽のキャッチーさも然り、エルサの人物像が日本女性から多くの支持を得たことに起因しているはずです。

近年はストレート気味の眉に濃い色の口紅が流行しており、可愛らしい女の子ではなく、自立してかっこいい女性が理想とされています。(これに関してはまた改めて書きます!)

さらに、SNSの流行を受けて、良くも悪くも自己プロデュースをする人が急増したこともアナ雪ヒットの理由の1つとして挙げられるでしょう。
インスタ映えが流行語となった裏で、SNS疲れという言葉も生まれましたね。
つまり、SNSの中で自分をより良く見せるためにネット上で虚像を作る女性たちは、本当はありのままの姿を見せたいが、それだけでは“いいね!”をもらえないからと見栄を張っているのでです。
日本語版の《Let It Go》は“ありのまま”が曲のキーワードとなり、エルサはそれに共感した女性たちの理想となったのです。

また、本来のプリンセス映画のメイン・ターゲットである女児は、『プリキュア』シリーズが長く続いていることからも明らかなように、エルサのような魔法を使って戦う少女に憧れる傾向があります。

それを確固としたものは、日本では『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(1992〜1997年)です。セーラームーンたちは、普段はごく普通の中学2年生ですが、セーラー戦士に変身して悪者と戦うスーパーヒロインでもあるのです。

彼女たちは14歳ゆえ、自立した存在であるとは言い難いものの、自ら戦うかっこいい女の子であり、幼稚園児から見れば、十分にかっこいいお姉さんです。
私もそんなセーラー戦士に憧れた幼稚園児の1人です!

さらに『セーラームーン』シリーズはディズニーのルネッサンス期とほぼ同時代にあたります。わかりやすくいうと、アリエル、ベル、ジャスミン、ポカホンタス、ムーランの時代です。
すなわち、この時代は日本に限らず、世界規模で、女の子たちの理想がただの可愛いプリンセスではなく、可愛いけれど強くてかっこいいプリンセスへと移り変わっていく過渡期だったのだという推測ができます。

女性たちの社会進出が大きく進んだことと理想のプリンセス像の変化には関連性がある!

かつては、結婚後に専業主婦として家庭に入る女性が理想とされていました。
しかしながら、育休や産休制度の拡大により、女性が結婚後も働きやすい環境が整ってきています。

少し難しいになりますが、これらには1960年代に起きた第2波フェミニズム運動によってジェンダー差が埋まった上に、1980年代に起きた第3波フェミニズムによって女性の社会進出が驚異的に進んだことが影響を与えているのです。
それに伴い、家事や育児に専念するよりも、仕事をしながら育児をし、自分の時間やキャリアもつくりたい!という、精神面でも金銭面でも自立した女性が増えたのです。

また旧来は、求愛や求婚は男性からすべきであるという暗黙の了解がありましたが、最近では女性からの告白やプロポーズも珍しくはありません。
つまり、多くの女性たちの理想は、家事をして家庭を守り、白馬の王子様のお迎えを待つ白雪姫やシンデレラではなく、男性に守られなくとも生活のできる、自立して行動的なベルやエルサへと移っているのです。

とは言いつつも、一番好きなのはラプンツェル

私はディズニー・アニメーション、特にプリンセス作品が大好きです。順位をつけるのは難しいのですが、強いて1番を挙げ得るならば『塔の上のラプンツェル』です。
ラプンツェルやユージーンのヴィジュアル、性格、声といった、各キャラクターが持つ魅力は然り、映像のテンポや音楽、色彩の華やかさはディズニー作品の中で最高峰だと思ってます。

それに加えてこの作品は初の3Dプリンセスという新しい面も持ちつつ、王道ストーリーの再帰、そしてディズニー・ミュージカルの立役者でもあるアラン・メンケンの起用という、挑戦と伝統が融合された作品なのです。
懐かしさもあり、新しさもある。うん、素敵。

『ラプンツェル』以降は新作が公開されるのが毎回待ち遠しく、鑑賞後も期待を裏切らないことが多かったです。
でも、『アナ雪』は違った.....。

確かに、映像も音楽も素晴らしい。ただ、何かが違った。『アナ雪』は初めて恋愛よりも姉妹愛に焦点を当てた作品作りが行われた映画です。ディズニー長編の長い歴史の中では、いわば異端作なのである。これが、私の感覚と違った最大の理由です。

私の中でプリンセス作品といえば、王子様とお姫様の恋物語に、それを盛り上げるミュージカル音楽や悪役の存在が観客に興奮や感動を与えていたはずなのです。
それが大きく覆された瞬間でした。

私と世間の考えに差があるのか、それとも新しい社会の波に乗り切れていないだけなのか。

でも、色々分析を重ね、社会人になって視野が広がってから、気づきました。

この作品の最大の魅力は先に挙げた音楽でも映像でもなく、主人公たちが姉妹だということを用いて、従来のプリンセス像作品への皮肉と新しいプリンセス像の提案という二重構造で物語が進んでいることなのです。
さらに、ヴィジュアルや性格も全くの正反対にしたからこそ、従来のプリンセスに共感できずにいた層からの支持をも得ることができたのです。

営業でも、10人のお客様を対応して10人と契約できるなんてことかなり難しいです。
Twitterでも同様に、100人のフォロワー全員からいいねやRTを貰うことは難しいと思います。

いつも自分を支持してくれない人を巻き込むには、いつもと違う自分を見せる。

変化に応じる柔軟性。やっぱりこれが大切なんじゃないかな。

全然まとまってないですが、日本におけるアナ雪の威力って凄いよね、って話でした。

#ディズニー #映画 #ディズニー映画
#ディズニーアニメーション #プリンセス
#アナ雪 #アナと雪の女王 #承認欲求